430MHz FM トランシーバの製作

海のかざり

2017/5/31
Last update : 2019/7/23

2019/7/20〜21 に開催された関西アマチュア無線フェスティバル (KANHAM 2019) の JARL QRP CLUB ブースで実物を展示しました(本文参照)。
ブースにお越しいただいたみなさま、ありがとうございました。

花のアニメ概要

430MHz FM は、私の初 QSO のバンド・モードで、以前から自作をやってみたい、と思っていました。
具体的に行動を開始してから14年、ようやく 430MHz FM トランシーバが完成しました(2017年5月完成)。
周波数は 432.00〜433.98MHz、出力は最大で 70mW 程度の QRPp です。安定しているポイントに設定するため、実際の出力はこれより小さくなります。
ケースはタカチ電機工業の YM-300 なので、W300×H50×D200(mm)の大きさです。



430MHz FM トランシーバ 外観



430MHz FM トランシーバ 内部 (左上と右上の基板上部にシールド板がついた状態)
(シールド板には厚さ 0.2mm の銅板を使用)



430MHz FM トランシーバ 内部 (左上と右上の基板上部のシールド板を外した状態)



430MHz FM トランシーバ 概略ブロック図 (なるべく基板配置に合わせて作図した)



430MHz FM トランシーバ リアパネル
(電源ジャックとアンテナコネクタだけのシンプルなもの)
(フロントパネルはレタリングだが、リアパネルはネームランド)


花のアニメこれまでの経緯と構成

具体的に行動を開始したのは2002年8月で、当時無線機自作歴2年の私としては、難しそうなので、方針として、できるだけキットを利用すること、4個のケースに分割して、部分的にでも成功させることとしました。
そこで、アイテック電子研究所(2015/12/29 業務終了)の RX-2/TX-1 「144MHz FM PLL トランシーバキット」、福島無線通信機の UD-72 「430・144 MHz 可逆性アップダウンバータキット」(トランスバータ)、MA-430 「小電力 200mW (max) リニアアンプキット」等を購入し、製作を開始しました。RX-2 と TX-1 でケース2個なのですが、RX-2 のケースと同一仕様のブランクケースも2個購入し、UD-72 と周辺回路用にケース1個、MA-430 と周辺回路用にケース1個を使用することにしました。



製作の過程で登場する4ケースバージョン
(上2つは2003年に製作したアイテック電子の 144MHz FM トランシーバキット(改))
(下から2つ目は今回製作したトランスバータ部:可逆なので送信ランプ(赤)が無い)
(一番下は今回製作した 430MHz アンプ部)

RX-2/TX-1 は完成しましたが、当時 UD-72 がうまく動作せず、2003年9月に 144MHz FM トランシーバ として申請しました。
それから13年、製作経験や測定器も少しは増え、2016年11月に再チャレンジすることにしました。

UD-72 のオリジナルの局発は 32×3×3=288(MHz) で、145+288=433(MHz) となるのですが、例えば、145×3=435(MHz) や 288×2−145=431(MHz) が 433(MHz) に接近しているため、144MHz と 430MHz の2バンドにするのはあきらめ、トランスバータの局発を 15.5×2×3×3=279(MHz) に変更しました。これに合わせて、144.00〜145.99(MHz) の親機(RX-2/TX-1)の周波数を 153.00〜154.98(MHz) に変更し 432.00〜433.98(MHz) を確保しました。
ようやく 433MHz の信号が合成され、ケース4個が機能し始めましたが、使いやすく、長く使えることも必要と考え、1つのケースにまとめることにしました(冒頭の写真参照)。なお、送信は1段、受信は3段アンプを増設しています(詳細後述)。


花のアニメ周波数設定・表示回路

RX-2/TX-1 の周波数設定はサミールスイッチによるのですが、ケース変更に伴い、ロータリーエンコーダで周波数設定できるようにし、5桁の7セグメントLEDで表示することにしました。ただし、PIC や Arduino で新規にプログラミングするところまでするつもりはなく、秋月電子通商のPICを使ったキット(ロータリーエンコーダードライブ回路キット)の使用程度を想定しました。秋月のキットは0〜99の100通りのBCD出力と2桁の7セグメントLED表示ができるのでFBなのですが、430MHz FM は 20kHzステップであり、0〜198で2ステップの100通りの方が使いやすいので、結局汎用ロジックICで組むことにしました。



