解説   楊貴妃


 唐の玄宗皇帝は、馬塊ケ原にて、楊貴妃を失ってから、毎日悲しみに沈んでいました。せめてもの慰みに、方士(ワキ)に命じて、楊貴妃の魂魄の行方を、探させました。
 方士は、天上界より黄泉まで尋ね回り、最後に蓬莱宮に、やって来ました。その中の太真殿という宮殿に、楊貴妃(シテ)は居ました。
 方士は皇帝の伝言を伝え、貴妃に逢った証拠の物を求めました。貴妃は、髪に挿していた玉の簪を与えましたが、これは世の中に数あるものですから、方士は、帝と貴妃との間に交わされた、他人の知らない誓いの詞を、証として報告したいと申し出ました。
 貴妃は、七夕の夜を思い出して、「天にあらば比翼の鳥となり、地にあらば連 理の枝となろう。」と誓い合ったことを話して、その思い出の簪を、再び髪に飾り、霓裳羽衣(げいしょううい)の曲を舞って見せ、その簪を再び方士に与えて、方士を送リ返しました。


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