解  説   月 宮 殿


 新年の節会儀は、一年間の最初の宮中行事です。皇帝は正殿に出御されて、臣民の拝賀を受けられます。臣民は一同、肩を並べ踵を連ねて列をなし、慶賀を述べるその歓びの声は、天にも届くばかりです。金銀珠玉を敷き請めた庭には、踊璃の橋を架けた池もあり、鶴や亀も群れ遊んでいます、誠に蓬莱山の有様も、斯くあらんと恩わせます。
 毎年の恒例に随い、観亀の舞をご覧になった皇帝は、鶴亀の長寿にあやかり、千年万年の延齢を授けるその舞に悦ばれ、皇帝自らも月當殿にて、舞楽を奏せられます。臣下達は、四季折々の舞を舞って、国土豊かに太平の御代の、千代万代の目出度さを、霓裳羽衣の曲をもって祝います。皇帝も、我が代の万歳を祝いつつ、輿丁の昇く輿に乗って、その名も目出度き長生殿に、還御されました。中入のない、現在物の形式で、脇能としては特殊な形態の曲です。


解説目次へ    展示室TOPへ    演能案内