- ATFにとって何が最悪かと言うとATFの異常高温です、ATFの劣化を促進しATの破損に繋がるのでATFの早期交換(エンジンオイルも同様)と言う案配です。
- 下記の表をご覧頂くとよくお判りになると思いますが油温が10℃上昇するとATFの寿命は半減します、極力ATFの温度を上げないことです。
症 状 |
油温 ℃ |
走行可能キロ数 (X1000Km) |
|
50 |
100 |
150 |
200 |
250 |
300 |
350 |
400 |
|
| ・クラッチを焼損させる
・カーボンを生成する
・シール類を傷める |
157 |
3,200km
|
・クラッチがスリップする |
150 |
6,400km
|
・シールを硬化させる |
127 |
24,000km
|
・バーニッシュ化する
(ドロドロしたニス状) |
116 |
40,000km
|
|
100 |
80,000km
|
|
90 |
192,000km
|
|
80 |
384,000km
|
- 箱根や日光などで急斜面を連続登坂すれば5分程度でATF温度は120℃程度になります、40km/hで10%勾配を走行すると5〜10分で130〜140℃程度になるのです。
- ましてもっと低速で走行風も期待できないとなればATFは悲鳴を上げていることになります。
- 登坂時には低速段ほどAT(=トルクコンバータ)の発熱は少なくなります。
- 従って、車速と登坂勾配が同一でもDレンジで自動的に選択してくれる変速段より一段落とした低速段で走行すれば10℃程度は油温が低下するので温度が心配なときにはDレンジではなく1速や2速にホールドして登坂するのがよいでしょう。
- エンジンは高速回転させると発生熱量は増大傾向ですがトルコンは低速ほど発生熱量が増大するのでAT側から見ればできるだけ低速段でエンジンの回転を上げて登坂することが望ましく、エンジン側から見れば高速段でエンジンの回転を下げて登坂するのが望ましいことになります。
- 総合的にはATの方が熱的には弱い傾向なので登坂時にはできるだけ低速段で一挙に登坂するのが良いでしょう。
- それ以外の運転者に起因する最悪のものとして
- Dレンジ停止時にわざとブレーキペダルを踏みながらアクセルペダルを10秒間以上に渡ってスロットルを全開にした。
- Nレンジで停止していて信号が青になり慌ててアクセルペダルを踏み込んだが車両が発進しなかったのでそのままアクセル全開でDレンジをセレクトした。
(信号等での一時停止時にNやPレンジに入れる習慣のある方はご注意を)
など、設計的に殆ど想定していない(意地悪運転の認識はあり)ことが発生するとATFの温度は一挙に許容温度を越えてしまいますのでこう言った運転はくれぐれも行わないでください。
- 従ってレースで使用したとか、長時間の登坂をしたとか、誤って前記のような運転操作をしてATFの温度を上げすぎた場合はATFの劣化が促進されますので早めの交換が必要です。
- またATFだけではなくATに使用されている湿式クラッチやブレーキの摩擦材は和紙が使われていますがこれも熱が大敵です。
- ただ、紙だけではあの過酷な発熱を吸収できませんのでレジンで表面を固めます、そして適度なポーラス状で弾性のある状態にしてプレスで油溝を加工します。
- ポーラス状にして油を染み込ませ弾性の有るペーパーを抑えつけるときにATFが染み出してきてクラッチディスクの冷却と耐シャダー摩擦特性(相対滑り速度の増大に対して摩擦係数が上昇)を確保しているのです。
- 従ってアクセル全開でDレンジに入れるなどした場合、クラッチとブレーキは一気に温度上昇して摩擦材を劣化損傷させるとともにATFをも劣化させます、ATを長持ちさせるには、あるいはATFの劣化を防止するにはやはり温度を上昇させる機会を極力減らすことです。
- いつから標準装備されるようになったのか知りませんがNewXタイプにはサーモスタット付きATFクーラーが装備されています、ATFの無交換化と連動しているのかも判りませんがメーカーとしても必要という認識になっているのでしょう。
- 特にSr3以前のロックアップ装置が付いていないATの場合トルコンでのスリップロスは大きく高速の連続走行では油温がかなり上昇しますのでATFクーラーの取付がベターです。
- 私の車にXタイプのサーモスタット付きATFクーラーを取付てみました、詳細はATFクーラーの取付をご参照ください、夏場の高速走行でも90℃の適温を保ってくれるので油温対策はバッチリです。
|