解  説   野  守


 大和の国の大峰葛城山へ参詣する山伏が、奈良の春日野に着きました。訳ありげな池が有りましたので、来合わせた野守の翁に、尋ねます。
 翁は、自分のような野守が姿を映すので、野守の鏡と呼ぶが、本当の野守の鏡とは、鬼神の持っ、ている鏡のことだと言います。また、昔鷹狩りの折に鷹を見失って探した時、逃げた鷹が池に映って行方がわかったという故事も、この池であることを教え、山伏が本当の野守の鏡が見せてほしいと言うと、恐ろしいものだから、水鏡を見るだけにするようにと言って、塚の中へ消え失せます。
 山伏は、里人から野守の鏡の由来を聞き、先の翁は、鬼神の化身だろうと書われて、鬼神の鏡を見よう、野守の消えた塚の前で一心に祈ります。
 するとその心に感じ、鬼神が鏡を持って塚の中から現れ、鏡に天地四方八方を映して見せたのち、大地を踏み破り、地獄の底へと帰って行きました。


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