解  説   殺 生 石


 源翁という道人が、那須野を通りかかりました。その時、空を飛んでいた鳥が、突然、大きな石の上に、墜落しました。
 不思議に思って近付こうとすると、一人の女が現われて、石に近づくなと云います。その理由を尋ねますと、この那須野の殺生石の詳しい謂われを、語って聞かせました。あまりに詳しい話なので、源翁がその女の名を間いますと、自分はこの石の精であると云って、姿は石に隠れて消え失せました。
 源翁は、払子を打ち振り、石に向かって仏事を営みますと、石はまっ二つに割れ、中から野干の姿の石魂が現われ、昔、天竺、唐土、日本と渡って来て、王法の妨げをしたこと、那須野にて退治されたこと等を語り、今後は源翁の仏力により、その悪行は致しませんと、堅く約束して消え失せました。


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