職人に必要なセンスって?
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職人さんにとって、デザインやカラーコーディネイトのセンスは
必ずしも必要ないかもしれませんが、
大切なセンスがひとつあります。

いわゆる「施工センス」(という呼び方を仮にしますが…)というものです。

人には、無意識のうちにもっている
ものの形やバランスに対して
「こうなっていると落ち着く」という感覚があるそうです。

例えば、紙と鉛筆を渡され、
「三角形を描いて」と言われたら、
たいていの人は、「△」のように、
底辺を下に、とがった方を上に描くでしょう。
それを「▽」と描くのは、心理的に落ち着かないものだそうです。
(自分ではあまり意識していませんが)

そういったわけで、
人は畳の縁に平行に布団を敷き、
テーブルは部屋の真ん中であっても、
壁に平行に置こうとするものなのです。

そこで、建築工事でも
プロの職人さんは、
たとえ小さな、給湯器のリモコンだって、
水平器で測ってまっすぐに取り付ける。
壁にコンセントを取り付けるときには、
ドアわくに平行に取り付ける。
フローリングを貼るときは、
敷居の手前と奥で、溝のラインを通す。
…ということを意識してするのです。

同じ作業をするにしても、
こういった、ひとくふうで、部屋全体がすっきりとしたり、
どこかやぼったく見えたりしますので、
職人さんのこういった「施工センス」は
一見、目立たないですがとても大切なものです。

建築にはさらに、
「ディテール」つまり「細部の納まり」という概念があって、
そこに住んでいる人でも、ほとんど気が付かないようなところ、
たとえば、天井と壁の接合部やドア枠と壁の接合部にも
設計者がそこに命をかけている(笑)ことがありますから、
(既製品の回り縁やドア枠を使うなら別ですが)
そういう視点で作業ができる職人さんは
「施工センス」があるといえるでしょう。

(私の身近にも、水道配管の職人さんで、
壁でフタをしてしまうのが惜しいほど、
緻密で美しい配管をされる方がいます)

ただし、
新築とちがって、リフォームの場合、
現時点で壁がこけてたり(垂直に建っていない)、
壁際の床ラインがカーブしていたりするので、やむをえず、
新しく置いたキッチンと壁のすきまが、ながーい三角になったり、
フローリングの端を壁際にあわせて曲線にカットすることがあります。

こういった場合は、職人さんの「施工センスの欠如」
…ではありませんので、
くれぐれもご注意ください。



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