本の虫

◆第44回のおまけ『カサンドラと言えば』◆

 かの『アヴァロンの霧』の作者ブラッドリーが、カサンドラの視点でトロイア戦争を描いた作品『ファイアーブランド』。10年前に読んだので、どーゆー話だったのかほとんど覚えてないし、当時の印象ではやはり『アヴァロン』の方が好きでした。

 今回久々に書棚から引っ張り出してきて解説を見ると、最後にちゃんとちくま文庫版エウリピデスの劇の一節が引用されていて、なんだか嬉しくなりました。「物語読破後、まったく別の深い意味合いをみつけたエウリピデスを引用しながら……」とあります。今読み返したらまた新たな発見があって面白いのかもしれないなぁ。『ギリシア悲劇』はちょっと、と思う人も、これだったら普通に読めるのではないでしょうか。もっとも『アヴァロン』同様絶版なので、図書館で探していただくほかありませんが。

 で、その解説の記述によるとトロイア戦争は紀元前11〜12世紀頃のことだそうで、ソポクレスやエウリピデスはおよそ700年前の事件をもとに悲劇を書いた、ということになります。今から700年前と言ったら西暦1300年だから、室町時代あたり。大河ドラマが手を替え品を替え戦国の世を描くように、当時の詩人達にとって格好の題材だったんでしょうね。

『ファイアーブランド@太陽神の乙女』
『同Aアフロディーテーの贈り物』
『同Bポセイドーンの審判』(ハヤカワ文庫FT)
以上 マリオン=ジマー=ブラッドリー


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