TPPという最低の選択:自由化の恩恵はデフレの日本には来ない。 [経済・社会]

TPPという最悪の選択:自由化の恩恵はデフレ下の日本にやってこない。ただ食われるだけ。

今回の野田のTPP参加の選択は、デフレの日本にとって最低の選択である。自由化が日本に何をもたらすか全く分かっていないのだ。

自国が不利な状態の時悪い方向に動いてどうするのか。菅政権以降の民主党の政策は破綻を一心不乱に進めている。

もはや民間企業のやせ我慢もできなくなるだろう。
よりデフレからの回復が難しくなる。

TPPは、日本にさらなるデフレの進捗と、産業の崩壊をもたらす。産業の崩壊は1千兆円を越える大借金を返す母体がなくなることである。それはデフォルトを意味する。

TPPによる自由化は、この頼みの綱の製造業の大量淘汰をもたらすことになる。これに円高が加わり貿易赤字が重なると一気に動揺するであろう。後は破綻を待つのみである。

この選択は大きな破綻への一歩である。私達はこれを粉砕しなければ生活の維持ができなくなるであろう。

先頃の復興財源用の所得税増税も確実に可処分所得の減少となり、デフレにおけるさらなる消費の減退は、大きくマイナスに働く。傾き始めた船にさらに穴を空けたのである。

菅に野田と傾国の首相が続き、その取り巻き連中も同じムジナである。麻生以降急激に傾きはじめ、この2年で大きく沈んでしまった。

日本は既に1980年代の無敵の競争力を完全に失っている。この20年間のデフレは、日本の製造業の競争力、金融力、貯蓄力を根こそぎ奪ってしまったのである。今の民主党やその御用学者にこの認識がないことだ。

それゆえデフレの日本は自由化の恩恵を受けることはできない。この認識の差異が推進派と反対派の大きな違いである。
負け組が自由化を唱えるなど馬鹿げたことだ。それをやってしまう所に民主党の怖さ、呆れ果てたばかさがある。

1995年から2007年サブプライム問題の発生まで世界は拡大期にあった。アメリカの好景気に支えられ、中国やインド、ブラジルといった新興国も含め世界経済は拡大していたのである。

その初期に日本は、農産物や畜産物の規制緩和をし、ブラジル人の日本で働くことを奨励し、
後半の日本の小泉政権は、規制緩和という産業の自由化を進めたのであった。しかしそれは何の意味もたなかった、逆に悪い方向に出たのである。

世界の景気拡大の恩恵を日本は受けることできず、没落の一途をたどったのである。百貨店の売上は11年間連続で減少し、1人辺りの名目GDPは20番目以下に下がっている。このことは世界の景気の回復期に日本は景気拡大の恩恵を何も受けなかったことを示している。

それどころか恐るべき早さで国富を失ったのだ。既に名目GDPは500兆を切っている。デフレの国に、パイの拡大の恩恵はこなかったのだ。これからもデフレで有る限り来ないだろう。

このTPPを推奨しようとする人達の背景にあるのは、比較優位説などの自由化が善であるとする間違った経済理論を踏襲していることである。このような自由化理論は、欧米が植民地政策の推進や、アジアへの進出に当たってのプロパガンダであったことが分かっていないのである。

このプロパガンダにより明治初頭の日本やアジア、そしてアフリカ諸国がどれほどの被害を受けたことか。
これによりヨーロッパがどれだけ利益を受けたであろうか。

このことを理解せずうかつに比較優位説などを唱えてはならない。みんなの党などの賛成派は、その真意を理解せず、現実を理解せず、自分たちも昔と同じようにその恩恵を受けられると思っているのだ。

この理論は、単なる平均値の問題であり、それぞれの国が今より豊かになるという保証はしていない。総額が伸び平均値は上がるという理論に過ぎないのである。

比較優位説は、物物交換の場合で、同じような経済状態にある国同士で成り立つ特殊理論であり、貨幣経済が発達し、グローバル化した市場では、すべてが成り立つものではない。

