薬師如来の十二の大願
『薬師経』には、薬師如来が菩薩として修行しておられたときに衆生を救う
ための十二の誓願をたてられ、菩提を得た(悟りを得た、成仏した)ときには
一切の衆生を救済すると誓われた内容が説かれています。それは、一言で
言えば、「薬師如来の名を聞けば、世の中の一切の苦から逃れられる。」と
いうものです。
次に、薬師如来の大願をかいつまんで簡単に説明いたします。
まず、第一は、自らの光明は極めて盛んに無量無辺の世界を照らし、一
切の衆生も自分と同じように悟らせるという願いであり、第二は、瑠璃のよ
うに清浄で傷や汚れがなく暗闇を照らし、衆生の意の赴く所にしたがって
諸々の事業を成就させるという願いです。
第三は、無量無辺の智恵をもって衆生に無尽の施しをして豊かにすると
いう願いであり、第四は、異端の道を行ずる者を菩薩道に導くという願い
です。
第六と第七は、身体障害等の病苦にある衆生も、看護・医薬から見放さ
れて親族・家族もない貧窮多苦の衆生も、病苦をのぞき心身ともに安楽に
するという願いです。
第十一と第十二は、飢えのために諸々の悪事をなそうとする者にも香味
の食をもって飽食せしめ、衣類のない者にも必要な衣服や装身具を施す
という願いです。
以上のように、薬師如来は、今日普通に考えられている病難厄除や病
気平癒にとどまらず、衆生の全般的な苦(思いどおりにならないこと)から
の救済を願っておられます。
そして、衆生を単に苦から逃れさせるだけではなく、救済された時には、
信仰心により仏の悟りを得させよう、自己本位の生活ではなく他人への
福利の人格を得させようとされるのです。このような悟りと福利がある願
いが「大願」なのです。
薬師如来は、菩提を得て、東方の浄瑠璃世界の教主になられましたが、
釈尊(お釈迦さま)は『薬師経』の中で、説法の相手の一人である文殊菩
薩に次のように語っておられます。
「この薬師如来の有り難い修行によって生まれた大願の功徳は、一劫
(非常に長い時間)より長い間説明しても十分ではない。
そしてこの浄瑠璃世界は、阿弥陀如来の西方極楽世界と同じように綺
麗で、皆差別なく平等である。その世界には、日光・月光の二菩薩が、
大勢の菩薩の上位にあって、薬師如来の功徳の具現に力添えをしてい
る。
さあ、皆この世界に生まれ来るように。」
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