最近の統計に見る名目GDPの異常な変動 [経済・社会]

雑感:最近の統計に見る名目GDPの異常な変動

ここ2年ぐらい 3カ月置きの統計発表で特徴的なのは、名目GDPの異常な変動である。実質はそれほど変わらず延長線上の想定内にあるが、名目は突飛な動きをしている。

3カ月前がマイナスの名目値であっても今回は急激なプラスになっている。実質値は延長上にあり、予想される範囲になっているにもかかわらずである。

これはエコカー減税やエコポイント制をやり出してから顕著になった事例に思える。
あるいは子供手当などの影響かもしれない。

しかしこのような特異な変動は、この2年間以外なかった現象である。

実際のところエコカー減税などにより名目値が上がっても税収は増えない。なぜなら補助金が減税としてなされているからである。名目GDPの上昇が税収増にならない経済対策と言えよう。

これは一見消費に貢献しているように見えるが、実質的には、製造刺激策に過ぎない。後進国の産業育成策として有効なものである。産業支援策であり、経済の拡大を図るデフレ対策とはなり得ないものである。

表面的には、新聞やメディヤの喧伝により、あるいは多くの広告、コマーシャルにより、政策が奏功しているように見えるが、車や電機製品以外のものの売れ行きは、それに食われてより落ち込んでいる。

実際に消費者物価が下がっているからだ。また百貨店や小売の売上が伸び悩んでいるのをみても、経済全体が拡大している訳ではないことが分かろう。

やはりこのような政策も生産量を増やしているだけで、税収増や、経済の拡大は期待できない。デフレ対策としてはほとんど役に立たないものであることがわかる。

産業奨励策としては多いに効果があるが、他の内需産業を犠牲にしてやるのは疑問だ。自動車や電機産業はもともと競争力があり、優良企業の多い部門である。彼らは自らの利益額を犠牲にすることなく容易に儲かるのである。その増収分が市場に還元されることはないだろう。
強気を助け弱気をくじくものであり、圧倒的に多い内需部門をさらに犠牲にするものである。


また、このような政策はデフレが続いていると、切ることができず、毎年延長していかなければならなくなる麻薬的なものだ。

住宅ローンが年々、延長されたり、利子が下げられたりしながら、どんどん過剰なサービスを続けている。補助金が打ち切られると、大きな産業の収縮になるため、もはや切れなくなっている。このままでは税金と言う補助金がなければ住宅産業が成り立っていかなくなるだろう。

エコカーやエコポイントも同じ運命をたどるかもしれない。

デフレの解消方法として名目GDPの成長率を実質GDPの成長率を上回らせる必要がある。でなければ税収増を伴う経済拡大をしないからだ。

しかしこのようなやり方(エコカー、エコポイント制)での名目値の上昇は、無意味であり、形だけの内実を伴わない上昇に過ぎない。本来のデフレ解消のために行う消費者への投資ではなく、産業育成策のための生産刺激策であるためである。

しかしここではっきりしていることは、減税という形であれ、あるいは補助金の投入であれ、価格が下がれば、売上が伸びることである。そして名目値が伸長することが実証されたことだろう。

デフレは価格弾力性が非常に高い市場なので、価格の低下はそれ以上の売上増を招く。

タバコの増税前の驚くべき駆け込み需要や、エコカー減税の廃止、エコポイントの低下前の需要の伸長は、低所得化が進み、デフレの深刻度が増すにつれ、激しくなっている。

エコカーやエコポイント制は、他の産業の犠牲の上に成り立っているが、これが産業全体に薄く広く減税すれば、売上が伸び、名目値も上昇する可能性が高いことがわかるだろう。

それは消費税を下げることが確実に名目GDPを押し上げ、税収増を伴う拡大再生産がなされることを物語っている。特定産業への大幅な補助金による減税は、他産業の犠牲を招き、全体の浮揚にならないが、全体に薄く広く掛ける消費税減税の補助金は、価格の低下以上に売上増が見込まれるため、補助金以上の税収増が見込める。

またエコカーや電機製品に比べると価格が安い製品にも同じように減税されるため、より低所得者に対して暖かい政策になり、経済全体の消費が底上げされることになろう。

それが経済の自律的拡大からデフレ解消に向かう筋道である。

エコカー減税の期限切れ時の異常な消費の盛り上がりや、タバコの値上がりに見る昨今の異常な買いだめと、その後の買い控えは、デフレの進行と共に商品の価格弾力性が以上に大きくなっていることが分かるだろう。

消費税のわずかな下げが大きく売上を伸長させ、逆に消費税のわずかな上げが大きく売上を減少せしめるのである。

デフレのような低所得社会では、消費税のわずかな下げでも、大きく売上が伸び、低所得所帯に対する恩恵が非常に大きくなるのである。

デフレ解消には、消費税の減税が特効薬であることが、エコカー減税などからも十分に検証できるだろう。
5%の消費税を3%に下げるだけでも、確実に売上が増大し税収が増えるため、財源を確保する必要もないもっとやり易い現実的な方法である。

後は賢明な世論の喚起を待つだけだ。

しかし今のところ目処は立っていない。逆に消費税を上げようなどと言う世論が多いことを笑う。それも大幅に上げるような10%にせよなどという馬鹿げたものから、
あるいは、駆け込み需要を狙って、2%ずつ毎年上げよなどいうのまである。

デフレの昨今で消費税を上げようなどと言う経済学者は、普通いない。それは経済学者の名に値しない輩である。言うのは政府の側用人だけだろう。


一言主

2010年11月24日

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