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         デフレ・インフレの一般理論
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2008年1月8日 偽装の経済成長をあばく

偽装の経済成長をあばく

明けましておめでとうございます。今年もいろいろうるさいことを申し上げますが節にご容赦ください。
新年早々ご評価下さる方もいらっしゃりありがとうございます。休暇中はパソコンを見ませんのですぐ返答できず申し訳ありませんでした。
今年は主にデフレの解消方法について理論的に実際に応用できる方法を書いていきたいと思います。空気が読めない典型でこの主題から始まります。次こそは今年の経済予測です。

昨年はいろいろな偽装が発覚し大きな社会問題となりましたが、まだ暴かなければならない大きな偽装があります。それは政府が発表する実質GDPの成長率に関するものです。
皆様も既にお気付きだと思いますが、政府はいざなぎを越えた経済成長を達成したと言っていますが本当でしょうか、

第一に、借金が増えている経済成長は成長と言えるのでしょうか。日本全体がものを作っても損をして販売しているのではないでしょうか。

経済成長というのは、ものを作り、又はサービスを提供することによって付加価値を作り出し、それに価格をつけたもの(利鞘)が増えていく事を言います。一国全体の付加価値の総量を価格で評価したものが国民所得です。これが循環するごとに付加価値が増え、それを価格的に評価したものが増えていくのが成長です。これが本来の正当な経済成長です。

しかし日本の場合循環するごとに付加価値が増えていますが借金も増えています。これは増えた付加価値に対して低い価格で評価されているということです。生産物を損をして売っていることになります。そのため所得が十分増えず、借金が増えているのです。
これが正当な経済成長と言えるでしょうか。

これは本来の正当な付加価値に対して正当に評価された価格で評価されず、低価格で評価され販売されています。全体で見ると国民所得をお金で評価したものが少なくなっていることになります。
これは損して販売したものも経済成長の中に含めていることになります。

これが統計で現れ、名目GDPの成長率が実質GDPの成長率より悪くなっています。このような名実が逆転したGDPの状態の時、経済が成長しているとは言えないのです。
ものの生産が増えているのに生産物に載せられる価格が低くなっているからです。物の生産が増えているにもかかわらず、所得がそれほど伸びないのです。これはデフレでは、生産量に比べて資金が不足しているからです。
デフレ下の所得線は、生産量の1単位の伸びに対して資金量が1以下に圧えられることを示し、45度以下の角度の所得線で表される理由です。

ここ数年間の実質GDPの成長のみを捕らえた成長は、空売りや損きり販売したものも成長に含めていることになります。
デフレ状態では、低価格販売競争を強いられるため、過剰に生産されがちになり、実質GDPが多く見積もられるのです。本来の成長はもっと少ないでしょう。
http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/日本の国富は減っている。参照)
それ故ハートランドの我々の手持ち資金が減少している中での実質GDPの成長は、そもそも成長と言えるか疑問です。物の生産量を増やしているだけで、それを販売して損をしているということになります。それ故いざ凪を越えるという成長は偽りであり、偽装成長です。これは特に2千零年頃から2千四年頃の間が顕著に表れています。

これが政策担当者の無知蒙昧から来ているものなのか、明らかに国民をだまそうとして偽装したものかはわかりません。しかし成長という限りは、付加価値に正当な価格的評価をしたものが増えなければなりません。正当な付加価値や高付加価値の生産物が不当な低価格で販売されているのがデフレ経済です。

さらに労働価値も不当に低賃金に圧えられています。これは経営者の資質や労働者の能力や、生産効率の問題ではなく、単にデフレという資金不足(個人の消費に対する資金不足、企業の生産資材を購入する資金不足、政府の大借金による資金不足)が物の価格を押さえているのです。買えないからとも言えます。

私達は、生活のほとんどすべてがお金の交換で成り立っています。税金でも保険でも、公共料金でもすべてお金で徴収されます。この労働価値以下に押さえられた賃金から、一向に減らない社会負担分が差し引かれます。それが次の循環になった時、消費不足から企業の売上不足となって、縮小再生産になるのです。これがデフレ循環です。

これが政府が一向に借金を返せず、さらに増えていく理由です。
このような状況で政府関係者や経済学者が、経済は息の長い景気回復を続けているというのは、実は息の長い借金膨張を続けているという意味に過ぎません。

デフレはなんら解消されていないのです。より深まっているのは去年の住民税の再増税によりはっきりとお分かりだと思います。せっかくの住民税の減税も、延期期間中に景気回復しなかったので再び増税になりました。非常に厳しい物です。

デフレに内在する真の偽装成長
特に我々が見逃したのが小泉政権下の2千元年から三、四年の間の激しい縮小を繰り返すデフレスパイラルの時に、実質GDPが成長したのを本来の成長と誤解したことです。この時名実のGDPが逆転し、その差が最も大きな頃でした。実質GDPは名目との差が激しいほど空成長します。この空成長を成長と鵜呑みにしたのが傷を大きくしました。単に経済が急速に縮小し底に着いただけだったのです。これが下層階級が増え、生活できない層が増え、自殺者や自己破産者が増えた原因なのです。

2千5年から2千7年にかけて外需が活発になり輸出の増大が実質GDPを押し上げています。また輸入品も増えています。しかし実質GDPや名目GDPは、国内のものと海外のものと合算して表示されます。それ故国内だけのGDPがかなり装飾されたものになります。なぜならデフレは国内で起こっているのであり、海外ではないからです。

現在のGDPに対する外需寄与度が0.5%という情けないありさまです。戦後の経済史上このように高い外需寄与度があったのでしょうか。日本政府かこれを良しとしているようです。もちろんこれは内需の少ない発展途上国なら良いでしょう。しかし日本では、無意味なのです。内需の退潮を意味するからです。
今後日本経済は外需が内需を圧迫して行く兆候と思われます。
しかしこの外需寄与度は輸出から輸入を差し引いたものなので、この差額だけを見て国内事情の判定はできません。外需寄与度が大きいということは、輸入量が多く、さらにそれ以上に輸出が多い場合もあれば、逆に輸出が少なくてもさらに輸入額が大幅に減少している場合もあります。
それ故
輸入額の総額や輸出額の総額を見て判断する必要があります。
輸入額が多いとそれだけ国内市場から資金が流出し国民所得の減少要因になります。輸出品の増大は、国内市場にその製品が回らず直接海外へ出荷されるため、実質GDPの形成要因であり、還流する輸出代金は名目GDPに加算されますが、それは実際には国内市場に還流しないため、その資金は、外資や金融資産、土地資産に回ることになります。

このことから国内のハートランドがデフレによりなお縮小しているかどうかは、外部要因を除いて考慮しなければなりません。民間の賃金が九年連続減少し続けていることは、輸出の増大がデフレの解消に効果がないことを表しています。そして現在の実質GDPの外需寄与度0,5%は、内需を食いながら、言い換えるとハートランドを縮小させながら輸出が増大しているといえるでしょう。

好調な輸出企業は、内需の低調を逆手に取り、人や物や資金が輸出部門に集まり、他の企業の人材や資材を安く調達し、安価に資金を手にいれ、よりよい好循環を形成し始めています。それに対して内需部門は、人材が枯渇し、資金は回らずますます苦境になっています。国内部門の空洞化が進んでいることを示します。

政府がこのような外需に依存した実質GDPを成長のより所とし、政策の基調にすることは、デフレ下の日本経済を正しく把握していないことを意味し借金の成長を促していることになります。そして偽りの成長を本来の成長と喧伝していることになります。
http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusiデフレ・インフレの一般理論の全章掲載しています。)