特にバブル国やデフレ国との交易では成り立たない。
バブル国とデフレ国の交易は、一方的にインフレ国が、利益を得、デフレ国は損を被ることになるからである。お互いの利益にならないのである。

ここではデフレ国とインフレ国との交易を主に説明しよう。それを説明すれば比較優位説もどんなものか分かるからである。

生産量と資金量の間に大きな差額が生じているデフレ国とインフレ国の所得線の角度を、インフレ国が60度、デフレ国が30度としよう。インフレ国は、生産量に比べ資金量が著しく多くなっている。デフレ国は
逆に生産量に比べ資金量が著しく少なくなっている。それゆえ所得線の角度が違っている。
(デフレの原理と消費税参照http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/teraxBLG/blg-hiduke.html
もちろん正常な国は45度である。

デフレの国は、生み出した付加価値に対する貨幣的評価が本来あるべきものより低く評価されるため、常に儲けの悪い状態にある。8時間の労働で6時間ぐらいの儲けしか得られない。(8時間労働で生み出した付加価値が、資金量が少ないため貨幣的評価が少なくなされる。)

逆にインフレの国は付加価値に対する貨幣的評価が高く評価されるため常に儲けが良い状態です。8時間の労働で10時間ぐらいの儲けが得られる状態です。

正常な国は当然の8時間の労働で8時間の儲けになります。

このような時デフレ国とインフレ国が通商を行ったとしよう。全体で平等に交渉が行われ、適材適所で生産が行われすべてが融合した時、資金量と生産量の差がなくなり所得線の角度が45度になった。めでたしめでたし。数値的には正しいでしょう。

しかしその内容を吟味すると、デフレ国はよりデフレが激しくなり、所得線の角度がさらに下がり20度になっており、インフレ国は所得線が70度になって、よりバブルが激しくなるのです。二つを足して90度これを2で割れば45度になる。

デフレの国は所得線が30度より下がっている。インフレの国は60度より上がっている。デフレの国は資金量がさらに少なくなり、インフレの国は資金量がさらに多くなる。

同じ労働時間でも、稼ぐ資金量が違うため、デフレ国は常にインフレ国にたくさん買われ、デフレ国はいつも少なく買うことになり、資金がどんどん流出していく。

デフレ国は物でもサービスでも資産でも、株式でもどのような物でも値下がりしているため、相手国側に有利に買われるのである。

インフレ国は反対に物でもサービスでも資産でも常に割高になっている。相手国側が買い難いのである。

しかもデフレ国は、ハートランド(産業経済基盤)から湧出する資金がほとんど無く逆に枯渇している状態である。それゆえ国内資産の換金売りが多く、海外資産の購入などほとんどできない。

逆にインフレ国は旺盛なハートランドの活動により、資金がどんどん湧出し、国内資産や海外資産の購入が活発になる。

このようなことが世界的に起こると、デフレの国は世界全体でいくらパイが増えようとも、その恩恵を被ることができずさらに食い物されるだけなのだ。

比較優位説でも結論は同じです。この理論は、正常な経済同士の間だけで成り立つものであるが、それでも適材適所の生産が行われ、全体のパイが大きくなっても、その恩恵は平均値以上の国がもっていくのであり、平均値以下の国は損失を被るものです。

そのため自由貿易による損失を防ぐため、あるいは自国の生活レベルを維持するため、競争力のない国は
さまざまな障壁を儲けることになる。それは民主主義国家として当然のことなのです。

自由貿易を善とする考え方は、弱肉強食の考え方であり、強い国はより強く、弱い国はより弱くなる。
自由貿易は万能ではない。適度に管理しながら全体の国富を上げて行くのが良いのです。それにはどの国もデフレでないことが前提になります。

