陽だまり絵本通信 
NO,181  2015・6・15
















                          黒についてかんがえる       

 「黒」という色に考えさせられることが多いです。故人を悼む色として、何故黒色なのか、わかりません。ハガキを出すのも、黒い縁取り。黒色を礼服として着るのもおかしい習慣です。何か黒色に、特別な意味があって?黒色に対して、忌み嫌う一方で、畏敬の念を持つという複雑な感情があるからかもしれません。しかし、黒色は誰が着ても様になるからふしぎです。だから、変な偏見を持たないでいいのにね。
 卒業式や入学式、入社試験を受けに行く学生のなんと気の毒なこと。汗をふきふき黒いスーツで走り回る。黒という色を忌み嫌う一方で、礼服として押し付けてくる世の中の仕組みには、考えさせられることが多いです。没個性を良しとして、新入社員をどう選ぶのか、気にかかるところです。会社の側が、黒い服でなくてもいいと言うのに、学生の方がきちんと見られないからと拒否する。学生の中に、黒以外だと服を選びにくいという意識があるようです。
 うちのご近所の話。葬式やお通夜にも競って喪服を着用し、どんなに黒色が好きなのかと思っていましたら、カラスの姿や,鳴き声には大ブーイング。カラスの幼鳥が巣から落ちて鳴いていました。それを気遣う親鳥の泣き声がうるさいと保健所に。カラスの黒い色が嫌われる場面でした。

 
 ネリノの悲しさはよくわかりますが 


 『まっくろネリノ』―――ヘルガ=ガルラー・作 やがわすみこ・訳 偕成社

 1968年に描かれた絵本です。パステル調のとてもきれいな絵本です。表紙のひまわりの絵の下に、目玉だけが大きいネリノがいます。裏表紙には、赤、紫、緑、黄色と目玉だけの黒いネリノ。この絵本は、ネリノの側から、寂しさや疎外感、差別のつらさに寄り添いながら読むことと、周りの兄弟たちのありようについて批判的に読むことです。
 ネリノは、紫色の母さんと青色の父さんから生まれたけれど、真黒。他の兄弟たちはカラフルなのに。他の兄弟たちは、遊んでくれない。あんまり真黒だから、ダメなんだって。ここが話し合いポイントⅠ。ここで色について話し合うことが大事でしょう。すんなり読んでしまうと、真黒だからダメだって思う子も。事実、子どもの中には,色紙を選ぶとき、黒い色を選ぶ子はいない。いたらかえって聞いてしまう。ほんとにこれでいいの?って。これでいいと言うと、何か問題がないか、悩んだり。
 真黒がなぜ遊んでもらえないのか、真黒も色の一つなのに。真黒だからかわいそう、我慢してあそんであげる意識は、真黒を色の一つとして見ていないし、差別を認めてしまう。これは、子どもにとっては、難しいことかもしれませんが。いつも一人ぼっちで我慢をし、じってしているネリノの気持ちには寄り添えるでしょう。 みんなが寝ている時も、一人ぼっちで「悲しいなあ」と考えるネリノ。何が悲しいのだろうって考えて。兄弟から離れて一人、木のてっぺんで。花たちに聞いても、生まれつきだって言う。薬も、どれが聞くのかわからないし。
 急に行方不明になった兄さんたち。文字のないページがあります。父母とネリノです。心配しているのですねる。それにしても父母とネリノの間隔があきすぎも。見つけたのです。鳥かごのなかに、兄さんたち。あんまりきれいだから、捕まっちゃった。「かわいそうに。気の毒な兄さんたち」と言って、夜陰に紛れ救い出すことができるにちがいないと思うネリノでした。自分を見捨てて、遊んでもくれなくて、真黒だからって差別していたのに。そんな兄さんたちを助けてあげるなんて、ネリノはなんて優しいのかしら。大体の子はそう思うでしょう。
 兄弟だから、困ってるからって、助けてあげない。遊んでくれなかった、仲間外れにしていた、だから、仕方がないよ。そんな風に思う子がいたらどうする。ここは、話し合いが必要でしょう。ネリノは言います。みんな仲良くしてくれる。今は、真黒だって、ちっとも悲しいことなんかないんだと。真ん中にネリノがいます。お兄さんたちは、どう言ったのでしょうね。
 この絵本は、1968年にオーストラリアの子ども本の最優秀賞に選ばれたのです。日本でも、全国図書館協会推薦の金ぴかラベルがついています。真黒だっていいのよ。堂々と生きていくんだよというのでしょう。美しい黒に対する偏見は、払拭されるのでしょうか。 


 今日は年金の支給日です。銀行へ行かなくっちゃと思いつつ。それにしても、パソコンを使ってのパスワード盗みは、私などはとんとわかりません。このパソコンで、文字を打つのがせきのやまですから。もっと悪いのは、数を頼んでなんでも決めること。集団的自衛権など。憲法違反だと言われれば、法の番人を引きずり出して正当化すること。憲法よりえらいものはないのて゛しょうに、何時番人の方が偉くなったんでしょうか

 


                           
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