本の虫

◆第24回『月光魔術團/平井和正』◆

 長らく続いたハヤカワ文庫フェアも一旦終わりを告げ、今回は2度目の登場、大尊敬する平井和正さんの最新作『月光魔術團』です。

 平井先生、若い! もうこの作品の印象ったらそれしかありませんね。女子高校生が縦横無尽に走り回るジェットコースターのような展開、Hでエネルギッシュでそのパワーについていくのにハァハァいってしまう。アダルト・ウルフガイから入った人間にとっては、平井先生ってどんどん若返ってるって感じです。 ちょっと可愛すぎる  この『月光魔術團』も、ウルフガイなんですが、全く新しいウルフガイ。なんてったって主人公がじょしこーせい。犬神明と書いて「イヌガミ・メイ」と読ませるなんざ、そんなのあり?の世界。満月の夜にはもちろん狼に変身するどころか、男の子にも変身するみたいなんだけど……。9巻にもなるのにまだその辺ははっきりわからないんですよね。

 少年ウルフも中年ウルフも孤独だったのに比べ、美少女ウルフには仲間が一杯。お人好しにかけては右に出る者がいない人美、「地獄の蜷川」と怖れられるスーパーモデル並の不良美少女にーな。美人だけど頭のねじが一本ゆるんでいそうな、高校教師るみな。超お嬢様の千鶴珠子(ちかく・たまこ)にスーパーH体型の校長秘書秋菜……。もう美少女のオンパレードで、一体この世界に男はいないのか?って感じ。それでなくても魅力的なじょしこーせーの皆さんが、メイの不死身ウイルスに感染してさらにチャーミングにパワーアップ。同性の私もメロメロです。

 中でもお気に入りは「地獄の蜷川」、にーな。誰もが怖れる超弩級の不良だったのが、メイ化(メイの不死身ウイルスに感染すると性格までメイに似てくるらしい)が進んで非常に魅力的なキャラクターになっています。スーパーモデル並の美女でありながらケンカに滅法強くて頼りになるなんて、カッコいいよねぇ。自分の感情を持て余してぶっきらぼうになってしまうところなんか、たまりませんわ。『犬神明』に登場するBEE(私は彼女も大好きだった)に通じるものがあります。

 不死身ウイルスをばらまくメイに敵対する同じ”神話人種”達。人美やにーなにも危険が迫り、るみなは行方不明。メイの味方だと名乗る謎の幼女ジェイに謎の美女マリリン。メイの秘密を知っているらしい教師の寺嶋女史や城門もやっぱり神話人種みたいだし、それぞれのキャラクターの”フェイク(偽物)”も横行しているようで……。次から次へ新しい謎が生まれ、掴めそうかと思うとパッとシーンが切り替わって真相はまだまだ闇の中。一体全体本当に全ての謎は解明するのか、すごぉく不安だったりするんですが。(『地球樹の女神』じゃ人一人「本当は存在しなかった」とかですまされちゃったし、『犬神明』も「えっ、ここで終わっちゃうの?」って感じだったもんなぁ)

 泉谷あゆみさんのイラストがまたとっても素敵でキャラクターの魅力を高めています。(9巻の表紙なんてもうめっちゃカッコいいもんねー。ああ、よだれが……) さぁ、あなたもメイの魔法でパワーアップしよう!

『月光魔術團』@〜H

以上 平井和正(アスペクト・ノベルズ)


●次回予告●

次回は『フォーリング・エンジェル/ナンシー・A・コリンズ』です。


『本の虫』インデックスに戻る