アニメ大好き! 特別篇


◆劇場版『機動戦士Zガンダム〜星を継ぐ者〜』◆
 最初に『Z』が映画になると知ったのは、あれは確かもらい物のおまけ付きお菓子だった気がする。モビルスーツか何かのフィギュアが入っていて(……そう言えばあれ、一体どこにあるんだろう??子どものおもちゃ箱の中か?)、その箱だか中の紙だかに、『Zガンダム映画化記念』というような文字を見つけて「は?」と思ったんだった。『Z』の映画化? なんかの間違いじゃないの、と思ったのだ。今やガンダムシリーズも何作目なんだかさっぱりわからない、シードだかデステニィだか、やたらに可愛らしいキャラクターの、おばさんにはとても『ガンダム』とは認められないような作品がテレビ放映されている中、なんだって今更『Z』が映画になるのか。

 しかしその後、Gackt様が主題歌を手がけるというニュースを聞くに及んで、「ホントだったんだ……」。そして当然、「見に行かなきゃ!」。それからけっこう長い間待たされた。公開日がなかなか決まらず、半年以上の待ちを経て、ようやく2005年5月28日、全国ロードショー。最近は私の住んでる辺も映画館が増えたのに、公開は県庁所在地の1館のみ。まぁそれでもよその県まで行かずに済むのは有り難いけど。見に行きましたよ、はるばる(?)片道1時間弱かけて。

ヒロ画伯のザク  20年ぶりの『Z』(まさしく『Z〜刻(とき)をこえて』だよね。これって最初のオープニングテーマのタイトルだけど、まるで今あることを見越してたみたい。さすが富野さん、ニュータイプだ)。テレビシリーズを見ていたのは高校生の時だった。金曜の夕方、わざわざ早く帰ってテレビにかじりついていたっけ。まさか一児の母になった自分がいそいそと『Z』の映画を見に行くことになるなんて、当時の私は思ってもいなかっただろう。しかもその主題歌が、ほんの2年前に出逢ったばかりのGackt様だなんて。まったく人生って不思議な縁に満ちている。

 主題歌『Metamorphoze』のイントロから、エンディングテーマ『君が待っているから』とともにクレジットが流れ終わるまでの1時間半、本当にあっという間だった。「えーっ、もう終わり!? 続き(第2部『恋人たち』)は10月!? 待てるかよっ!!」 なんというか、もう最初の宇宙空間の映像とかコロニーの映像だけでぐわーっと懐かし感が押し寄せてきて、モビルスーツの一挙手一投足にどくどくと血が騒いでしまうのだ。いや、別に戦闘マニアとか、そーゆー危ないことじゃなくてね、かつて夢中で『ガンダム』を見ていた頃の自分が舞い戻ってくるというのか。「ああ、『ガンダム』だぁ……」という感慨。もちろんそれはクワトロさん(←シャアの仮の姿。って、シャア自体がキャスバルの仮の姿か)とかカミーユとか、キャラクター達が動いているのを見ても感じるんだけど。やっぱシャアが出てこないと『ガンダム』じゃないもんね。

 今回の映画は、昔のテレビシリーズの映像と、新しく描き起こした映像とがミックスされている。予算の都合なのかなんなのか知らないけれど、カミーユの顔が全然違うので、どこが新しいシーンなのかはすぐ分かる。新旧の映像を違和感なく繋ぐために色々な工夫と大変な手間をかけている、ということなのだけど、これについては「うーん、それだったら全部新しく描きゃ良かったのに」と思わなくもない。他のキャラはそうでもないんだけど、とにかくカミーユの顔が違いすぎるんだもん。どうかと思うなぁ。まぁ私のようなオールドガンダムファンには「ここは新しいぞ」というのを見つけるのがまた一興ではあるんだけど、初めて見る人にはあまりにも「つぎはぎ」過ぎるんじゃなかろうか。

