単相 100V 用 単相インバータ もどき… ( 555 版 )  2005.11.11


  2006.01.28 L 負荷 の動作波形を追加

・ 動作   ( 回路図
 
単相100Vを位相制御するのではなく、「一波(正負)単位」で制御して、擬似的に周波数を変えよう…というものです。(単相100Vに同期して高速にスイッチのON/OFFをやるわけです)
単相 100V 駆動波形


 ← この 単相 100V を、
   1波 ON 、2波 OFF にすると
   見かけ上、1/3の周波数になる?
 
内部の発信器 (555) の出力で 単相 100V を ON にするタイミングをコントロールすれば、結果、その発振周波数によって、ON になる「1波(正負)」の間隔が変化し周波数が変わったように見える?事になります。

当然の事ながら、周波数を上げる事はできません。(笑)
一般的なインバータに比べてノイズが出ないのがメリットでしょうか。

・ ひとこと (言い訳…)
 
1) これは主に開発現場とかで、スピードコントローラの付いていない(単相100Vで動く)モータのスピードを少し落としたい・・・などという用途に向けたものです。(全てのモータで使えるわけではありませんが…)
アマチュアの方が家庭用の機器をコントロールするのは「想定外」(笑)です。

2) この回路図では2AタイプのSSRなので、ヒューズも2Aになっています。SSRを大電流タイプに変更する場合、ヒューズも変更して下さい。
L 負荷(モータとかソレノイドみたいに「コイル」があるヤツ)には突入電流がありますので注意してください。

3) 動作原理上、周波数が下がると「スムースな動作」は望めません。特に負荷の軽いモノには向かないようです。例えば12cm角のファンだと、周波数を下げると「かっかっかっ」(笑)と回ります。これが、30cmの家庭用換気扇あたりだとけっこうスムースに回ります…。
尚、周波数を下げた場合、「高速にスイッチをON/OFFしている状態」となんら変わりませんので、対象となる機器によっては寿命に影響を与える事もありそうです。ご注意願います。

4) 回路的にCRを多用していて、555の発振回路以外でもノイズなどの影響を受けやすくなっています。作成される時は配線を短く、コンパクトに組んで下さい。

5) 回路図にはIC毎のパスコンを書いていませんが、適当に実装願います。初心者?の方は、IC毎にVCC端子とGND端子の間へパスコン(104)を実装されるのが無難です。

6) AC100Vの感電にはくれぐれもご注意願います!

・ 備考
 
1) 周波数調整用VRトリマの値を1MΩにした場合、555の発振周波数の範囲は、ほぼ2Hzから100Hz程度になるハズです。対象によっては、もっと範囲を絞った方が操作がしやすくなると思いますので、周波数調整用VRトリマの値を1MΩから250KΩとか100KΩとかへ変えてみて下さい。

2) +5Vの消費電流は、555の種類にもよりますが、5mA程度だろうと予想されますので、7805はLタイプで充分です。もちろんヒートシンクは不要です。(電源は7805で安定化しなくても、ほぼ問題なく動くようですが…)

3) トランスの2次側はセンタータップ付きで、電圧は6Vとなっていますが、これより低い電圧はマズイかも知れません。高い方は10V程度までなら問題は無さそうです(←テストはしてませんが…)。ゼロクロス検出のタイミングは電圧が高い方が正確になります。電流は50mA以上のモノが安心です。
電源片波整流
4) センタータップ付きのトランスが無い場合、2次側の巻線の片側をGNDへ落とせば(回路図で巻き線の片側が無くなった状態)、問題なく動作します。その場合、片波整流(懐かしい…)になりますが、消費電流も少ないので、特に問題は無いと思われます。
  電源両波整流


ダイオードブリッジで全波整流にすると、ゼロクロスの検出位相が少しズレる事になります。
 
5) 回路図では、ゼロクロスSSRの型式が D2W102F になっていますが、これはだいぶ前に秋月電子通商で買ったヤツです。今は D2W203F が売られているようです。(200V3Aタイプ、¥250、2005.11.09)

