今、スタッフに支払っている給料の中から、残業代を捻出したいという狙いで「固定残業代」の導入を検討されているオーナーや、すでに導入しているオーナーは多数おられることでしょう。
まず、残業代を固定化して支払うこと自体は違法ではありません。
ただし、「固定残業代」を導入するには、きちんとした手順を踏む必要があります。
あいまいな運用方法で固定残業代を導入していると、トラブルに発展した場合には、残業代をきちんと支払っているとは認められません。
たとえば、口頭で給与には残業代が含まれていると説明している場合や、就業規則や給与規定などに「基本給に残業代を含む」と記載しているだけでは不十分です。
もし、このような方法で固定残業代を運用している場合は、今すぐに改善が必要です。
固定残業代がきちんと認められるためには、
・就業規則や給与規定において、固定残業代について明確に規定しておくこと。
・雇用契約書等で、基本給に含まれる固定残業代が何時間分に相当するのか、固定残業代を除いた基本給の額はいくらなのかを、スタッフごとに明確にし、スタッフの署名をもらっておくこと。
・できる限り、給与明細にも固定残業代について記載しておくこと。
・固定残業代を越える残業時間があれば、超過分を必ず支払うこと
が必要となります。
昨今、美容室の未払い残業代の相談が増えてきています。トラブルにならないよう、きちんと対応しておきましょう。
美容室は人の入れ替わりが激しい職種ですし、それが当然だと考えられているオーナーさんも多いことでしょう。
しかし、先輩スタッフが業務終了後も自分の時間を割いて、新人スタッフに遅くまでレッスンして、何とか使いものになったとたんに、
辞めていく。これほど空しいことはありません。
一方、新人が順調に育ち、スタッフの離職がほとんどない美容室も存在します。
このような美容室に共通していることは、人事評価制度が適切に運用されているということです。
一般的な美容室ですと、スタッフの給料は、これだけの売上が出せるスタッフであれば、この程度の額。
この資格や試験を受かればプラスいくら、といった決め方をされているところが多いのではないでしょうか。
しかし、このような昇給の決定方法だと、協調性やコミュニケーション、後輩育成など、店の運営に必要不可欠な要素が希薄になって、店の雰囲気が悪くなったり、
また、スタッフからも不透明な昇給方式に
「俺はこんなに店のために、色々な雑用もこなしているのに、なぜ、あいつと同じ給料なんだ」
といったフラストレーションが溜まる一方です。
きちんとした評価制度を導入し、バランスのとれた評価項目で、全般的に個々のスタッフを上期、下期など決まった期間ごとできちんと評価してやり、
また、それぞれのスキルや立場に応じたステージと、そのステージごとの賃金額、次のステージに上がるために必要な知識や技能を
目に見える形でスタッフ全員に示してやることで、スタッフのモチベーションアップがあがり、離職率の低下、お店の業績アップにつながります。
美容室であれば、新人スタッフのレッスンを行っているところがほとんどだと思います。
そのレッスンを、きちんとカリキュラムとして体系化することで、有期雇用の新人スタッフであれば、
訓練にかかる費用として約30万円、訓練実施後、正社員として再雇用すれば、さらに50万円を助成金として受給できます。
また、新卒の新人スタッフなどの場合も、1年間の訓練計画で、1人当たり約60万程度が受給可能です。
また、お金の面だけではなく、最適なカリキュラムとスケジュールで訓練を実施することで、新人スタッフの成長も早くなり、離職を防ぐ効果もあります。
個人事業主の美容室の場合は、社保加入は任意ですが、法人成りしている美容室では、強制加入となっています。
確かに、これまでは社会保険未加入のままでも、のらりくらりと何とかかわし続けてこられたのも事実です。
しかし、ここ数年、少しずつ風向きが変わってきたのを、オーナーも感じられているのではないでしょうか。
まず、社保未加入の店舗には、生徒を紹介しない美容学校が増えてきています。
ハローワークなども社保未加入の事業所は求人を受け付けてくれません。
また、マイナンバー制度の導入に伴い、社会保険未加入事業所への取締が強化されることが発表されています。
行政の調査により、強制加入事業所で加入手続を怠っていたことが判明し、社保に強制加入させられた場合、
過去2年分の社会保険料が遡って徴収されます。
もしこのようなことになってしまったら、美容室が受ける打撃は計り知れません。
社保に加入しても揺らがない経営体質を早急に整えましょう。