- つぎは点火系統です。
- 制御回路の不良
- 点火系制御回路の構成部品としては下記の物があります。
- 燃料ポンプリレー(コイル断線、接点不良)
- メインリレー(コイル断線、接点不良)
- コールドスタートリレー(DD6の場合 : コイル断線、接点不良)
- スターターリレーの内、燃料制御側の接点
- リレーの端子、ソケット、コネクター、リード線等(断線、接触不良)
- ECU
- ここらの不具合になると外から眺めているだけでは判りません、皆さんが悩まれてきた原因の大半はこれらの部位の接触不良ではと推測されます。
- 私自身もここらの不具合を経験しましたがジャガーの場合リレーの端子、ソケットの端子などメッキされて無く真鍮の地金むき出しの物があります、電子機器では接触不良は訳の分からないトラブルの元凶のため必要に応じてスズメッキや金メッキなどが行われます。
- しかし車の場合はコストの問題もあるのでしょう金メッキではなくスズメッキや半田メッキが施されているようです、真鍮の地金むき出しでは接点復活剤を塗布していても真っ黒に酸化しました。
- 実際の端子の手入れの方法などは燃料ポンプリレーソケットの手入れを参考にしてください、半田メッキしておくだけでも信頼度はうんと向上します。
- まずバッテリーのマイナス端子を外します、バッテリーは内部抵抗が低く短絡した場合に流れる電流は半端ではありません、瞬時に配線焼損、果ては車両火災に発展する恐れがあります、くれぐれもご注意を。
- 特にスタータリレーや燃料関係リレーの場合ヒューズは付いてませんので活線作業は非常に危険です。
- 各リレーや配線の目視検査をします、リレーは引き抜いて端子の汚れ具合、メッキされて無くて真鍮地金の場合、酸化がひどければ磨いて半田メッキしておきます、半田は相手を良く加熱し全体を均一に薄く仕上げるのがベターです。
- 半田付けの場合通称「ペースト」は使ってはいけません、アルコール?だったかで綺麗に掃除できればいいのですが隙間に入り込んだ場合腐食の原因になります、お奨めはヤニ入りの糸半田です。
- メス端子の方は端子引き抜きSST(上記燃料ポンプリレーソケットの手入れ参照)を使い、間違い防止のため一つずつ引き抜いて掃除をします、長年の使用によりオス端子の締め付け力が低下していますのでペンチ等で少し押しつぶし気味にしておきます。
- リレーのケースを開けて接点の手入れをされる場合は500番くらいの細かいペーパーで手入れしてください、接点には接点復活剤などを付けてはいけません、切断時のアークで炭化して接触不良を引き起こします。
- 回路のチェックはテスターが便利です、O2センサーのチェックでは入力抵抗の高いテスターが必要ですがそれ以外は市販の安価なアナログテスターがお奨めです、ディジタルテスターでも良いのですが入力抵抗が高いため接触不良の回路をチェックする場合誤診する可能性があります。
- 点火系の不良の場合。
- 点火コイル不良(断線、レアーショート、高圧リード線挿入不良)
- まずは高圧がちゃんとスパークしているかどうかチェックしてください、スパークの状況で不具合箇所の切り分けをします。
- プラグコードを外しアース間でスパークするかどうか、ここで飛んでなければプラグコードかディストリビューターが怪しいです。
- 点火コイルからデスビに行っている高圧リード線のデスビ側を引き抜きアース間でスパークするかどうか、駄目ならコイルの可能性があります、飛んでいればデスビの不良です。
- コイルの場合コイルそのものが悪くなっている場合と平端子(ファストン端子)の特にオス側の端子にメッキがされて無く表面が酸化している場合接触不良となっている可能性があります。
- 端子を数度抜き差ししてみて回復すれば間違い有りません、燃料ポンプリレーソケットの手入れを参考に手入れしてして下さい。
- コイルのレアーショートの場合火花がうんと弱くなると思われます、テスターでコイルの抵抗値を当たっても良いのですが断線の場合ははっきり判りますが高圧のレアーショートの場合判断が難しいでしょう。
- 端子の抜き差しで治らなければコイルの不良と思われますので取り替えます、トラブルは何時起こるか判りませんのでトランクに予備を1個積んでおかれることをお奨めします。
- 高圧リード線の挿入不良には注意してください、電極が接触していなくてもスパークでつながっている場合、エンジンは掛かりますが長時間のスパークでコイル側の絶縁物が焼け火災に発展した事例があります。
