山口母子殺人事件の死刑をめぐって

2006年4月19日



先日、この事件の高裁判決(無期懲役)を不服として検察が控訴した為に設けられた

上告審弁論に弁護側が欠席というニュースを聞きました。

昨日の18日に改めて上告審弁論が開かれ、検察は「死刑を避ける必要は無く、無期懲役は

著しく正義に反する」と主張し、弁護側は遺体の鑑定書から見て、事実誤認が有り、

騒がれた為に口を塞ごうとした手がずれて首にかかった為の殺害で殺意は無く、

傷害致死に当たると主張しました。


さて、詳しく知らない方も多いみたいですが、最高裁は独自に判決を下す

場所ではないのです。


基本的には、一審、二審での証拠を根拠に判断します。

だから、一から証人を呼んで話を聞いたりはしません。

主に最高裁がする仕事は

  1. 過去の判例と比べて著しい不公平がないか?
  2. 証拠や証言などからの事実認定の是非に明らかな矛盾がないか?
  3. 憲法に照らし合わせて違憲性がないか?


なのです。


今回の場合ですと、死刑を選択しない事が明らかに他の死刑判決を

受けた人間と比べて不公平があるかないか?

というのが最大の焦点になるかと思います。

弁護側は訳のわからない争点(?)を持ち出しましたが・・・・

勿論、死刑が残虐なる刑罰を禁止する憲法に違反するという考えには賛同致しますが、

これについては過去に最高裁が「死刑は残虐なる刑罰でない」と判断しています。

ついでに、「日本は死刑を有する国であるので、死刑が相当な場合には敢えて死刑を避けて

無期懲役を選択するべきではなく、死刑を選択しなくてはならない」と言っています。


さて、福田孝行(犯人の名前)が死刑でないといけないのか?

と、いう疑問に最高裁が「(死刑相当かもしれないが)死刑でなくてはならないとまではいえない」

という判断になると、控訴棄却で「無期懲役」が確定します。

彼の場合には彼に有利な要素として

18歳になって30日しか経っていなかった点があります。

現法律では18歳になったら「死刑」はありますが、17歳と364日ならば100人殺しても

「死刑」はないのです。そこの境界線の線引きが生まれ日からの日数のみで決められて

然るべきものなのかどうか? 少なくともまだまだ精神的に発育段階で要するに子供

であるから、更正の可能性も高い(?)というのが一点。

次には法廷で反省悔悟の涙を流した(?)事から更正の可能性が有る(らしい)

育った環境(父親の常習的な暴力と母親の自殺)と、そういった環境においても

前科が無く、社会との適合能力を有する事が認められる点から、更正の可能性が

あるという事と、生い立ちの境遇に同情すべき点がある。

と、まぁ、こんな感じみたいですねぇ。


私は、上記の被告人に有利な条件を見たときに「死刑はない」と確信しました。


無期懲役が下された瞬間、弁護人はガッツポーズを取り、検察官は刹那もあけず

「こんなふざけた判決は絶対に認められん!!たとえ100回負けても101回目をする」との

言を発したと聞きます。

なかなかの名言であると思います。


さて、ここで「死刑はない」と私が確信した理由ですが、簡単です。

彼よりも「死刑」が相応しい人間にも「無期懲役」が出ているからです。

「栃木リンチ殺人事件」を例に出して見ましょう。

この事件の内容はひどく不愉快極まる為にこと細かくは説明しませんが、一人の人間を

2ヶ月ほど監禁しながら連日連夜のように凄惨なリンチを加え続けて殺害した凶悪事件でした。

この事件の犯人は4人いたのですが、主犯格の男(犯行当時19歳)でさえ、「無期懲役」でした。


過去に上告審弁論が開かれた時には高裁判決の変更が度々成されているのも事実ですが

日本の法制度の欠陥である前例との比較を持ち出すと二審の判決破棄は難しいのではないでしょうか

極端な話で言えば、一審、二審が「死刑」ならば、「死刑判決が過去の前例と照らし合わせて

著しい不公平はなく、死刑判断が誤りとまでは言えない」という言い方で「死刑確定」という

のは有りえたかもしれませんが・・・


せめて、検察側の主張を認めて二審判決を今一度破棄して、二審において被告の将来に更正

出来る可能性の認定には合理的な疑いが残る。今一度被告人の更正の可能性を吟味しつくす

必要があるとして「二審判決破棄、差し戻し」として欲しいものですね。


で、ここで当委員会としては、新しい法律の解釈として、前例踏襲から臨機応変の要素を

入れる事が必要であると思います。

簡単に言いますと、時間の流れとともに時代も変れば、価値観や倫理観も変ります。

60年も前に出された判決は60年前の時代に合った判決であって、それをいつまでも

引きずって引き合いに出してくる事はかえって不正義を生む危険性があると思います。

「栃木リンチ殺人事件」で無期だから、それ以上の犯罪者でなければ「死刑」は駄目。

で、山口母子も「無期」だから福田孝行以上にひどい事をしていない被告には「死刑」は

下せない。という風になっていくと、いずれ法の正義は無くなってしまうでしょう。


法の正義は福田孝行に「極刑」を下さなくては保てない


今回の弁護士は「死刑制度反対」の人だと聞きましたが、何故か今回の上告審弁論では

検察側の「更正の可能性は望めない」とする主張への反論は行いませんでした。

「殺人」ではなくて「傷害致死」だと主張しただけですので、そちらの方は

「いやいや、どうみても殺人と認定した高裁の判断は誤りとは言えない」でしょうから

問題は「更正の可能性があるから、死刑は避けて無期懲役とした高裁判決」の

根本である「更正の可能性」を真っ向から「否定」した検察の主張を最高裁がいか程汲み取るか


もしも、そこの一点を突破口に二審判決(無期懲役)を突き崩す事が出来るならば・・・


最初はこの弁護士、表向きは被告弁護の振りをしながら、実は「死刑」への協力者か?

と、思ったのですが、朝のテレビで気味の悪いイラストを用意して必死に弁護していたので

やっぱり、本気(?)で弁護しているみたいですね。