■2002.5.18sat.

 伊丹エッセイ同好会の同人会で布引ハーブ園に遊ぶ。園内は花の季節であった。ミュージックローズガーデンはチャールストン、連弾、マリア・カラス、ミュージックなど音楽にちなんだ薔薇が咲き誇っていた。

 ラベンダーの代表、イングリッシュラベンダーも今年は花が早い。もうちらほら咲き始めている。盛りも早く訪れそうだ。

■2002.6.9sun.

 ホームページを立ち上げて、3週間ぐらい経った。小説のコーナーの不具合等で、更新もままならなかった。ようやく少し余裕が出てきたようだ。今日は私の好きな野草について書いてみたい。一般的には雑草と呼ばれて、『害草(がいそう? こんな単語ないよね)』扱いされているけれど、私は彼らをいつも野草(やそうまたはのぐさ)と呼んでいる。素朴で楚々としているのがいい。何か心のなかに染みこんでくるような可憐さを感じる。特にさわやかな風と煌めく陽光に揺れている様子などは、少女が女へと移ろいゆくときのような揺れ動くしなやかさやしたたかさが伝わってくる。

明石公園堀端2002.6にて  001

■ヒメジョオン 

erigeron annus(キク科)

北アメリカ原産の帰化植物、6月から10月開花。

▼ハルジョオンとの見分け方

1.葉が茎を抱いていない。ハルジョオンは抱く。

2.つぼみが上を向いている。

ハルジョオンは垂れる。

■2002.6.13thu.

 ひるがおが家の近くにある畑の土手に咲き始めた。薄紅色の花はひかえめだけれど、私の心に響く。遠い夏の日にどこまでも続く原っぱの入口でひっそりと咲いていたのを思い出す。朝咲き、夕にはしぼむひるがおの一日花のつかの間を私は思う。亡き母はこの花が好きだった。そういえば、斜面に咲き乱れる感じが、母の面影に似ている。野草の間に隠れていた妖精がふと陽を浴びたような様子がいい。                5月の連休に淡路島の慶野松原に行った。砂浜にひるがおよりずっと小振りな薄紅色の花が群生していた。はまひるがおだ。浜辺の薄紅色もまた私をときめかせた。

明石太寺にて       002

■ヒルガオ

Calystegia japonica     (ヒルガオ科)

あさがおやよるがおと同じ科のつる性多年草。6月から8月開花。

▼コヒルガオとの見分け方

1. ひるがおの花柄は翼がないが、コヒルガオは翼がある。

2. コヒルガオの葉は、学名のclystegia hederacea が示すようにヘデラの葉に似ている。 

■2002.6.22sat.

 ドクダミの花が裏庭の日陰を好んでひっそりと咲いている。花はこびとの帽子のように見える。白い4枚の花弁状のものは苞で、広辞苑によると「花や花序の基部につく葉」であるという。この白い葉は訪花昆虫を誘うと言われている。私もなぜか白い花と白い日傘をさして丘に立つ白い服の女に惹かれる。モネの絵画が思い浮かぶ。緑色の日傘をさして丘の上に立つ白い服の女のスカーフを風が靡かせて渡る。

明石太寺にて       003

■どくだみ

Houttuynia cordata

(どくだみ科)

葉は互生。ドクダミは「毒・痛み」に由来する。古くから「じゅうやく」と呼ばれる薬用植物。6月〜7月開花。コリアンダーのような独特の臭いがあるが、乾燥させると消える。

T.Nomoto'sketch

■2002.6.29sat.

 久しぶり家にいる土曜日。ゆったりとコーヒーを飲みながら、このページを更新している。原っぱは私の心のふるさとである。                        幼いとき、家の前に広大な原っぱがあった。そこは高射砲陣地の跡だった。戦争中に撃墜したB29爆撃機は一機と聞いた。私ははるか高空を飛ぶB29の編隊と爆音を思い浮かべた。それは私が体験したことのない記録なのだ。しかし、なぜか私の記憶のなかに巣くっている。                                        原っぱを斜めに通り抜けて小学校に通った。けものみちのような道の果てに晴れた日には、富士山が見えた。梅雨の晴れ間の夕方、学校のの帰りに大待宵草(おおまつよいぐさ)が、野草の間に咲き乱れていた。憧れていた隣の家のお姉さんにその黄色い花を採ってきて渡したこと覚えている。今はその花も少なくなった。どこへ行ってしまったのだろう。私が幼き日に見た待宵草は別種のメマツヨイグサイかもしれないが、今はもう確かめるすべもない。

      

神戸伊川谷     004

■おおまつよいぐさ

Oenothera erythrosepala

(あかばな科)

葉は互生。北アメリカ原産(園芸種)の帰化植物が野生化。日本自生種はない。

▼おおまつよいぐさとメマツヨイグサの見分け方

1.おおまつよいぐさは花柄があるが、メマツヨイグサはない。

2.おおまつよいぐさは花が大きいが、メマツヨイグサは小さい。

■2002.07.07sun.

