アニメ大好き

◆番外編その3『ロボット刑事K』◆(1999/5/12)

 『仮面ライダー』シリーズ、『キカイダー』シリーズ、と変身ヒーロー物を二つ取り上げたところで、今回は変身しないヒーロー、しかも人間じゃなく、最初から最後までロボットのままという異色作『ロボット刑事K』です。考えてみれば変身しないヒーロー物ってあんまりないんですよね。『仮面の忍者赤影』とか、う〜ん、あれはヒーロー物なのか。

 異色すぎて受けが悪かったのか、あんまりヒットしたという話は聞かず、私の回りでもこの作品を知っている人はいません。読者の皆さんもきっと「何、それ」という人が多いと思います。一体どんな話やねん、と。タイトル通り、ロボットのKが刑事として犯罪組織と対決するというストーリーで、なんと「刑事もの」の側面も持っていたんですね。ちゃんと同僚の刑事もいて、それがかの名優高品格さんだったりしたんですよ。めっちゃええ味出してました。最初、高品さん演じる芝刑事は「ロボットに刑事が務まるか」とあからさまにKのことをバカにしてるんだけど、最終話では一人前の刑事として認めるんです。同僚として。 地味な奴  ラストシーンが洒落てました。事件が解決し、みんなでビールで乾杯! ジョッキを傾けるKに高品さんが一言。「おいおい、おまえそんなの飲めるのか?」 ロボットのKは食事はしないんです。お茶もジュースも飲めないし、ましてお酒なんて飲めません。仲間との楽しいひとときに、束の間自分がロボットであることを忘れたK。仲間達もKを人間同様に扱って、「あ、そういえば」という感じで思い出す。思い出して、「飲めないじゃないか」と指摘して、でもそれは嫌みでもなんでもなく、下戸の人に向かって「そういえばおまえ飲めなかったんだっけ」って言うのと変わらない。言われた方も「そっか、ぼくお酒ダメだったんだ」って照れながら頭を掻く。このシーンは私だけじゃなく、一緒に見ていた母もよく覚えていて、「あれ良かったよねー」と常々言ってます。大人の鑑賞に堪えうる「ドラマ」だったんです。

 Kは普段背広を着て、ハンチング帽をかぶっています。私の記憶の中ではKはトレンチコート姿だったんですが、参考文献の写真を見たら背広でした(と思ったらトレンチ姿の写真もあった)。わりとずんぐりむっくりした体型の彼の背広姿はけっこう可愛いです。ロボットが背広着るっていう発想もなかなかですよね。ま、「刑事らしく」ということではあったんでしょうが。いわゆる「人間型サイボーグ」じゃなくて、見るからにロボットの彼が背広着て聞き込みとかするんですもんねー。行く先々でギョッとされること請け合い。テレビで見てたらロボットはヒーローだけど、実際「警察です」と言われてドア開けてロボットが立ってたらびっくりですよ。人間よりずっと優しい心を持ちながら、ロボットであるという異質さを抱えて生きていくK。ロボットでありながら人間の側に立ち、自分と同じロボット(操っているのは人間だけど)と闘うK。ロボットであるとはどういうことか。人間であるとはどういうことか。アニメであれ特撮であれ、日本の子供番組って本当に奥が深い。

 『仮面ライダー』も『キカイダー』も、そしてこの『ロボット刑事K』も原作者は石ノ森章太郎さん。子供番組の奥が深いというより、石ノ森さんが偉大なだけかもしれません。手塚さんがいなければ日本のアニメはなかったかもしれず、石ノ森さんがいなければ特撮ヒーローはなかったかもしれない。そうと知らずに見ていた番組の方が多いけど、私達の世代はむしろ手塚さんより石ノ森さんの世界観に多大な影響を受けて育ったんじゃないでしょうか。私なんて超テレビっ子でしたから、人格の基礎は石ノ森さんに作ってもらったと言っても過言ではないかも。  何しろこの『ロボット刑事K』、放送は昭和48年。私、5歳です(年がばれた)。まさに人格形成期。ちゃんと夜7時ぐらいに見ていたような気がするし、再放送ってなかったと思うので、5歳で見てたんでしょうねぇ。でもってそれをちゃんと覚えてるんでしょうねぇ。我ながら感心します。最近の幼児番組がどういう内容なのか知りませんが、ゆめゆめドラマをおろそかにしないでほしいと思います。戦闘シーンを見たから暴力的になるわけではなく、その世界観、人間観が重要なんですから。

参考文献『メーキング・オブ・東映ヒーロー@』講談社編(講談社X文庫)


●次回予告●

次回は『超人バロム・1』です。


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