解説   當麻


 廻国の僧が、三熊野から京都へ上る途中です。紀の路から大和路へ入り、二上山の麓の當麻寺へ参詣し、休んでいると、老若の尼僧が来ましたので、當麻寺の由来を尋ねました。老尼は、自分は念仏を唱えることを勧める者だと云って、念仏を唱えるように云います。そして、中将姫がこの寺の前の池水で、蓮の糸を染め、当麻の曼陀羅を作り上げた話や、この曼陀羅を作る動機になった、中将姫と生身の観世音との出会いの話などを語り聞かせ、自分達がその化尼化女であると名乗り、昇る雲に乗って天上に消え失せました。
 旅僧は、さらに奇特を見ようと、信心深く読経をしていますと、中将姫の精魂が顕れ、生前に称賛浄土経を信心して、常に読経していたので、今は微妙安楽世界の衆となることが出来たと語り、経巻を僧に与え、その経文を一緒に読誦し、やがて法悦の舞を舞って、その後、夢となって消え去りました。


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