お父さん・お母さんへ

お父さん、お母さん。今日という日を、本当に有難うございました。
私もT哉さんも、このあわただしい結婚に、
入籍だけして式は挙げないつもりでしたが、
一生に一度のことだから
と、援助の手を差しのべてくれたお父さん、お母さん…。
その好意に甘えさせてもらったおかげで、こうして人並みに式を挙げ、
披露宴を開かせてもらうことができました。
なんとお礼を言っていいのかわかりません。
  T哉さんのご両親にも、心から感謝しています。
そして、感謝したいのは、今日だけのことではありません。

私がまだ8歳だった夏。突然入院を強いられたときのことです。
心配する両親をよそに、入院の意味も、自分の病気の重大さも、
全く理解できなかった私は、初めての車椅子に
少しワクワクしたことを、覚えています。
しかし、たった一人初めての夜は、
淋しくて一晩中泣いてしまいました。
そんな私を、毎日
“一人ぼっちじゃない”
と勇気づけてくれたのが、
お父さんの提案で始まった交換日記です。
いつもノート一杯に、ぎっしりと色々なことを書いて励ましてくれる、
そんな日記が毎日本当に楽しみでした。
でも、入院中の私に見せる笑顔の裏で、
「なんで、うちの子が…」
と、頭を抱えて嘆いていたことを、聴いたことがあります。
そして、退院してからも、いつも心配してくれましたね。
本当に大事に育てられた23年間だったので、
T哉さんとの結婚を打ち明けた時、
正直いって、とても不安でした。
だから、そんなお父さんがT哉さんに、
「よろしく頼むな。」
と、私たちの結婚を許してくれた時、
うれしくて涙が出そうになりました。
  それからというもの、
挙式の日を指折り数えて待つ毎日でしたが、その日が近づくにつれ、
今まで過ごした両親のもとを離れ、生まれ育った家をあとにする。
あの、8歳の頃と同じ淋しさが込み上げてきました。
でも、お父さんとの15年前の、あの交換日記が、そんな私を
再び励まし勇気づけてくれました。
そして、本当に、お父さんの深い愛情に見守られていたことに、
今になって気づくことができました。
お父さん、こんな私をいつも温かく見守ってくれて、
本当に有難うございました。

また、どんな時でも、私の一番の理解者として、
見守ってくれたお母さん。
T哉さんとの結婚を決意した時も、
「N子が選んだ人だから…」
と賛成し、応援して下さいましたね。
朝から晩まで働きづめで、二人の子を育てているというのに、
明るく、強く、そして友達のように楽しいお母さん。
わがままばかりで、「親の心子知らず」な、
いたらない娘で本当にごめんなさい。
そして、今日までやさしく包んでくれて、本当に有難うございました。

  私は今、しみじみとお二人の愛を感じ、
心の底から、お父さん・お母さんの子供に生まれたことを、
幸せに思います。

本日、T哉さんと結ばれることができ、
妻としての新生活が始まりますが、
二人で力を合わせ、
少しずつでも着実に温かい家庭を、築いていこうと思っています。
それが今日まで、愛情一杯に育てて下さったお父さん・お母さんへの、
私にできる、なによりの恩返しだと思います。

私の大切なお父さん・お母さん、本当に23年間有難うございました。
これからも、お体だけは十分に気をつけて、長生きしてくださいね。


N子

履歴に戻る