さらなる低賃金化を遂行する日本の経済対策

度重なる巨額な補正予算がかえって低賃金化を招いている。デフレの解消には、消費者の手持ち資金を増やす政策が必要なのである。生産量を刺激してはいけない。

この20年の間に賃金が10万円近く減少したという発表がなされた。(公務員層の所得を除いているのかどうか分からないが、もし公務員層の所得を除いていればもっと下がっていることだろう。)

しかもこの所得は総賃金であり、手取りではない。この間、社会保険料の上昇、医療費の負担割合の増加、電気、や水道料等の公共料金の上昇、消費税を3%から5%に上げた。このような個人負担の上昇を考えると、1990年の頃よりも人々の暮らしは悪くなっている。

バブル崩壊後の数年間は、どちらかというと資産家の崩壊であった。金融資産や土地資産の持ち主が所得を大幅に減らしたのであった。

しかし特にこの10年間、消費税が5%にアップされてからこちらは、勤労者所得の低下が激しくなっている。

これをマスコミは、格差問題とか非正規雇用問題と呼んではいけない。低所得化の問題なのである。

この根本原因は、市場から資金が継続的に減少するデフレに由来している。デフレは、生産能力に比べ著しく消費が不足しているため、不毛な低価格競争や過剰サービスが生じ、その結果企業は適正な利潤が得られず、生産要素の圧縮を図ることになる。それが労働賃金を低下させるのである。

個々の企業の利潤や個人の労働賃金が低下すると、今までかかっている個人個人の税金負担が増えるため、市場から資金が税金として奪われるため、資金が減少する。それがさらに所得からの消費額や企業利益からの購買力を減少させるため、循環的な経済縮小が起こる。これがデフレの資金逓減現象である。

そしてデフレは、放っておくとどんどん市場の縮小が進み、賃金はますます下がっていく。所得線の下降に均衡点は存在しない。最終的にどの企業も利益を上げることができなくなった地点で経済は崩壊する。

デフレは、需要と供給の差額で起こる現象ではなく、資金量と生産量の差で起こる現象である。
(所得線の角度の下降により起こる現象である。)
資金量が生産量に比べて著しく少なくなっているのである。それ故にもともと多く存在する生産量をさらに増やす政策を取ることは、より一層賃金を低下させる。
http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/デフレの資金逓減の法則参照)

これは、いざなぎ景気を越えた戦後最長の経済成長と政府がかってに呼ぶ、2千2年2月より2千7年10月まで続いた経済現象の統計が、それを証明している。この間名目GDPの成長率が常に実質GDPの成長率を下回り、賃金は初めの時より、最後の時の方が少なくなっているのである。

明らかに賃金が低下し借金が増えたのである。
これは、経済成長ではなく単なる経済の消耗であったにすぎない。政府は誇らしく発表したのであろうが、内実は、自らの失政を高らかに宣言したものなのである。

原因は消費者の消費額を増やす算段をする事なく、無理やり生産量を増大させる方策を取ったからである。

いたずらに生産量を増大(実質GDPの増大)させたことが賃金の低下を招いたのである。このことからもデフレ経済は労働生産曲線が右下がりであることが実証できよう。

今またさらに自民党内閣がやろうとしている政策は、生産量を刺激しようとする政策であり、一向に資金量を増やす政策を取ろうとしていない。生産量の増大はよりいっそうの賃金低下と借金増を招くだろう。破綻をきたすだろう。

無意味というより無駄な15兆円の補正予算の内容:
太陽光発電への補助、雇用促進への企業への補助、住宅減税、車エコ減税、家電エコ減税、
学校耐震化、など。

この予算の根本的な間違いは、無理やり消費をさせようとしていることである。消費者の消費額の足りない分を補助金を使って消費を増やそうとしているのである。その結果生産量を増大させ、所得が増えるという考え方なのである。

この考えがデフレにおいて通用しないことは、明白であるにもかかわらず、夢よもう一度、それは単に夢に過ぎず、理論的に破綻した物は何度でも同じ失敗を繰り返すことになる。

これは美辞麗句を並べても、また確かに長期的に有用なものでも、生産量を刺激し増大する物に過ぎない。

この補正予算、本予算どちらもさらなる低賃金化を促す物である。

最近話題のワークシェアといえどもみんなで賃金を分け合うみんなが貧乏になる政策である。雇用促進策も、売上が本格的に伸びなければ、補助金が効いている時だけの雇用維持になるだろう。そしてみんでよりたくさん生産物を作り出せばさらに低賃金化を招くのである。

移民政策も同じである。いやもっと最悪の結果になるであろう。低賃金労働者が増え、生産量が増えるほど賃金は一層下がって行く。
http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/デフレと移民参照)

私達は根本的な間違いをしているのである。デフレでは生産量を増やし働けば働くほど市場内部で競争が激化し、お互いに傷を負う消耗戦になる。日本は自らの旺盛な生産能力を自分たちで傷つけ合っているのであり、同士討ちをしているのである。最後は共倒れになるだけなのである。

一体この国は何をしているのだろうか。政府や、政策担当者だけでなく、政治家、経済学者、経済評論家、さらに、新聞記者も含めて、一丸となって低賃金化を遂行しようとしている。しかもおおまじめに。

早く気付かれることを願ってやみません。
消費者側に資金を投入し、手元資金を増やしてやり、消費額を伸ばすことが大事なのです。
実に簡単なことです。個人の負担を軽減し、消費税を下げてやればいいだけなのです。それは自動的に所得線を上昇させデフレを解消するでしょう。

一言主
http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/
http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/


 


nice

2千9年5月28日

戻る