- 余談ですがDD6の点火コイルは鬼門のようですね、XJ6では断線など不具合事例を聞いたことがありません、私が知らないだけかも知れませんが。
- SerVのマニュアルの一般仕様欄を見ているとエミッション対策(A〜E)のタイプ毎に点火コイルの型番が指定されています、私が調べた限りでは下表のようになっていました。
車種 |
コイルメーカー |
コイル型番 |
コイル一次抵抗(Ω) |
バラスト抵抗(Ω) |
デスビ型番 |
XJ6 |
Lucas |
16C6 |
1.2〜1.5 |
- |
45DM6 |
32C5 |
0.75〜0.85 |
- |
Ducellier |
520076A |
0.8〜1.0 |
0.8〜1.0 |
DD6 |
Lucas ? |
22C12 |
0.9〜1.1 |
- |
36DE12 |
23C12 |
0.7〜0.85 |
- |
35C6 (x2) |
0.6〜0.8 |
- |
36DM12 |
- 日本仕様の XJ6 の場合、16C6 のコイルは 1978〜1980 で、32C5 と 520076A は 1981〜 となっています。
- 日本仕様の DD6 の場合、22C12 と 35C6(x2) のコイルは 1978〜1980 の D Jetronic と Pre HE の P System PI Digital となっていますがエミッションの種類と仕向地、適用年度などもう一つよく分かりません。
- 詳しくはSerVのマニュアルやお車を調べていただきたいのですがここらに詳しい方がおられましたらお教えいただければ幸いです。
- バラストレジスターですが私のXJ6には付いてませんが他のXJ6では何台か拝見しました、DD6でも付いているお車を拝見しています、特にコイルが良く駄目になるDD6ではマニュアルの一般仕様では記載がないのに電装回路の説明では載っているので話の辻褄が合いません。
- ある国内メーカーのコイルを見るとバラストレジスターを含めて3オーム前後有ります、XJ6のバラストレジスターの抵抗値を測ったことがありますが1オーム以上有りましたのでコイル単体だけの取付では抵抗値が低いように思われます。
- これらから考えると個人的にはバラストレジスターは Lucas のコイルでも必要な気がします、これがないとコイルに電流が流れすぎて過熱しレアーショートに発展するのではと推測しています。
- 特に設置環境が悪いDD6の場合はバラスト抵抗を付けるべきなのかも知れません、バラスト抵抗を付けていてもコイルが駄目になるのかどうかここらの関係も知りたいところです。
- 点火コイルの高圧側リード線不良(断線、接地、リーク)
- 断線の可能性は少ないと思われます。
- 接地は振動でリード線の絶縁物が摩耗した場合などが考えられます、振動の影響のないようにしっかり固定してください。
- リークですがリード線の途中でスパークしていても日中目視では見つけられないでしょう、夜間であれば小さな火花が飛んでいるのを見つけやすいです。
- 特に金属部分と接触している辺りには注意してください、リード線の表面を詳細に点検すると小さいですが黒くスパークした痕があります、この場合修理できませんので取り替えてください。
- ディストリビューター不良(高圧のリーク、ローター接触電極不良、クーラント等の冠水)
- デスビの不良の場合下記が考えられます。
- デスビのケースにひび割れが有る場合ゴミその他で絶縁が下がりリークする場合があります。
- 私が経験したことですがデスビの中心電極が悪くなり火花が飛ばなくなりました。
- 点火コイルから来た高電圧はデスビの中心電極からローターの頭の電極をを経由して各プラグ側の電極に配電します。
- そのデスビの中心電極ですがカーボンの電極を後ろからコイルスプリングで押してローターの頭の電極と機械的に接触しています。
- カーボン電極が摩耗により短くなりコイルスプリングと機械的な接触が無くなってアークが発生、コイルスプリングは焼損して原形をとどめない状態でした、そのためローターに通電せずに点火不良になったことがあります。
- これはレアーなケースだと思いますがこれらの場合デスビキャップの取替をしてください。
- また、XJ6は丁度真上にエンジン冷却水用のサーモスタットハウジングがあります、ここにエアー抜き用の細いホースがありますが配管の減肉でホースの締まりが悪くなり漏水、デスビの上からクーラントがかかって漏電、エンジン不調となったこともあります。
- ローター不良(高圧のリーク)
