吉野川、雨のち晴れ

 その日は子供たちの夏休み初日であった。四国吉野川中流、半田町青石橋のたもと。その広い河原でキャンプの朝を迎えた。前日午後のフェリーで泉佐野から淡路島に渡り、徳島自動車道を通って夕刻に吉野川着。キャンプに適した河原を求め、青石橋から三好大橋までの間を行き来した。途中の美濃田の淵あたりで良さそうなところがあったものの先客が多く、雑踏のようなキャンプ地を好まない我々は、結局一番最初に目星をつけた、青石橋下の広くて誰もいない河原を選んだのであった。

吉野川の広ーい河原の風景

吉野川の河原、3日目の朝

 テントを設営し終わったのは、既にあたりが暗くなる頃。当日の夕食は外食!と決めていたので、国道を走り出すとすぐにあった「お好み焼き・ラーメン」という看板に誘われ店内へ。たまたまテレビでやっていた「K−1グランプリ」を見ながらビールで乾杯となった。ええ気分でキャンプ地に帰ると、同行のノグチ氏に奥さんからの携帯コール。何でも、天気予報によると明日の徳島はかなりの雨らしい。「今朝見た時は晴れの予報やったのにー?」「やっぱり誰か雨男がおるんやー!」と言いつつも仕方がない。とにかく明日の天気次第で行動を決めることにする。

雨の中、カヌーを漕ぎ出すの図 翌日、明け方から降り出した雨の音で目を覚ます。「やっぱりなー。」仕方がないので、また寝る。朝遅く、タープの下で作戦会議。「濡れながら下るのもなぁ〜。」「今日はゆっくりしよか。」と意見が一致。なにせ、三家族子連れ犬連れ、おまけにファルトのオープン2艇とカナディアンときたもんだ。…といっても昼になるとタイクツになってくる。「カナディアンで遊ぼか。」と雨の中、目の前のゆるい流れに漕ぎ出したのであった。

 夜中まで降り続いた雨も、3日目の朝には上がっていた。今日こそ本番と意気込んでみるものの、帰りのフェリーの予約時間もあるし、あまりゆっくりできない。昼過ぎにはキャンプ地に帰ってこなければ。美濃田の淵までは上がりたかったが、時間がなくて断念。で、決めた出発地点は角ノ浦潜水橋。約8kmのコースである。午前9時、角ノ浦潜水橋着、ファルトを組み立て9時半過ぎ出発。その間に子供たちは対岸へ泳いだりして遊んでいた。シュンは「虫と友達になった。」と言って蚊やアブに手足をいっぱい刺されて戻って来た。

カヌーから見た吉野川の風景 潜水橋から下流は、しばらくゆるやかな流れが続く。河原では小学生達が大勢で手を振っている。手を振り返すと、「どこまで行くのー?」と大声。「海までー」「大阪までー」などとテキトーなことを答えつつのんびり下っていく。ときおり、少し流れの速くなるところでは和舟に乗ってアユのコロガシ釣りをしている人たちがいる。竿を出している方向を避けながら、横を通る時には声をかける。こっちが家族連れであるためか、みんなにこやかに通してくれた。吉野川は良い川である。

 

休憩の模様 江口の橋の下で小休止。そこから毛田までの間には浅瀬が2ヶ所。1ヶ所はファルトの底をこすりそうになりながらも何とか通過。もう1ヶ所で行くべき流れを読み間違い、ファルトを降りてライニングダウン。もう1艇のファルト、ヨシモト艇はうまく水深のある方を判断し調子よく下っていく。東毛田のあたりではたくさんの釣り舟が見え、川幅がせばまっている。まずカナディアンが先行し水深を確認。「ダイジョウブ!」との声を聞いて瀬に突入。これが気持ちの良い2級+αの瀬だった。瀬では水しぶきをざんぶざんぶと浴び、半分ほど水船となったヨシモト艇はあわてて岸に漕ぎ寄せるのだった。

広い吉野川でのんびりカヌーの写真

 その後、キャンプ地の青石橋までは流れもゆるくほとんど静水。子供たちはカヌーを飛び降り、「河童の川流れ」状態でライフジャケットに身を任せつつぷかぷかと流れて行くのであった。

☆吉野川の水は深緑色。上流にダムが2ヶ所あるが、支流からの流れ込みが多いのか、中流まで流れてくる間にそれなりに水質が回復しているようである。しかし、流れ込む支流で工事をやっていたり、本流の淵で流れが淀んでいる場所などは、いっぺんに汚くなる。非常に危ういキレイさである。
 この下流に住民運動により守られた「第十堰」がある。なにはともあれこれ以上環境破壊のもととなり、税金の無駄遣いとなる可動堰建設が中止になってよかったよかった。


吉野川中流域マップ
吉野川中流域マップ


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