解説   国栖


 大海人皇子(清見原の天皇・後の天武天皇)は、皇位継承の争いによって、大友皇子におそわれて、吉野の山中に逃げ、一軒の漁師の家にかくまわれました。その老夫婦は、天皇が二三日の間、何も食べてないと聞き、持ち合わせた鮎と芹を調理して、差し上げました。天皇が食べ余した鮎を、老人に下されましたが、その半身の鮎を、吉野川に放し、その溌剌と泳ぐ姿を見て、天皇の無事帰還の吉兆としました。そこへ追っ手がやってきました。老夫婦は、川船を覆してその中に、天皇を隠しました。追っ手が不審がるのを、威厳を持って言いくるめ、ついに追い返しました。
 天皇はその機知により、危機を脱したことを厚く感謝しました。吉野の山は夜が更けて、老夫婦の姿が消えると、天女が天より降って、五節の舞を舞い、蔵王権現も姿を現して、天武天皇の未来の奇瑞を祝しました。


解説目次へ    展示室TOPへ    平成13年1月1日更新    舞台写真へ