デフレにおける消費税の増税は産業基盤を破壊することである。 [経済・社会]

デフレにおける消費税増税の議論の愚:それは産業基盤の破壊である。

デフレにおいて消費税増税がもたらすもの。それは経済の破壊であり、産業基盤の破壊である。議論するという次元にある問題ではない。

菅政権はこれだけ負けてもまだ分からず消費税の増税を議論したいらしい。さっさと退場していただかなければならない。消費税増税を白紙撤回し、昨年の民主党のマニフェストを愚直に実行することが、今回の選挙の民意である。

菅政権だけでなく新聞やその他多くの専門家も未だに消費税の増税を俎上に載せようと見苦しく主張している。

デフレ下における消費税の増税は、議論の俎上に載せる以前の問題だ。理論的にやってはいけないことであり、政策担当者として選んではいけないものなのである。

しかし残念ながら現在、無駄を徹底的に排除して、これ以上削減するものがないところまで切り詰め、それでも財源がないのなら消費税を上げてもよいような合意ができつつある。

しかし消費税のデフレ下での増税は、このような次元のものではない。このような財出削減などを一挙に水泡に帰させしめるであろう。

どれだけ予算を削除しても、消費税増税はそのような労力を軽く吹っ飛ばす衝撃を持つものである。いかなる理由があろうとやってはいけない禁じ手なのである。
なぜなら消費税の増税は、デフレスパイラルを人工的に起こすものでり、大恐慌を自ら作り出す特性を持っているからである。このような大恐慌を招く政策を為政者が選択してよいはずがない。

しかし我々日本人の無知が、あるいは人類の無知が、1997年にデフレ下で消費税を引き上げてしまい、大恐慌を引き起こしてしまった。それ以後の惨状は誰しもがご存じであろう。

デフレ下における消費税の増税がデフレスパイラルを引き起こす理論的説明

「デフレとは、市場から資金が著しく減少し、その結果生産能力に比べ、消費能力が大きく喪失した経済市場である。
それが原因となり、過剰な低価格競争が起こなわれ、名目の付加価値が暫時減少し、縮小再生産が循環的に繰り返され、資金がどんどん市場から失われていくものである。」

このようなデフレの状態は、所得線の角度が45度以下に下がった所得線で表すことができる。

横軸に生産量を取り、縦軸に資金量を取り、所得線を描く。生産量と資金量の割合が1対1であれば、45度の正常な所得線を描くものとする。

これに対しデフレは資金が生産量に比べ著しく減少しているため、所得線の角度が45度以下に下がって描かれる。資金量と生産量の比率が変化し、資金量1で、それ以上の生産量を購買できる所得線である。

デフレは貯蓄以上に借金が多いため、貯蓄以下に所得線が下がっている。
http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/dehuresupairarunozu.htmデフレスパイラルの図参照)

このような状態の時、例えば消費税を上げると、さらに資金が市場から奪われることになる。政府はものの売買に介入して、資金を、消費税分だけ市場から奪うことになる。消費税を上げると、生産能力がそのままで資金だけが市場から減少する。消費能力が喪失するのである。

その資金が減少した水準まで生産量が調整される。

この資金が減少した水準まで生産額が調整される間がデフレスパイラルという経済縮小循環である。
これは需要と供給の関係で生産量が減少する所得線上の下降ではない。

資金が急激に減少したため、生産量が消費額に一致するように急速に垂直に下降するものである。所得線の角度が下がり、一気に経済が収縮するものである。

生産量が変わらず、消費額だけが一気に下がるため、資金量と生産量の比率が変わり、所得線の角度が下がる。この角度の下降がデフレスパイラルであり、大恐慌の正体である。

このような時、消費額の減少分に生産額が一致するように生産量が変動するため、激しい生産量の減少と価格の低下が起こる。それは企業収益の減少をもたらし、付加価値の名目値が下がるため、所得も下がる。
それ故税収が増える事は考えられない。

それ故、名目GDPの成長率はマイナスになり、実質GDPの成長率の下位に位置し、その差が大きくなる。
理論的に明らかなことであり、後世の人がなんとばかなことをしたのであろう、と笑うような滑稽なことなのだ。後世だれもそのような選択をしないのが当たり前になっていよう。
今天動説をだれも信じていないのと同じように。


現実からも容易に想像がつくであろう。

消費税の増税により、今までギリギリの生活だった人が、生活保護所帯になり、その助成のために多くの税金が必要になる。

辛うじて貯金を取り崩して賄っていた層が、漸次貯蓄がなくなり次第、生活保護所帯に落ちて行く。
誰もが中流所帯が下流所帯へと落ちぶれていくことを、明日が我が身であることを知っているのである。

この低所得層の増加がさらに消費を落ち込ませ日本全体の所得を下降させる。階層が下へ下へと落ちて行く。上流が中流へ、中流が下流へ、下流が生活保護所帯へと落ちぶれて行く。他の国と比べて日本だけが大きく下に落ちて行くのである。

今の日本国民は誰もがこのような状況を想像できる世界に身を置いているため、消費税増税に対してはっきりと反対をするのである。そしてデフレは放っておけばどんどん経済を縮小させやがて産業基盤を破壊するに至るものである。

デフレ下での消費税増税とはこのようなものである。

漸次消費税を引き上げても成功することはない。あらゆる切り詰めや削減が無駄になる。デフレの渦中に有る限り年金制度や福祉が充実することはない。

(日本のギリシャ化が迫っている。回避するためには消費者への還元を一気に大きくやる必要がある。消費税の増税はギリシャ化を速め、日本を破綻させるものである。)

一言主









2010年7月23

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