周波数設定回路



周波数表示回路
(左:表面、右:裏面)

ロータリーエンコーダに加えて、赤と緑のボタンで連続的に UP/DOWN できるようにしたので、ICは13個必要になりました。


花のアニメ送受信共通の高周波回路

PLL 局発回路は、アイテック電子研究所の MC-68 を使用しました。MC-68 は、RX-2 の主要ユニットのひとつであり、PLL IC に MC145163P を用いています。
オリジナルでは、サミールスイッチからのBCD入力に従い、133.30〜135.29MHz (10kHz ステップ)を出力しますが、今回の製作では、前述の周波数設定回路からのBCD入力に従い、142.30〜144.28MHz (20kHz ステップ)を出力するようにしました。
なお、2017/5/31 現在、MC-68 はキャリブレーションにて入手可能のようです(数量&期間限定商品)。



MC-68 PLL局発回路

430MHz にするためのトランスバータは、福島無線通信機 の「430・144 MHz 可逆性アップダウンバータキット」 UD-72 を用いました(2017/5/31 現在、入手可能のようです)。
UD-72 のオリジナルの局発は 32×3×3=288(MHz) で、145+288=433(MHz) となります。
今回の製作では、前述の理由でトランスバータの局発を 15.5×2×3×3=279(MHz) に変更するため、15.5MHzの水晶振動子を購入(サトー電気)し、周波数の微調整ができるよう VXO としました。



154MHz ←→ 433MHz 可逆トランスバータ UD-72 改
(右の写真は DBM 側から見た局発)

当初、可逆トランスバータの、154MHz 側と、433MHz 側にT型フィルタを入れていましたが、433MHz 側の通過帯域幅を狭くし、通過帯域外の減衰量を確保するため、2ポールのバンドパスフィルタに変更しました。山村 英穂 氏著「定本 トロイダル・コア活用百科」p.261 (改訂新版あり)を参考にしましたが、UHF 帯での再現性が良い回路と思います。なお、154MHz 側T型フィルタは撤去しました。



433MHz バンドパスフィルタ

430MHz 送受信の切り替えは、福島無線通信機 の「キャリアコントロールユニットキット」 CA-2 を用いました。キャリコンは使わず、PTT 信号でリレーを動作させています。高周波リレー2個、一般リレー1個が使用されているので便利です。



リレー基板
(キャリコンが必要な場合、基板右上に回路を組む)
(ケースには裏返して実装している)


花のアニメ送信回路

FM 変調回路として、アイテック電子研究所の MC-73 を使用しました。MC-73 は、TX-1 の主要ユニットのひとつであり、マイクからの音声入力を 10.7MHz FM 信号に変換します。
L1=8.2μH マイクロインダクタ、L2=FCZ 10S5 としました(オリジナルは L1=なし、L2=FCZ VX-2)。



MC-73 10.7MHz FM 変調回路

10.7MHz FM 信号は、PLL 回路からの 142.30〜144.28MHz (20kHz ステップ)と混合し、増幅して 153.00〜154.98MHz として出力しますが、このユニットとして、アイテック電子研究所の MC-77 を使用しました。
MC-77 は、TX-1 のもう一つの主要ユニットであり、オリジナルでは、MC-73 の 10.7MHz FM 信号と MC-68 の 133.30〜135.29MHz とを混合し、増幅して 144.00〜145.99MHz FM 200mW として出力します。



MC-77 改 154MHz FM 送信回路

153.00〜154.98MHz の FM 信号は、前述の「154MHz ←→ 433MHz 可逆トランスバータ」等を経て 432.00〜433.98MHz に変換されます。

トータルゲインが不足しましたので、アンプを1段入れました。キャリブレーションの「430MHz RF プリアンプ」を改造しました。オリジナルの石はガリウム砒素 FET の 3SK129 ですが、送信回路に似合わないと考え、後段の MA-430 と同じ 2SC3355 に変更し、電源電圧も 12V 程度としました。



430MHz アンプ
(プリアンプキットを改造)

ファイナルは、福島無線通信機の「430MHz 小電力 200mW (max) リニアアンプキット」 MA-430 を用いました(2017/5/31 現在、入手可能のようです)。トランジスタは前段、後段とも 2SC3355 が使われていました。バイアス回路を改造、調整しました。比較的容易に 430MHz 帯で 100mW 程度が出るので FB です。