6) SSRの駆動電流は、数mA〜十数mA程度と思われますので、Q1,Q2 は何でもいいと思います。(2SC1815とかで)

7) SSRの駆動電圧が+24Vとなっているモノには注意が必要です。この回路図だと、せいぜい8V程度の電圧で駆動する事になります。D2W102F には 28V との記述がありますが、これで充分動くようです。(D2W203Fも4V程度より動作するとか)
ただ、メーカの保証の範囲外で使う場合、動かなくても文句は言えません…。

・ SSRの動作について
  SSR 動作波形
「ゼロクロス動作」をうたっているSSRの中には、目的の半波の「手前の半波の最後付近」でONになるものがあります。正確なゼロクロスより少し早くSSRを駆動すると、その現象が出るわけです。正確なゼロクロス点でSSRをONにすれば、この問題は起きません。(普通はこの現象が起きてもあまり問題にはならないと思いますが・・・) (波形拡大) 
  これが問題になる場合、SSRのONタイミングが早い可能性がありますので、まずはオシロでタイミングを確認してみて下さい。(理想的なゼロクロスなら、こういう事は起きないハズなのですが… まっ、世の中に「完全」は無いのが常ですから)
ゼロクロス検出部

本回路で一番簡単に「SSRのONタイミングを遅くする」には、ダイオードのD3とパラに、103〜104のコンデンサを入れてみて下さい。
  SSRのONタイミングを遅くし過ぎると「次の半波がONになる」ので注意して下さい。

・ 非ゼロクロスSSRを使う場合
 
たぶん…、そのままで動くと思いますが、動作テストはしていません。組立て後、動作確認をお願いします。

・ L 負荷の動作波形  2006.01.28 追加
 
「回りモノ」用に作った…と言いながら L 負荷の動作波形を無視していました。 m(_ _)m
とりあえず、手元の AC100V 用のファン(パソコン背面に付いているのより少し大きい 12cm 角 で AC100V 用のヤツ)でテストしてみました。

SSR をちゃんとゼロクロスでドライブしているのに AC100V の OFF 側がすぐに OFF していません。

L 負荷(モータとかソレノイドとか…コイルのあるヤツ)の場合、交流を流すと電圧と電流の位相が異なるのがその原因です。ここいらへんは知っているヒトにはごく普通の事なんですが、日ごろ縁の無い方には「なんじゃそりゃぁ!」となるかも知れません。

詳しいことは web で調べていただくとして、L 負荷 なるモノは「電流が電圧より 90 度遅れる」事になっています。(現実には色々な要因が存在して完全に 90 度になることはまずありませんが)

で、この AC100V のファンへ 直列に 1 Ω を入れて、流れている電流を見てみました。

紫色の波形が電流のものです。(ちょっとノイズが乗ってますが…)
電圧と電流の波形のズレは 90 度ではありませんが、それに近い?タイミングになっています。教科書に出てくる交流はきれいな Sin 波形になっていますが、現実の波形は右の図のとおり、かなり歪んでいます。

ここで注意していただきたいのは「電流が OFF 」になったタイミングで SSR が OFF しているという事です。そのため、「位相の異なる」電圧はゼロでは無いタイミングで OFF になっている?ように見えるわけです。

ここいらあたり、なかなか難しい(楽しい?)問題でして、実際の制御でもトラブルになるケースは色々とあるようです。また、L 負荷 の場合は「 ON 時の突入電流」の問題もあります。
そうでなくてもサイリスタ系は各種定格が大きくバラ付いていて、シビアな設計が難しい問題もあり、制御の相手が交流ではなく直流であっても油断はできないのですが・・・。

あっ、SSR は「大は小を兼ねる」わけではありません!ので注意して下さい。例えば 20A の SSR で 1A 以下の機器の制御を行った場合などです。SSR (サイリスタ系)には「最低 ON 電流」とでも言えるスペックが存在し、小電流負荷の制御には注意が必要です。他にも印加可能な電圧のスルーレートには制限がある(急峻な変化の電圧を印加すると勝手に ON になる?)とか、細かく検討すればけっこう面倒くさい(楽しい?)デバイスだったりします・・・。


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