解説   飛鳥川


 都に住む少年友若は、母親を見失い、途方に暮れていました。見かねた者が少年を伴って、三吉野へ母親と再会出来るように、祈願するために連れて行きました。
 大和路を通って三吉野へ行き、参籠して祈願をし、また大和路を京都へ向かって帰ってきました。大和川の支流の一つ、飛鳥川を歩いて渡ろうとすると、河畔で田植えをしていた五月女が、この辺りは深いから,上の瀬を渡るように注意してくれました。昨日往路に渡ったところでしたので、一晩で渡瀬が変わったことに不審を感じました。五月女達は、「世の中は何か常なる飛鳥川昨日の淵は今日の瀬となる」と云う古歌を引いて、山川なるが故に、夜の間の雨で水嵩が増し、流れ州となって渡瀬が変わる由来を教えてくれました。 話をする内に、この五月女が友若の母親であることが判りました。お互いに再会を喜び合い、連れ立って京都へ帰って行きました。


解説目次へ    展示室TOPへ    演能案内