◆第28回『ザンボット3』◆(1998/2/5)
- ついに伝説のロボットアニメ登場です。何が伝説かというと、あの『機動戦士ガンダム』で有名な富野監督の『ガンダム』以前の名作だからですね。キャラクター設定も確か『ガンダム』と同じ安彦さんが手がけていらっしゃいます。オタク学叢書の第1弾として『20年目のザンボット3』という本が出てしまうくらいの作品です。
20年前というと私はまだ10歳になってないし、私が見た『ザンボット3』はおそらく再放送で、『ガンダム』を知った後でした(そもそも『ガンダム』自体再放送で見ている)。中学生の時で、その後何度も繰り返し見た『ガンダム』ほど記憶は定かではないのですが、しかしその革新性に度肝を抜かれたことは強烈に印象に残っています。
主人公は小学生ぐらいの少年で、神ファミリー(たぶんこんな名前だった)と呼ばれる少年とその家族が合体ロボットザンボット3を駆使して異星人の魔の手から地球を守るため闘う、というストーリーでした。これだけ聞くと「よくあるパターン」なのですが、とんでもない設定があるのです。それは「神ファミリーは他の地球人から厄介者扱いされている」ということ。「は?」と思ってしまいますよね。なんで正義の味方であるはずの主人公たちが厄介者なのか、と。その理由は「お前たちがいるから異星人が攻めてくるんだ!」なのですが、これは本当にショックでした。命がけで守っている相手から石もて追われる主人公たち――かつてこんなヒーローが存在したことがあったでしょうか。ウルトラマンなんかどれだけビルを破壊しようがいつも拍手で迎えられているというのに。物語の世界では、特に子供向けと称される物語の中では、善悪の区別は明快で、ヒーローは「絶対」です。でも現実の世界では、善悪の区別は曖昧で、正しいことをしている人が必ず世に受け入れられるとは限らないし、そもそも立場が違えば「英雄」は「憎い敵」です。「守ってくれていると言うが、大体お前達が戦争を始めたんじゃないのか?」という『ザンボット3』の世間の声は、実は当たり前にあり得る意見なのです。
正しい行いが報われるとは限らない。しかしそれでも自分が正しいと思うことをしなければならない―――。主人公の少年の声は『ドラえもん』の大山のぶよさんで、敵の異星人も怪獣みたいなデザインでアホっぽいのですが、その見かけの「子どもっぽさ」とは裏腹に、非常に深いメッセージをもった作品でした。またその敵のアホっぽさが「こんな奴らのために主人公達は……」と物語の残酷性を高めているのですが。
残酷と言えばもう一つ、主人公の幼なじみの少女が敵によって「人間爆弾」に仕立てられ、主人公の目の前で爆発して死ぬ、というエピソードがありました。この話はめちゃめちゃ可哀想でした。何もそこまでしなくても、と思いましたね。最終回を覚えていないのですが、果たして主人公達に「救い」は訪れたのでしょうか。
※『20年目のザンボット3』は、氷川竜介著、太田出版発行です。私はまだ手に入れていません。
●次回予告●
次回は『ムーミン』&『楽しいムーミン一家』です。
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