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5.犬の本能と習性
 
 遠い祖先であるオオカミから受け継いだ本能や習性だ。犬は様々な用途目的で人間の都合に合わせて改良されてきたが、現代社会に生きる家庭犬にも、このような本能や習性は継承されていて、どんな犬でも持っているものだ。
 犬の本能は大別すると6つの本能に分けることが出来る。社会的本能、栄養本能、生殖本能、自衛本能、逃走本能、運動本能。その中でも社会的本能と栄養本能は犬のしつけや訓練に特にかかわり合いの深い本能なので、しっかりと理解する必要がある。
 犬の本能と習性には、しつけや訓練を行ったり一緒に暮らしたりする上で伸ばしていきたい本能、抑えておきたい本能、必ず知っておきたい本能や習性、を知ってると役立つ本能や習性など、色々な本能や習性がある。これらの本能や習性を充分理解してしつけや訓練に活用出来る。

『繁殖本能=生殖本能』 
 習性:種族の保存を目的とする本能で交尾行動の事を指す。犬は基本的に一夫一婦制の為、知らない犬との自然交配は難しくブリーダーは、メス犬を束縛して交配する。

『繁殖本能=養育本能』
 習性:子供を養い育てる本能。母犬と子犬との絆はとても強い為、親が近くにいる子犬に近寄ると危険な場合がある。

『自衛本能』
 習性:自分の身を守ろうとする本能。自分の身を守る為に、相手を疑うようになる。
飼い主が餌を使って犬を誘導する時に、犬を騙すような事をすれば、犬に猜疑心が生まれる。例えばハウスのしつけを行っている時に、ハウスの中に餌を入れて、犬が入った途端に扉を閉めると、犬は「騙された」と思い、人間を疑うようになる。また、犬を叩く行為も信頼を失い猜疑心を持つようになる。しつけを行う際には、犬に猜疑心を抱かせない為に細心の注意が必要だ。自衛本能は飼い主にとって育って欲しくない本能で、それが発達している犬は触れられる事を嫌がる。

『逃走本能』 
 習性:臆病や不安から逃避して身の安全を図ろうとする本能。臆病な犬の保身術でもある。

『運動本能-遊戯本能』
 習性:群れの中で、じゃれあいながら体力・知能を強化し、優位になろうとする本能。飼い主とじゃれていても優位を獲得し順位をあげようとする。

『社会的本能-群生本能』 
 習性:群れを作って生活するという本能。群れの中では縦型の上下関係を作って、群れの統制をとるという順位制度がある。犬は飼い主家族を自分の群れだと思って行動する。もし犬が群れから離れて孤独になると、ストレスが溜まり、分離不安になる。分離不安になった犬は無駄吠えをしたり、家具を壊したりするなどの破壊行動を起こすようになる。捨て犬が、人の後を付いていくというのは分離不安によるものだ。仲間を求めて人の後に付いて行くという行動は、群生本能の表れだ。

『社会的本能-権勢本能』
 習性:群れの仲間がいつも従属的な行動をとれば、自分は主導的行動を取り、ボスとして君臨しようとする本能だ。犬の言いなりになってばかりいると、権勢本能が強化されてボス犬となり、家庭内を仕切ろうと吠えたり威嚇したりするなどの権勢症候群になる。権勢本能は生後7ヶ月~3歳くらいまでの間に強く現れる。

『社会的本能-服従本能』
 習性:ボス犬がリーダーシップを発揮していれば、自分は従属的な行動を取り、群れの中で平和に暮らそうとする本能。飼い主がいつも主導的な対応をしていれば、犬は喜んで従属的な行動を取る。犬が飼い主に対して従属的な行動を取ることが「犬が可哀想」と思うかもしれないが、この服従本能により犬は服従する事にストレスを感じない。むしろ服従する事が、犬にとって自然で落ち着いていられる。

『社会的本能-警戒本能』 
 習性:自分が棲む縄張りを作り、その縄張りを守る為に他の侵入を警戒するという本能。犬が吠える基本本能で番犬は警戒本能を上手に活用している。

『社会的本能-防衛本能』
 習性:自分の子供や群れ、巣を守ろうとする本能。群れ内の順位争いの為に威嚇や攻撃行動を起こすのも防衛本能だ。

『社会的本能-監守本能』
 習性:自分が獲得した餌や物を横取りされないように守ろうとする本能。食後の食器をさげようとしたり、玩具を取り上げようとしたりした時に威嚇するのは慣習本能。

『社会的本能-闘争本能』
 習性:獲物を襲う、縄張りを守る、群れ内の激しい順位争い等必要な時に闘うという本能。

『社会的本能-帰家本能』
 習性:猟に出て、見知らぬ土地に行ってしまっても、巣に戻ることが出来るという本能。
犬は方向 感覚が非常に優れている。数十キロも離れたところから帰ってきたという話を聞く。
また、渡り鳥が毎年同じ湖に戻ってきたり伝書鳩が必ず巣に戻ってきたりするのは、
この帰家本能が優れているからだ。

『栄養本能-時来本能』 
 習性:獲物を巣に運んでくるという本能。投げたボールをくわえて持ってくるとか、引っ張り合いをするというのも、時来本能によるものだ。

『栄養本能-捜索本能』
 習性:臭覚を利用して獲物を探し出そうとする本能。現場から逃走した犯人を追跡したり、行方不明者を捜索したりするのも捜索本能を利用している。

『栄養本能=狩猟本能』
 習性:獲物を捕まえようとする本能。生きていく為に餌を取る本能なので、狩猟犬種でなくても、現在の犬に強く残っている本能だ。狩猟本能がある為、餌を使ったしつけやくんれんが可能で、空腹時は効果的。犬がスリッパやおもちゃを振り回して遊ぶことや、散歩中に地面に体を擦り付けて、自分のにおいを隠す事は、この本能によるものだ。

『栄養本能-追跡本能』 
 習性:逃げる者を追うという本能。ドッグレースで擬似ウサギ(獲物)を先頭で走らせて、それを追わせるということにも、追跡本能を応用している。また、公園で走り回っている子供を追って突然走りだしたりジョギングしている人を追いかけるのも追跡本能の表れ。