 私の家には、「ありきたりな名前ね」といわれるミーという雌猫がいる。白と黒と灰色の三毛猫? だ。隣家の猫だったけれど、お隣さんが引っ越したときに彼女は残って我が家の猫になった。ミーは餌を食べるときを除いて、家の中には入ってこない。だから、正確に言うと、庭猫。彼女自身は我が家の猫と思っていないかもしれない。               

 とにかくもう十年間も庭に棲んでいる。相当のおばあさんと思うが、元気だ。私が深夜に酔って帰ると、足音を聞きつけて、外の道まで出迎えに来てくれる。私は家人からそんな手厚い出迎えを受けたことはない。家の鍵を開けるまで、私の足下にまとわりついて離れない。暖かみが伝わってくる。                          

 そんなミーは猫じゃらしが好きだ。久しぶりの休みの日に私はミーと猫じゃらしで戯れる。

明石太寺      005

■えのころぐさ         Setaria viridis

(いね科)

葉は互生。俗称ねこじゃらし。狗子草と書くように、また中国名は狗尾草といい、犬のしっぽに見立てられ手いる。英語ではFoxtail grassと呼ばれている。粟の原種とか。粟とえのころぐさの雑種が「おおえのころぐさ」と言われている。

■我が家のミー

■2002.07.14sun.

 城跡へと散歩に出た。家の近くの土手で露草の群れを見つけた。昔は染色にも使ったらしく、着草とも呼んだ。花は鮮やかなブルーで野辺でもよく目立つ。私はこの花が懐かしい。あの人の忘れられない印象と似ているから。今はもう彼女がどこでどうしているのか、私は知らない。  あの人が夜行列車から京都駅に降り立ったとき、雑踏の中で露草色に似たブルーの麦わら帽子が一際映えて見えた。                                  
 ふたりは寂光院へ向かう畑中の道で露草の群れを見つけた。               

「わたし、この色好きなの」あの人は帽子の庇で翳った白い顔を傾けて言った。       
 私の心はときめき、花の色に染まった。そしてますますこの花が好きになった。      
 さわやかな風と刻が吹き過ぎる。今も露草の群れが揺れている。

明石太寺  006

■つゆくさ           Commelina communis

(つゆくさ科)

ボウシバナともいう。日本各地で見られる一年草。花は6月〜9月。葉は互生。雄しべは6本。長い2本が花粉をつける。黄色い3本は花粉をつけない。この花雄蕊(かゆうずい)といい、昆虫を誘うといわれている。

■2002.07.28sun.

 夕刻に家を出た。明石城跡の東堀を辿ってJR明石駅に出る途中で他の野草に絡まる早乙女葛を見つけた。
 北区のとある棚田を一般に開放してみんなで米を作ろうという『米作り隊』の試みは、独りの青年と地元の古老や近くに点在する団地に住む人々の力で去年の収穫はかなりあった。古代米や香米も順調に育った。今、私が是非見てみたいと思っているのは、田植えのとき、早乙女たちによる古式に則った田植えだ。早乙女、この語感がいい。田の水に映える早乙女の白い足が眼前に浮かぶ。
 生命を育む田植えと早乙女はどこか魅惑的であるし、淫らな思いをなぜか起こさせる。

明石太寺      007

■へくそかずら         Paederia scandens

(あかね科)

別名サオトメカズラ、ヤイトカズライという。学名までスカンデンスとつけられかわいそう。花が早乙女の帽子に似ているという名の方に愛着を感じる。古くからしもやけの薬として果実が用いられたという。花、葉、果実をもんだり、つぶしたりすると、臭い。

■2002.08.11sun.

  立秋を過ぎたが、暑い。挨拶が「暑いですね」ではなお暑いが、つい出てしまう。このところ夜になって吹く風にはゆく夏を感じる。やはり自然の風は心地よい。
 風というと彫刻家で風の旅人・新宮晋さんを思い出す。風と人を求めて、地球をウインドキャラバンする彼の心のなかは雄大でさわやかだと思う。風のおもむくまま、心のおもむくままに世界を旅できたら、いいなあといつも夢だけを見る。想像の世界ではもう何百回となく地球を巡った。 散歩に出た夕方、明石城跡の裏口で秋風に揺れるブドウ科のやぶがらしを見つけた。花は5ミリぐらいで小さいが花弁の緑に浮かぶほのかなピンクはひっそり咲いている。それがいい。

明石錦城      008

■やぶがらし     Cayratia japonica

(ぶどう科)

繁殖力旺盛が名前の由来。貧乏葛ともいう。花期は6〜8月。果実は黒。朝開花する。花盤の淡紅色は可憐でいい。

■2002.08.18sun.

 終戦記念日の8月15日付読売新聞夕刊『よみうり寸評』に<スベリヒユ>ことが掲載されていた。”敗戦の夏を思うとき、なぜか、このおかしな名の野草を思い出す。野や道端のそんな草まで食べた日々だった”と。このホームページの現在の巻頭写真は奇しくもそのスベリヒユ(巻頭写真は園芸種、ポーチュラカは学名)だ。これを食べたとは、いったいどんな味がしたのだろうか? 
 私は散歩に出たついでに野生のスベリヒユを探した。明石城跡へ行く畑中の道で見つけた。アスファルトの間で咲いていた。園芸種にない健気さとしたかさで素朴にたくましく生きぬいていた。食べる勇気もなくただ写真を撮り、いくじのない私だけれど、戦いに敗れた夏、野草の上を渡った風を決して忘れてはならないと思った。

明石城跡への野道  009

■すべりひゆ Portulaca oleracea

日本全土に生息。日照により開花。おしべに触れると、指先を追う。花期は7〜8月。葉は対生。若い茎葉は食べられる。解毒剤とか?







野草に思う-花四季彩