アーユルヴェーダとアロマテラピー

イナムラ・ヒロエ・シャルマ(大阪アーユルヴェーダ研究所所長)


人間以外の動物では嗅覚がサバイバルや種族を保持するために重要な役割をしている。

自然界では植物の中にも香り(臭い)を通してコミニケーションをする習性があるという。

柳の葉はテントウ虫に食べられると葉から特殊な臭いを出し、これが信号として送られ周囲の葉は固くなり、虫に食べられにくくなるそうで、種族を守るための自然現象です。 また羊のメスは発情すると独特な臭いを放ち、雄がその臭いで発情したメスを探し出すことができるといいます。
動物の嗅覚は嗅細胞により働き大きさは一円玉程度で、絶えず破壊と再生を繰り返しています。

人間は20才頃嗅覚が最高に発達するが、老化と共に一般に衰えてきます。ですから、ある日突然臭いが判らなくなる老人が出現するわけです。

五千年の歴史を有するインド伝統医学アーユルヴェーダは自然界にあるがままの形で芳香を薬物として病気治療や生活の中でエンジョイしていた事が文献に見られます。

暑く乾燥したトロピカルな気候帯に属するインドの地では、芳香、特に精神に新鮮さとさわやかさ、冷感を与えるものは歴史と共に現在も人々の間で愛用されています。

代表的なものはサフラン、白檀、クスノキ、ベチバー、沈香、ジャコウなど沢山あります。

寒い季節にはサフランや沈香が使われ、ヴァータ、カパドーシャをコントロールします。

白檀、クスノキ、ベチバーを一緒に混合したものは強い芳香を放ち、寒い季節と暑い季節の両方に使います。

また、ジャコウと白檀を同量混合したものは(すりつぶす)それ程温めも、冷ましもしないので雨季に使用すると良いでしょう。 芳香物を練り、身体に塗る方法は古代インドでもよく行われていたようですが、その効果は

「体臭を取り除き、身体の疲れ、口渇を鎮め、幸運を呼ぶ 」とあります。活気を増し、皮膚や容貌に輝きをつくるともあります。

芳香のあるガーレンを身につけると、もちろん身体に芳香をつけ、精力や性欲が増し、体力を強め、長寿を促す他にも貧乏運を追放する。〈チャラカ・サンヒター〉

と言います。

目にはバラ花を、喉にはシナモン、皮膚には白檀、頭(特に夏)にはクスノキの芳香が使用されます。

香りの良い花を花瓶に生けるだけでも、花を生ける人に輝きと喜びを与え、罪や悪い星まわりを除き、性欲、活気、金運も上昇するなどの効果があるそうです。
クレオパトラといえば絶世の美女、しかもプトレマイオス王朝最後の女王でしたが、誇り高いことでも世界一。 彼女は毎日バラの香水プールを楽しみ、ローズオイルを肌に塗り愛用していたといいます。そして、古代ローマの将軍アントニウスを虜にした話はあまりにも有名です。
古代ローマはエジプト、アフリカ、サウジアラビア等から乳香、没薬、バラなどの香料を持ち帰り、これを専門にする香料商が繁栄したことも史実です。
香料研究者によれば、日本でも源氏物語の栄えた平安時代に沈香が宮廷貴族の生活の中で愛用されていたとあります。
仏教の教典にも身体に芳香物を塗ることにより『元気が増し、顔色に輝きが生じ、寿命を延ばす』効果のあることが記述されています。
仏教がインドからシルクロードをたどり、中国、朝鮮を経て日本へ伝わった歴史的背景を考えてみますと、

古代インドの生命科学”アーユルヴェーダ”にみられるアロマの知識が仏教と共に東方へ伝えられた事が伺えます。

現在は合成香料が何千種と作られているそうですが、

古代の人達は天然の香料を病気の治療や化粧、生活、精神的修行の中でも使用していたのです。


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