「お断り」の鳥居


家の板塀の下方に小さな朱色の鳥居が打ち付けてある風景を時々街中で見かける

これは犬の小便禁止のための工夫で、お稲荷さんの霊験や不浄な行為への
神の罰を犬がどれほど理解しているかどうかは分からないが、
少なくとも飼い主にとって、愛犬が鳥居に向かって用を足すなどということは、
さすがに揮られるに違いない
とはいえ、無信心な人々にとっては馬の耳に念仏ならぬ犬の小便に鳥居
何の効果も期待できない単なる迷信である



さりながら、このミニチュアの鳥居を家の塀や電信柱、大木などの下に見かけるたびに、
京都人の「緩やかな信仰心」、謙譲の美と居住まい正しき生活の様子が感じとれる

京都の町中には、このような小さな神や仏が度々現れ、
人々に生活規範や人間関係のマナーを導く

ハシリに祀られた布袋さんや火のそばに張られた「火廼要慎」(ひのようじん)の札、
玄関の綜や屋根の上の鍾撹など、暮らしのあらゆる場面に神仏を引き寄せて、
そのお加護を願うというよりは自らの生活や人生を顧みるシンボルとする
神社仏閣と深い関わりをもって暮らす京都人ならではの気質である


つづく・・・