おおさかづきしゅせんのつわもの
大杯觴酒戦強者

【見どころ】
やっぱり大酒飲み対決ですかね。
わっちゃぁ酒が飲めないので酒飲みの心境はわかりまへんが、旨そうです(笑)
出てくるのは立役ばかりで女っ気はまるでなし(歌舞伎はもともと女がいないけど)
色気のない芝居でするぅ。色を添えてると言えるのは若衆方ぐらいですもん。
そのためでしょうかね〜、あまり上演されないみたい。
でも、これが、けっこう面白い。酔態が笑えるし、全体に爽やかな芝居。
短編でもあるから、もっと上演されてもいいのになぁ、と思います。

【あらすじ】
「内藤家足軽部屋」
内藤紀伊守の屋敷に仕える新参者の足軽、才助はたいそうな大酒飲み。
嫌われようが病気になろうが飯より好きな酒はやめられないと、
今日も昼間から酔っぱらい、始末におえない。
そんな才助にお上から御用の声がかかった。酒豪で有名な御老職の井伊掃部頭直孝が
客人として来るので、その酒の相手をするようにという仰せだ。
ついては足軽身分がばれないようにしろだの、言葉遣いに気をつけろだのと、
小煩く言われるのだが、酒が飲めるなら喜んで、と才助はいたって上機嫌(笑)

「内藤家広書院酒宴」
内藤紀伊守井伊掃部頭を広書院でもてなしていた。いよいよ酒宴。
掃部頭の前に出されたのは三組の大杯。これを残らず飲み干した者はかつてない。
まず五合入りの杯を掃部頭が飲み干すが、その流れを受ける者がいない。
そこへ、酒の相手役として才助が連れ出されてきた。
才助はさっそく五合の杯を受け、駆けつけ三杯というからと杯を重ねる。
その豪快な飲みっぷりに掃部頭も上機嫌だ。
互いに杯を交わしていくうちに、日頃の下世話な言葉が才助の口から飛びだし、
それを掃部頭に問いただされたりして、ごまかすのに四苦八苦(笑えまする〜)
やがて、一升入りの杯まで飲み干してしまった才助の
眉間の傷に目をとめた掃部頭は、才助が本当は武田の浪人の
馬場三郎兵衛信人であることを見破った。実は、このふたり、
大坂冬の陣、夏の陣では東西に分かれて刀を交えたことのある仲だったのだ。
思いがけぬ再会に、再び大杯を交わすふたり。三郎兵衛が気に入った掃部頭は、
「今日の肴」として三郎兵衛を所望するが、それを紀伊守は断った。
互いに引けない意地から、武術の試合で決着をつけることに。
武術の苦手な紀伊守の名代として三郎兵衛が名乗りをあげ、掃部頭と一騎討ち。
酔っていても三郎兵衛の腕は確かで、結局、掃部頭は三郎兵衛をあきらめることに。
そして紀伊守は、三郎兵衛を異例の千五百石で取り立てることにする。
なんと大酒飲みで出世!という物語は、これにてメデタシメデタシの幕となる。

【うんちく】
明治十四年(1881年)初演。
河竹黙阿弥が、初代の市川左団次の芸風にあわせて書いた狂言とのこと。