すっかり秋らしくなってきました
 2008年完成予定!と当初から腕まくりしながら張り切っておりましたが、予定どおりに進まない要因がいくつも積み重なり、とうとう開き直ってしまいました。「近々完成」「そのうち完成」・・・・。OPENを首を長くしてお待ち下さっている皆様、誠に申し訳ありませんが、このさい私たちの「のんびりペース」に今しばらくお付き合いくださいませ。

今号では9月下旬のスウェーデン訪問から感じたしょうがい者に対する支援のありかたや、そこから見えてきた性教育を始めとする「子育て」「思春期へのアプローチ」のポイントなどを掲載してみました。 

〜スウェーデンの福祉に触れたら、見えてきたぁ?〜

 「知的しょうがい者が理事長になる!」この目標に向かって動き出しているグループに出会い、「これは是非とも見届けなければ・・・」そんな思いがドンドンつのり、今年もまた北欧に足を踏み入れてしまいました。
 今回の旅は、スウェーデン第2の都市ヨーテボリにある「グルンデン協会」に研修として出かける「さわやか」チーム(東大阪市の社会福祉法人「創思苑」)に現地で合流し、かつ観光も少々・・という少々虫のいい企画でしたが、当事者たちの快い承諾を得ることができ実現しました。しかしながら先立つものが豊富とは言えない私たちの旅、可能な限り出費を押える工夫をしながらの手作り旅行となりました。


『いいよ!』

2008年3月中旬、神戸「しあわせの村」にて開かれた「さわやか」チームの合宿に参加させていただいた時からこの話は始まります。
 以前よりセクシュアリティー支援で関わりの深かった社会福祉法人創思苑・クリエイティブハウス「パンジー」の当事者たちが「名実ともに社会福祉法人の役員やリーダーになる研修を始めた」との情報を得、そのプロジェクトの一端を担うコンサルテーションとして私たちがお手伝いできる可能性を探るために前述の合宿に参加したのです。
 一年前より開始されていた「さわやか」のプロジェクトは、仕上げの一環として、この分野では先駆的な立場にあるグルンデン協会に研修に行く計画を立てていました。
 セクシュアリティ支援とは直接関係の無い話であり、福祉の専門家でもないハートブレイクですが、「日本の福祉の中で画期的なことが起こる・・・」そう感じた私は、おもわず「同行させてもらうってのは有りでしょうか?」と当事者たちに聞いてしまったのです。その結果「黒瀬さんたちやったら、一緒に来てもいいよ」とあっさりと承諾を得たのです。

『グルンデン協会って?』

 知的しょうがいを持つ当事者本人たちが、理事・責任者など組織の主要部分を担当している組織で会員数は約500名です。
 「自分たちのことを自分たちで決めることが出来る自分たちの組織が欲しい!」と2000年に親の会から独立し、着実に目標に向かって前進している組織としてとても有名です。
 「年金や手当てじゃなく給料を得て生活をしたい」そんな思いがついに政府に届き、今年度は何と3億円近くのプロジェクトを政府の委託を受けて実施するまでになっています。
 もともとスウェーデンの行政は直接の事業を実施する傾向ではなく、とくに福祉においてはその殆どが民間(宗教法人等)に委託していましたが、ついに「知的しょうがい者施策」を当事者に直接委ねることになったのです。
 今回訪れたグルンデン協会の本部が入っている建物はスウェーデン西部の都市ヨーテボリにあり、ウェッブサイト作成を中心としたデサイン担当部所、映画・ビデオの製作、ラジオ放送・ディスクジョッキーを始めとするグルンデンメティアなどが入っている施設でした。
 この他にも一般の方々も利用できる喫茶部門や余暇活動を企画する部門など多肢に渡る活動分野があるそうです。

『計画♪』・『台風一過?』・『何と・・!』

関西空港からフィンエアーにてフィンランドのヘルシンキまで飛び、さらにデンマークのコペンハーゲンまで歩をすすめて、まずは一服。その後、逆まわりの「さわやか」チームにヨーテボリで合流する計画をたてて、格安航空券およびホテルをインターネットで順次予約しいきました。海外へ出かける場合は殆どが個人旅行でしたが、旅行社を通さない旅行は始めてでした。昨年も北欧を訪問したとはいえ一抹の不安も感じたので下調べは完璧すぎる程しておいたのです。
 ところがところが何のことは無い、9月は台風シーズンであることをすっかり忘れていました。出発日が近づくと台風15号が関西をじっと見ているではありませんか? ハラハラ・ドキドキしながら「20日ではなく21日出発であったらよかったのに」などとブツブツ言いながら心配して、細かく台風情報をチェックし続けていました。結果として「ギリギリ・セーフ」で出発することができました。
 現地で合流する「さわやか御一行様」は翌21日出発でしたので、「そんな心配が不要な彼らは良かったね〜」などと気楽な私たちは何も考えずに日本を後にしたのです。
 
