ごんざとすけじゅう
権三と助十

【見どころ】
大岡政談の「小間物屋彦兵衛」の話が裏にあるってことらしいのだが、
現代の若者にしたら「大岡政談って何?」なわけで、そんなこたぁどうでもよろし(笑)
半分コメディタッチの楽しい芝居で、言葉もわかりやすいので、
素直に「おもしろーい!」と見てくだされ。
で、どこがおもしろいかってぇと、登場する裏長屋の住人達の人物像。
喧嘩っ早くて、気が強いかと思えば、臆病で、と、みな人のいい一般庶民なんですわ。
ごくふつーの人達が主役なんで、気軽に「あはは」と笑えますよん。

【あらすじ】
かごかきの権三と相棒の助十が住んでいる神田の裏長屋。
今日は、年に一度の井戸替えの日だ。夏の日ざしが照りつける中、
長屋中が総出で作業をするが、騒ぎの方が多くて、なかなか作業がはかどらない。
そこへ、長年この長屋に住んでいた小間物屋彦兵衛のせがれの彦三郎が、
家主の六郎兵衛を訪ねて来た。彦兵衛は強盗殺人の罪で入牢中に病死したのだが、
彦三郎は穏やかで人のいい父親がそんなことをするとは信じられず、
無実を証明して父の汚名を晴らしたいと、はるばる大坂から来たのだった。
それを聞いた権三と助十は、何やらもじもじ・・・。実はふたり、
事件の夜に真犯人とおぼしき人物、左官屋の勘太郎を目撃していながら、
かかわり合いになるのを恐れて、これまで黙っていたというのだ(大ひんしゅく〜!)
やはり彦兵衛は無実の罪。しかし、名奉行と評判の大岡越前守の裁きで落着した事件を
再審議してもらうにはどうしたものか・・・。六郎兵衛が知恵を絞る。
権三、助十、彦三郎に縄をかけ、「彦兵衛は無実なのに家主が十分に訪ねなかったと
暴れ込んできたので引き立ててきた」と訴え出れば、再審議になるのではないか。
長屋のみんなの声援を受けて、権三たちは引き立てられていくのだった。
六郎兵衛の思惑どおり事件は再審議となったが、勘太郎は証拠不十分で釈放され、
長屋の住人たちはおもしろくない。ところが、その問題の勘太郎が、
「無事に帰れた礼に」と角樽を持って、なんと権三と助十を訪ねて来たのだ。
そんなワケのわからねぇ酒は受け取れねぇ!と強気に出る権三と助十だったが、
勘太郎が一瞬にして猿を絞め殺してしまったのを見て、とたんに弱気に(ヲイヲイ)
しかし、助十の弟の助八が勘太郎に食ってかかるのを見たら再び勢いづいて(苦笑)
長屋の連中もみんなで(ヲイヲイ)寄ってたかって勘太郎を痛めつける。
そんな騒ぎの中へ奉行所の役人が来て、勘太郎を真犯人として引き立てていった。
実は、大岡越前はすべてを承知の上で勘太郎を釈放、泳がせたらしいのだ。
そうとも知らぬ勘太郎が天井裏に隠してあった血のついた財布を燃やすところを
隠し目付けに目撃されたというわけらしい。さらに、彦兵衛も死んではいなかった。
嘘の発表をしたのも真犯人を油断させる大岡越前守の策略だったのだ。
さすがは大岡様、無事で良かった、と長屋のみんなの明るい笑顔(めでたしめでたし)

【うんちく】
大正十五年(1926年)初演。岡本綺堂の作品の二幕物。
この芝居の冒頭は、“井戸替え”ってゆーシチュエーションからはじまります。
長屋の人達がみんなで使う共同井戸の中をきれいにするために、
年に一度、井戸水を一度すべて汲みだして、底にたまったものを除く作業を
長屋の人達総出で行ってたんだって。作業が終わればお酒が出て慰労会になったとか。
江戸の夏の風物らしいでする。