小電力アンプ MA-430 (左)と、後流のT型フィルタ(右)

出力の第3高調波(1.3GHz)が規制値を超過することがあったので、後流にT型フィルタを設けたところ、容易に低減できました。
低減が難しいスプリアスは、高調波ではなく 433MHz 近傍ですが、最終的に法令を十分クリアできました。


花のアニメ受信回路

アンテナからの信号は、プリアンプ2段で増幅することにしました。手持ちの関係で、1段目はキャリブレーションの「430MHz RF プリアンプ」、2段目は、FCZ-197 です(ほぼ、同じ物です)。



430MHz プリアンプ
(左:1段目はキャリブレーションの商品)
(右:2段目は FCZ-197)
(写真に写っていませんが、右の2段目にも、入出力保護用のダイオードを設置しています)

前述の「154MHz ←→ 433MHz 可逆トランスバータ」等を経て、432.00〜433.98MHz から 153.00〜154.98MHz に変換されます。

153.00〜154.98MHz の信号は、プリアンプ FCZ-127 (144MHz 帯のものを 154MHz に改造)で増幅することにしました。
2017/5/31 現在、このキットは販売されていないと思われますが、キャリブレーション から、異なる設計の「RFプリアンプ」がパーツセットとして販売されており、改造すれば使えると思われます。



プリアンプ FCZ-127 改
使われている FET は 3SK129 だった)

オリジナルの RX-2 では、MC-63 にて、アンテナからの 144.00〜145.99MHz と PLL 局発回路からの 133.30〜135.29MHz 局発とを混合して、10.7MHz の第1中間周波数に変換し、最終的に FM 復調してスピーカに出力しますが、今回は、MC-63 にて、トランスバータ(プリアンプ経由)からの 153.00〜154.98MHz と PLL 局発回路からの 142.30〜144.28MHz (20kHz ステップ)とを混合して、10.7MHz の中間周波数の信号を得ています。スケルチ回路を残留ノイズレスに変更しています。
なお、2017/5/31 現在、MC-63 はキャリブレーションにて入手可能のようです(数量&期間限定商品)。



MC-63 通信型 FM 受信ユニット

天板のスピーカへの配線は3.5φミニプラグ・ジャック経由とし、天板を外しやすくしています。
なお、外部スピーカジャックもフロントパネルに設置しています。



天板のスピーカへの配線は3.5φミニプラグ・ジャック経由で


花のアニメハムフェア2017での展示

2017/9/2〜3 に開催されたハムフェア2017 の JARL QRP CLUB ブースで実物を展示しました。
ブースにお越しいただいたみなさま、ありがとうございました。



ハムフェア2017 の JARL QRP CLUB ブースで展示した、430MHz FM トランシーバ(左)と JA Pepper 60 (右)
(いずれも中が見えるよう、上部と左右をアクリル板(厚さ 2mm)にしている)


花のアニメ北海道ハムフェア2017での展示

2017/9/23〜24 に札幌市で開催された北海道ハムフェア2017 の JARL QRP CLUB ブースで実物を展示しました。
ブースにお越しいただいたみなさま、ありがとうございました。



北海道ハムフェア2017 の JARL QRP CLUB ブースで展示した 430MHz FM トランシーバ
(中が見えるよう、上部と左右をアクリル板(厚さ 2mm)にしている)


花のアニメ関西アマチュア無線フェスティバル (KANHAM 2019) での展示

2019/7/20〜21 に開催された関西アマチュア無線フェスティバル (KANHAM 2019) の JARL QRP CLUB ブースで実物を展示しました。
今回は電源が確保できたので、アンテナを設置し、受信のデモをしました。
ブースにお越しいただいたみなさま、ありがとうございました。



関西アマチュア無線フェスティバル (KANHAM 2019) の JARL QRP CLUB ブースで展示した 430MHz FM トランシーバ
(中が見えるよう、上部と左右をアクリル板(厚さ 2mm)にしている)
写真右の配布資料はこちら(PDF)


花のアニメおわりに

まずはローカル2局とQSOできました。2局めは約 50 分のラグチューでしたが、問題ありませんでした。
みなさまも、初QSOのバンド・モードの無線機の製作をご検討されてみてはいかがでしょうか。


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