ところが、彼らの乗る予定の翌日便はカミナリの落雷により機器故障によるキャンセルとなってしまい関空のホテルで一泊するはめに。ストックホルムでの観光もふっ飛び、研修当日の早朝にヨーテボリ入りされたのです。もちろんこれを知ったのは、ずーーと後で、彼らの乗った列車がヨーテボリ駅に到着するのを「歓迎」の横断幕を用意しようか・・などと相談しながら駅近くで待っていた時です。

 「今、ヘルシンキにいます!」「ご冗談を!」「ホントウです!」「・・・・?」という電話連絡だったのです。

『とっても自然♪』 〜その1〜
 宿泊先のホテルから歩いて15分、「白鳥」を意味する通りに面したビルの2階に彼らのオフィスがあります。「グルンデン協会」のプレートの下をくぐったとたんアチコチで握手・ハグハグの大歓迎がはじまります。とにかく当事者も支援者も「明るい」の一言で表現すればぴったりの歓迎ぶりです。
 オフィス内にはそれぞれのブースがあり、どれにも洗練された家具があり、一部屋ごとに個性があふれているのがとてもいい。
 ミーティングルームは「さすがデザインの国」だと感じるもので、この部屋以外もよくよく見ればいろいろなところに「ステキ」が一杯あるのです。
そんな中での歓迎ぶりの笑顔・行動・お茶をどうぞ・・・・どれ一つをとっても「自然さ」を感じ、「しょうがいって何?」こんな言葉が頭を過ぎるのです。
 
グラスを片付けようとすると「すわっいて」「エンジョイして」・・「私がもてなす担当・あなたはゲスト」。手伝いながら話でもしようと思った私だけど彼女の「自分の仕事」に手も足もでなかったのです。
 でも、これもニッコリ顔での会話なので、とても自然なんですね。


『とっても自然♪』 〜その2〜
 グルンデン協会の活動基本の一つに「考えていることを伝える」があります。その一つが女性運動の先端を担っていることです。「しょうがい」に関する運動と「女性」に関する運動はとてもよく似ているので、何の問題もなく無理なく取り組めるそうです。
これってとても自然なことに感じます。
 また、ある女性が今政府に訴えていることの中に、「健常者と同じ評価を」があるそうです。つまり、特別支援学校では5段階で言えば1〜4しか無く5が付かないシステムなのです。「いろいろな科目があるのにオカシイ」・・・・確かにそのとおりですよね。
そんな彼女が、ニッコリとした表情で話してくれたことが、これまた自然なんです。

『とっても自然♪』 〜その3〜

 理事会が開かれ、それを見学する機会を得ました。 グルンデン協会の理事は全員がしょうがいを持つ11人で2年任期です。 この日は理事7名がテーブルについています。コーチ役の二人も会議には加わりますが、テーブルには着かずサイドの椅子にすわっていました。
 会議が始まります。理事長の開始の発言の後、建物の賃貸契約について検討が始まりました。契約については難しい点があるので、コーチに説明を求め、発言の終わったコーチはサッと椅子に戻るのです。

つまり、当事者主体で全て進んでいます。とても画期的ですごいことなのに、とても当たり前・とても自然に感じる会議だったのです。

『とっても自然♪』 〜その4〜
 このグルンデン協会で働いたり仕事を学んだりしている当事者のなかに、結婚している人や同棲中の人が多くいます。とくにスウェーデンでは同棲については「サボ」と呼ばれ法律でも認められているのですが、しょうがい者もこの形態で生活しているのは自然です。
また、自動車の運転も認められており「さわやか」のメンバーたちも彼らに送迎してもらっていました。
 夕方になり、学校帰りのこども二人が親のところにやってきました。
 よく聞けば、二人ともある夫婦の養子だそうです。四人で仲良く家路についていたのがとても微笑ましく感じたのでした。