- これも私が経験したことですがローターのプラスチック内部でリークしたことがあります、一寸専門的ですが架橋ポリエチレンケーブルで水トリーと言われる樹枝状に絶縁破壊が進む現象がありますがこれと同じようにプラスチック内部で絶縁破壊が進み導電部からデスビローター軸に架けてリークしました。
- ローター軸側にイグニッションコイルの高圧リード線を差し込んでアース間とスパークさせて見ました。
- 本来ローターの軸とトップの電極との間は絶縁されているのでスパークしてはおかしいのですがものの見事にスパークしています。
- そのローターの軸側内部です、矢印の部分が黒くなってますがここからリークしていました。
- ローターをカットしてみました、左の部分がリーク痕です、右の赤丸内はクラックで一杯です、結局製造不良により内部に巣が出来てここからジワジワと絶縁破壊が進んだものと思われます。
- ピックアップコイル不良(断線)
- デスビ内にあるピックアップコイルですがその抵抗値は下記表のとおりです、断線することはないと思いますが点検時の参考にしてください。
XJ6 | 2.2〜4.8KΩ |
DD6 | 2.2〜4.8KΩ |
- マニュアルを見るとDD6のデスビでピックアップモジュール?の抵抗を測る項目があります、ピックアップコイルとどう違うのかよく判りませんが取りあえず抵抗値とイラストを載せておきます。
DD6 |
センターと1番端子間 2.5Ω±10% |
センターと2番端子間 0.9Ω±10% |
- イグニッションアンプ不良
- これもジャガー&ディムラー定番の故障です、特にDD6は設置環境が劣悪で設計ミスではと思っています。
- ところが私が持っているマニュアルにはアンプをラジエター上のクロスメンバーに取り付けているイラストがあります、実際にエンジントップセンター以外に移設されてる方もおられます。
- オリジナルのDD6でラジエター上のクロスメンバーに取り付けたお車を実際に拝見したことはないのですがそんなお車をお持ちの方がおられましたらお教えいただければ幸いです。
- 結論としてはXJ6,DD6とも熱影響の少ないところに移設するべきだと考えています。
- 端子、コネクター、リード線等の抜け、接触不良や断線
- まず目視でしっかり確認してください、特に平端子(ファストン端子)は僅かな力で抜けますので注意が必要です。
- 私も一通りチェックして手入れしていましたが見落としていた端子としてイグニッションアンプのデスビからのピックアップ信号用コネクターです。
- 出かけようとしてエンジンが掛からず調べたら火花が飛んでいませんでしたがこの端子を数回抜き差ししたところあっけなくエンジンがスタートしました。
- アンプ側はオスの平端子になっており一応スズメッキか半田メッキのようなメッキがしてありました。
- オス端子は清掃手入れを行いメス端子はSSTで端子を抜き取って接触圧を高めるようにペンチで押さえつけておきました。
- 実際の端子の手入れの方法などは上記制御回路の不良の項目で書いておりますように燃料ポンプリレーソケットの手入れを参考にしてください、リレーその他のオス端子で真鍮地金の物は半田メッキしておくだけでも信頼度はうんと向上します。
- プラグコードの付け間違い
- XJ6の場合プラグコードが長く付け間違えることがあります、点火順序は下記のとおりです。
- XJ6 : 1, 5, 3, 6, 2, 4
- DD6 : 1A, 6B, 5A, 2B, 3A, 4B, 6A, 1B, 2A, 5B, 4A, 3B
- シリンダーの番号は XJ6 は後から、DD6 は前からで右側が A バンク、左側が B バンクとして割り振られています。
- その他
- ジャガー&ディムラーの燃料噴射は点火パルスをトリガーとしてECUがインジェクターを動作させています。
- 従って点火コイルからECUへ信号が送られないと燃料が噴射されないため初爆はあってもエンジンは掛かりません。
- 考えられる要因としては接触不良でしょうか、前項に従って端子などの手入れしてください。
- 参考までに燃料噴射は下記のように行われます。
- XJ6
点火パルス3発で燃焼必要量の1/2の燃料を全気筒に同時噴射
- DD6
点火パルス3発で燃焼必要量の1/2の燃料を指定6気筒に同時噴射
(噴射グループ)
1回目 : 1A, 3A, 5A, 2B, 4B. 6B
2回目 : 1B, 3B, 5B, 2A, 4A, 6A
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