−好事魔多し−


◆順調な毎日
こうして始めたお遍路は順調に進んだ。二度目ということで気持ちにゆとりがあった。出来るだけ前回通らなかった遍路道を選んだり、宿も出来るだけ前回と別のところにしたりしながら、体調もよく快調だった。一日の歩行距離も、前回に比べて少し多くした。 徳島を出てからは連日30キロ以上を歩いた。前回は初めてということで、どうしても少し短めになっている。歩いてみれば歩けるものだと自分でも感心した。

山道の緑のトンネルや海岸線の美しい景観を楽しみながら、《有難いなあ、これもみなわがままを許してくれた家内のおかげや》と、感謝の気持ちも忘れなかった。このようにすべてが順調だった。

ところが15日目になって靴に問題が発生した。靴を履こうとしてなにげなく底を見ると向こうに明かりが見えた。左足の外側が数センチにわたって破れている。ウーン、これには参った。長年履きなれた靴がこれでは先が思いやられる。道中では簡単に買えない、せめてデパートのある高知市内までもってくれないかなあ?順調だった毎日に少し暗雲が発生した。

靴の破損に気がついた翌日、問題の16日目(10月17日)だ。天気もよく、波の音を聞きながら美しい海岸線を歩いた。眼下の白い砂浜にただ一人、男の人が釣り糸をたれている風景を見ながら、ドライブインでトマトピザの昼食をとった。自分のしていることはなんと贅沢なんだろう、幸せだなあ、これもみな家族のおかげだ、有難いこと、そんなことを考えていた。そして予定通り野市の丸米旅館に到着、無事に一日が終わった・・・はずだった。

◆負傷
風呂と洗濯を終えて夕食までの間、近くのスーパーに買いものに出た。その帰り、すっかり暗くなっておまけに道路の照明もない不慣れな所で道路脇の溝に墜落してしまった。病院に行ったら肋骨が4本折れて、血気胸と診断され入院することになって遍路はやむなく中断という次第。 その夜は骨折の痛みと自分の不注意が原因でお遍路を中断しなければならない悔しさとでよく眠れず、何度も目がさめた。


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