 それに、テレビシリーズでは10話かけて描いていたエピソードをわずか4話分程度にまとめてあるので、かなり慌ただしい。ストーリーや登場人物を既に知っている私でさえ、「あれ?ちょっと待って」と言いたくなる時があるので、初見の人は設定を呑み込むのが大変なんじゃなかろうか。それでなくとも『Z』はややこしい。未だに私、「だからティターンズって結局何なん?」と思ってるし、パンフレットで「エゥーゴも連邦軍内部の組織」っていうのを見て、「あ、そうだったんだ」と思ったぐらいなのだ。いつの間にかマークUは白く塗り直されてるしなぁ。違うモビルスーツかと思うやん。ま、ぎゅっと内容が濃縮されてる分、スピーディで面白いのも確かなんだけど。

 新しいシーンは、本当にセリフのやり取りも楽しくて、是非劇場で「にやり」としてほしいのだけど、最後アムロが復活を遂げ、シャアと再会するところでは私、ついつい涙ぐんでしまった。「ああ、やっと会えた」って思った。7年の時を超えて再会した二人の想いが、20年の時を超えて『ガンダム』に再会した私自身の想いと重なって、「ああ、また会えた」って。

 初めて『Z』を見た高校生の時は、ヒーローだったはずのアムロが地上で幽閉同然の生活を送っていることがショックで、でも「それでこそ富野さんの世界だな」とも思った。最初から、ホワイトベースのクルー達は連邦軍=大人達に疎まれていた。その戦いぶりを称賛されるどころか、「おとり」として利用されているだけだった。望まない戦いに巻き込まれ、命からがら生き延びたあげくに、その能力を危険視され幽閉される。あるいは、閑職に追いやられる。「あの戦いは何だったのか? 自分は何のために戦ったのか?」 そして、「何のために今を、そしてこれからを生きていくのか」……アムロもブライトも、カイもハヤトも、きっとシャアでさえも、その答えを模索する7年間だったろう。

 主要なキャラクターが皆10代、せいぜいが20歳といった若さだったファーストガンダムと違って、『Z』では子どもはカミーユ1人だ。周りはみんな大人で、自ら軍に、戦いに身を投じた人間ばかり。カミーユにとっては勝手な大人達。かつて同じように少年で、同じように勝手な大人達に振り回され、反発していたはずの。

 大人になって見る『Z』は、少し苦い。いつの間にか変に物分かりが良くなって、いつの間にか、「ああはなりたくない」と思っていた「大人」に、自分自身がなってしまった今では。

 『Z』って、輝かしい青春の時を過ぎてしまった少年達がどうやって大人に、自分の納得のいく「大人」になっていくか、そういう物語だったんだなって気がする。もちろん一方で少年カミーユの物語もあるのだけど、ファーストガンダムの正統な続編として、「ヒーローのその後は決して安易な“めでたしめでたし”ではない」という物語。カツがアムロに投げつける、「ヒーローなら、この下にモビルスーツを隠してある、ぐらいのこと言ってくださいよ!」という言葉がおかしくも切なくて。誰もがヒーローだったわけじゃないけど、誰もが子どもだった。かつての子どもが、今子どもである人間に、「なんでそんなつまんない大人になっちゃったんだ!」と指弾される。ああ、まったく、これって永遠のテーマだよね……。

 しかし「大人」「大人」って言っても、クワトロさん(シャア)でさえたったの27歳!! 諸悪の根源であるようなうっとうしいおじさんバスクがやっと37。ひえーっ、あんたあたしと同い年なの(涙)。「つまらない大人」どころか、そもそも「大人」になってない気がするわ、私。見終わった後、ついつい「そこかっ!」とか言ってニュータイプごっこやりたくなるしなぁ。「人が、そんなに便利になれるわけ、ない(byセイラ)」

 ともあれ本当に、また会えて嬉しい。とても幸せな1時間半だったし、人生の中に『ガンダム』という物語を持てたこと自体がすごく幸せな、ありがたいことだと思う。富野さん、スタッフの皆さん、本当にありがとう。うん、池田さん、古谷さん、飛田さん。みんな声変わってなくて、「元気でいてくれて良かった」って(笑)。だってもう二度とセイラさんの出てくるアニメは作れないわけじゃない。井上遙さん以外のセイラさんなんて考えられないから。

 第2部、第3部が待ち遠しいです。

 ※このページの壁紙は
『壁紙工房ジグラット』さん
の物を使わせていただいています。


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