現在デフレにあえぐ日本は、自由化をすればさらに不利被るのは必定です。この20年間日本はぼろ負けであり、一方的に負け続けているのです。

それは時間が経つにつれその差がどんどん大きくなっていきます。
例えばバブルの時、東京の人達の資産価格が寝ている間に上がり、その他の地域の人達は寝ている間に資産を買い取られたの同じようなものなのです。

資金不足による内需の停滞は多くの企業や個人に借金をもたらし、その返済のための換金売りが増えたため、商品価格や資産価格、株式が割安になっている。それが外資の餌食になっている。

最近になりようやく欧米がデフレに陥り始めたため、以前のようなぼろ負け状態ではないが、ここにカナダやメキシコなどの正常な経済国が参入すれば、確実に彼らに日本は食われるであろう。また中国や、東南アジアの国が入っても同じくすさまじい様相を照らすだろう。 

TPPの怖さはアメリカだけにあるのではない。バブルの新興国の方が怖いのである。特にバブルの中国や発展する東南アジアが日本の富を食い荒らすのである。
アジアの発展を取り込むより以上に彼らに食われてしまうのだ。
デフレの国はそうではない国に食われてしまうのです。TPPの広がりは、デフレの日本にとって非常に悪いことです。このような非常識なことが日本で行われようとしているのです。

日本の山林や土地の多くが外国人に買われ、株式市場は外国人バイヤーがいなければ閑散としてしまうのが現状だ。上場企業の多くが外国資本に変わっている。

外資の導入などという甘い言葉にだまされ、日本の多くの企業が買われ、名前を変え、日本が食われているのです。

外資がいくら増えても、デフレの解消にはなりません。それは皆さんよくご存じでしょう。デフレは消費不足で起こっています。外資は消費をしません。企業を買収するだけなのです。
(デフレの成長戦略とは何か参照)
このことを経済専門家は如何に考えているのだろうか。政治家はどこを見ているのだろうか。
相も変わらず間違った教科書紐解いて、デフレを促進し続けているのである。

第2次世界戦争後の世界経済の拡大期、欧米や日本がその拡大の恩恵の大半を享受し、南北間格差はさらに広まったのです。

それは発展途上国の多くが、デフレ経済であり、内需が停滞し、伝統的産業が廃れ、輸出品が安く買い叩かれ、大量に外国に流れ、輸入品に国内産業が圧倒され、資金がどんどん流出したのです。
そして多くの資産が外国資本に買われたのです。

今の日本と寸分変わりません。

そのようなことが現実に日本でこの20年間起こったのです。日本は自由貿易の敗者なのです。その根本的認識がないため、TPPを推進しようとするのです。

日本で反対しているのは、農業もそうですが、多くの地方経済が疲弊している地域です。彼らは身をもってその現状が分かっています。日本は敗者であること。これ以上の自由化は地場産業がなくなること、地域経済が崩壊することをよく知っているのです。

しかし今なお日本の中枢、官僚組織、公務員層、政治家達、新聞の解説者達は勝者だと思っているのです。

日本の敗退の主な原因はデフレだからです。それが内需を減退させ、輸出を促進しているのです。内需の減退は低価格競争を余儀無くさせ、輸入品の拡大をもたらしています。

日本人は怠けているのではなく、冒険をしないのでもない。ただ政策が悪いだけなのです。(船中八策http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/参照、日本のウイニングショットhttp://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/winningshot.html

今の日本は少しでもよいから資金を増やし消費を増やしたいのです。TPPはそれを真っ向から潰すものです。弱体化した経済を、解放して得することはなにもないのです。

TPP参加の中で、デフレから解消するのは至難の業だ。2千5年頃の日本にとって有利な輸出状況でも、一向に借金を返すことができなかったのだから。

日本は、デフレから逃れ、拡大再生産がなされる時までTPPなどの無制限な自由化に応じてはならないのです。

一言主

2011年11月24日

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