技術分野1年生のカリキュラムと1×6材の教材化について |
羽曳野市立高鷲南中学校 |
1 はじめに 今回の指導要領の改訂では「情報とコンピュータ」が必修となり、「木材加工」、「金属加工」、「電気」、「機械」、「栽培」領域が統合され「技術とものづくり」となった。「ものづくり」の時間数がかなり削減されてしまったため、カリキュラム編成がより重要な意味を持つようになってきた。 本校では各学年でコンピュータ室を利用して環境問題・職業調べ・健康安全教育・進路学習などの総合的な学習を行ってきたので、「情報とコンピュータ」のカリキュラムも1〜3年でバランス良く配分する必要が出てきた。そのため、「技術とものづくり」についても各学年で授業時数に適した教材を準備していく必要性がでてきた。 |
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2 技術分野1年生のカリキュラム 1年生のカリキュラムとして昨年度までは年間35時間で「木材加工」を行ってきたが、今年度は「技術とものづくり」を柱としながら「情報とコンピュータ」を組み入れることにした。 「情報とコンピュータ」は、4月当初にコンピュータの基本的な取り扱いや情報モラルを3時間、2月以降にワープロ学習、メールや掲示板の利用を5時間行う8時間計画とした。 「技術とものづくり」は5月から2月までの27時間計画とし、1学期は主に木製品の設計(使用目的や機能、設計のしかた)、製図(キャビネット図・等角図・寸法の記入など)を中心に行い、自分が作りたいと思う作品が設計できるようにした。(表4-2-1) |
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3 夏休みの課題と作品展示会 夏期休業中には「木材を使った作品/製作・提出は自由意志」という課題を出した。どれぐらい集まるか不安であったが、2学期始業式には個性あふれる作品が各クラスで10数名分集まった。 9月最初の技術の授業で夏休みの課題の作品展示会を行い、友達が作った作品を見る中で工夫している点などを観察させることにした。また、文化発表会や地区技術家庭科作品展にもその作品を出展した。(図4-2-1) |
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4 1×6材を利用した教材 材料はDIY店で売られている1×6材(SPF材:19×140×1830mm)1本から製作できるものを考えた。SPF材とは、スプルース(えぞ松)の「S」、パイン(松)の「P」、ファー(もみ)の「F」、の3つの頭文字を併せたものである。色が白くて軽く木材の表面に傷がつきやすいが、価格が安くどこでも手に入れることができる。ただ、ひびやそりなどの変形がおこりやすいので、生徒数より余分に材料を準備しておく方が良い。 作業のしやすさと材料置き場の関係から、設計の自由度は減るがあらかじめ棚板を切っておいた。1×6材の1830mmから262mm3枚を切断し、残りの約1020mmの4枚を1人分として準備した。(図4-2-3) 合板は歩留まりを考慮し、裏板の幅を300mmとして定尺(1820×910mm)1枚から12人分を取ることにした。裏板は各自の設計によって大きさが異なるので、908mmで2人分として調整を行った。(図4-2-5) 作りたい作品を自由にアイディアスケッチとして書かせたら、CD、MD、ゲームソフト、マンガ本の整理できるボックス形や本立てが多かった。スケッチから製作図にするために、収納したい物の大きさに5〜20mm程度の余裕を持たせ、正面図に寸法を加え、板取り図とともに設計を仕上げていった。1学期末にはノート提出を行い、設計・製図の点検と評価を行った。(図4-2-2、図4-2-3) 2学期から製作に入ったが、けがき作業で1回目の点検を行った。次に部品加工を行い棚板の位置と下穴のけがきができた時点で2回目の点検を行った。 試作例は下段にB4版の本と上段にCDが入る2段ボックス型である。組み立ては側板CDに3φドリルで下穴を開けてから、45mm木ねじ(コーススレッド)で棚板@ABと接合した。組み立てた本体に裏板Eを適切な大きさに仕上げてから、13mmの釘で貼り付けた。(図4-2-4、表4-2-2) 設計から製作にかけて作業状況の把握と評価が出来るようにA〜Eの観点別評価シートを利用し、学期末には個人用に5段階評価(技術分野)と10段階評価(家庭分野を含む)の学習と行動の記録を作成した。(表4-2-3、表4-2-4) |
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5 まとめ 木材加工を中心としたものづくりを1年生で行っていく場合、1枚板から設計した自由題材や金属加工やプラスチック加工を取り入れた複合教材を扱うとなると35時間の時間数は必要であろう。1×6材を使った教材は、自由設計で作業を進めることができて製作時間の短縮も可能である。 1×6材を使った教材のメリットをまとめると次の4点である。 @設計を柱とした授業展開が可能で、製作時間数が少ないい場合にも対応できる。 A材料が柔らかいので、楽にのこぎり引きができる。また、かんながけもしやすい。 B裏板・接着剤・ねじ・塗料など消耗品など含めても1000円以内と安価である。 C板厚が厚く木ねじによる組み立てにより強度が出る。失敗しても修正がしやすく、完成率が高い。 3学期には「技術とものづくり」に関連させながら「情報とコンピュータ」を行っていく計画である。完成した1×6材の作品紹介をコンピュータを利用してまとめていこうと考えている。今後、生徒の反省や意見も参考に改良を重ねていきたい。 |
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