解説   葵上


 始め、舞台の正面に、病臥している葵上を表す小袖が出されます。
 葵上の病気に対して、貴僧高僧が加持をしますが、効き目がありません。しかし、梓巫女の鳴らす弓の音に、六条の御息所の生き霊が現れました。その昔の華やかさも衰えて、今は誰も顧みなくなった恨みを晴らそうと、怨霊となって来る由を、巫女の口を通して語りますが、次第に怨念が強まり、葵上を激しく打ち据えます。
 驚いた近侍の者は、横川の行者を招き、祈祷を乞います。行者が祈祷を始めますと、鬼の形相となった生き霊は、打杖を振り上げて法力と争いますが、次第に力弱りついに屈服し、今後は二度と来ないと誓い、成仏得脱の身となった喜びを述べて、消え失せました。
他流の小書について
「梓の出」は前仕手の出の所に、「空の祈」は後仕手の祈の所に、それぞれ常と異なる型の扱いがあります。


解説目次へ    展示室TOPへ    平成13年1月1日更新