黒人奴隷貿易とアメイジング・グレイス

2005年11月14日



急性骨髄性白血病により本田美奈子さんがお亡くなりになりました。

ご冥福をお祈りします。


で、彼女の「アメイジング・グレイス」が幾度となくテレビから流れてくるのを聞いて

自分でもその歌を手に入れて、何度となく聞いていました。

英語の歌詞が気になり、ネットで「アメイジング・グレイス」を検索して、色々とこの歌の

背景を知りました。


この歌の作曲者は不詳で諸説が存在している事などを知りました。

そして、作詞者のジョン・ニュートンは「奴隷貿易」をしていた船長だった事など・・・


1725年イギリスに生まれた彼は、敬虔なクリスチャンの母を持つが、7歳の時に母を亡くしてから

信仰には熱心ではなかった。

そんな彼は父の仕事を手伝うきっかけから船に乗るようになり、いつしか船乗りとして自立します。

そして、同時に「奴隷貿易」に手を染めていくのです。

黒人を家畜以下の扱いにして、不衛生な船底に押し込めて、満足な食事も与えずに航海して

多くの黒人たちは劣悪な環境により死んでしまいます。が、それでも生き残った黒人は生命力も

強くて頑丈だからと、値が高くついたと言われます。

そんな彼に転機が訪れます。

船が嵐に会い、絶体絶命の危機に直面します、その時、彼は母を亡くして以来始めて神に

祈りを捧げます。

すると、その直後奇跡的に、嵐は静まりかえり、船は危機を救われました。

彼はその日を「第二の誕生日」として、信仰に目覚めます。

1748年の出来事でジョン・ニュートンはその時22歳でした。

彼が反省悔悟するのは、まだしばらく時間がかかるのですが、黒人奴隷への待遇は天と地ほど

改善され、彼の船では黒人は「人間」として扱われます。

ちなみに彼が奴隷貿易の仕事へ関わるのは、その後16年間に及びます。

6年ほど船長をした後1755年、病気を理由に船を下ります。その後、彼は勉強をして神父へと

進んでいきます。奴隷貿易の仕事への関わりは持ったままです。

そして、奴隷貿易への関わりを止めて、1765年「アメイジング グレイス」は生まれました。

内容は自分のような(奴隷貿易をするような)卑怯者にさえ神は救いを与えてくれたと

神の偉大さを称え、救われた自分がいる事を歌っている。


こういった背景なしにはこの歌がアメリカの黒人たちの間で歌い継がれていく事はありえません

白人が作り、白人の神を称える賛美歌でもあるこの歌を。

奴隷として、無理やりに異国に連れて行かれて、二度と帰れる事の出来ない祖国を思いながら

鞭を打たれ、尊厳を踏みにじられ、牛馬の如く過酷な重労働に明け暮れる日々の中で、

彼らはこの歌を口ずさみ、歌い継いでいったのです。


ただ、忘れてはいけないのは、ジョン・ニュートンが真に目覚め反省悔悟するのは

船の危機を救われた日では決してない事です。

その日は「信仰に目覚めた日」であって、反省悔悟は神父となって奴隷貿易から

手を引いた時なのです。

黒人への扱いが人間扱いになったという部分に一定の評価はあっても、「黒人貿易」に

手を染めている人間が「罪を犯して」いないはずは無いのですから・・・。

だからこそ、彼は余計に悔やんだのかもしれません。

神を信じながら、16年間も神を裏切りつづけた自分自身に。

「信仰に目覚めた」時に、何故、奴隷貿易の罪から手を引けなかったのか?



今回は、ちょっと感動した事のおすそ分けでした・・・