令和3年5月号(第130号)     トップページ  年月別リスト 地域別リスト
知 覧 2
CHIRAN
 鹿児島県 南九州市知覧町郡 南九州市HP

南九州市知覧観光協会HP

南九州市知覧

伝統的建造物群保存地区

 知覧といえば、まず思い起こされるのは、第二次大戦末期に陸軍特攻基地の一つとなり、数多くの青年たちを悲惨な末路に追い込んでいった悲しみの過去である。
 現在、特攻基地跡に知覧平和記念館が建設され、このむなしい歴史のすがたが伝えられている。
 この基地跡のすぐ近くに、江戸時代に建設された武家屋敷街が保存されている。薩摩藩は鹿児島城下の他に、藩内各地に麓(ふもと)と呼ばれる武士の集住地をつくり、これを外城(とじょう)と称して防衛拠点ネットワークを形成していた。
 その数は
100を超えていたようで、知覧はその代表的な集落の一つである。知覧集落の景観上の特徴は、街路に沿った石垣とその上に連なるダイナミックに刈り込まれた生垣にある。山並みのうねりが連なり、かつ折り重なるように刈り整えられた様子は、たいへん絵画的で道行く人々の目を楽しませてくれる。
 このような景観が、江戸時代から引き継がれ守られている努力に敬意を表したい。
D桝形付近 E西郷恵一郎 邸 F富屋食堂 G一式戦闘機 隼  
 ←画像をクリック  
  D桝形付近 武家屋敷街らしく、本馬場通りの中央付近に桝形が設けられている。両側は石垣と生垣で区画され、路面は石畳で舗装された整然とした空間である。突き当り奥に見える茅葺屋根は、市指定有形文化財の知覧型二ツ家民家。
E西郷恵一郎 邸 西郷邸の入り口には、高い棟の両側に小棟を置いた格式高い門を持つ。門を入るとすぐ正面に石垣の衝立が立ちはだかって、敵の侵入を防いでいる。武家屋敷には、それぞれ京風の優雅な庭園とは対照的に、頑強な砦の側面も見せている。

F富屋食堂 特攻の母と呼ばれた鳥濱トメが経営していた食堂で、帝国陸軍の指定食堂になっていた。出撃していく特攻隊員にとって貴重な安らぎの場となっていたようだ。現在は外観は当時の姿そのままに、また内部は資料館として復元され公開されている。

G一式戦闘機 隼 平成19年に公開された映画「俺は、君のためにこそ死ににいく」で復元された隼が、知覧特攻平和記念館のそばに展示されている。生命力あふれた大樹に包まれながら、死が待つ大空に向かって飛び立とうとする姿には、思わず祈りを捧げたくなる。