飛鳥京跡苑池遺構発見!

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 T.はじめに
 調査池は、岡集落の北西の水田中にあり、飛鳥川右岸の低位段丘面に立地しています。飛鳥京跡上層遺構(飛鳥浄御原宮)の内郭の北側で、北西コーナーから100m北西に離れています。大正5年(1916)この地から耕作中に2個の石造物が掘りだされました。石の表面に穿たれた溝と窪みによって水を受けて流す仕組みになっており、岡所在の酒船石との関連性が指摘されている興味深い石造物です。
 今回の調査は、この石造物が発見された場所を中心に、その出土状態の確認と遺構の性格の解明を目的として、平成11年1月18日より約1000uを調査しています。
 U.調査の概要
 調査の結果、飛鳥時代の苑池遺構の一部を検出しました。ただし全体の規模と形態は未確認です。苑池は底に平らな石を敷き詰め、周囲に石積みの護岸を巡らせたものです。調査区南辺では、大正5年に石造物を掘りだした際の抜き取り坑を確認し、元の位置を確定することができました。さらにその周辺で別の石造物を2個検出し、これらの石造物が一連に組み合わされて南方からの流水施設となることがわかりました。池底には厚さ1mの有機質層が堆積しており、最下層の石敷き上には10世紀代の土器、最上層には13世紀代の瓦器が包含されていました。このことから苑池は平安時代までは滞水しており、鎌倉時代中期にかけて湿地状態で埋没していったことがわかりました。以下、遺構ごとにその概略を記します。
 護岸石垣 苑池西辺の長さ35m分を検出しました。調査区内は直線ですが、南端では緩やかに東に曲がり込んでいます。直線部分は北に対し西へ21゜の振れがあります。石垣は現状で高さ80p、1〜4段が遺存しており、斜めに積まれています。
 石敷き 池底にはベース土の青灰色砂礫土上に10〜30p大の石を平らな面を生かして敷き詰められています。本来は全面に敷かれていたものですが、抜けている部分もあります。調査区北東部は残りが良く、南北方向の目地が3条認められます。石敷き面の高さはおおむね水平ですが、護岸石垣際は4mの幅で上面に更に1層の石敷きが施されています。また護岸石垣に接して柱が1本と、柱を抜き取ったとみられる坑が11箇所確認されました。
 島状石積み 石敷き上に6×11mの範囲で、敷石よりもやや大きめの石を高さ60pで積み上げたものです。平面形は不整楕円形で、2箇所に小さな張り出しがありますが、明確に輪郭をなす石は置いていません。上面は2×5mの範囲で平らですが、面を揃えて敷き詰めていません。
 石造物 大正5年の抜き取り坑の先端から1.5m間隔を空けた地点で石造物を、抜き取り坑の東に接して調査区の南壁際で別の石造物を検出しました。前述の石造物は原位置で樹立した状態で出土しました。花崗岩の石塊を成形し、上部には横方向に孔を貫通させています。現高150p、裾部厚72p、孔径9p。後述の石造物は、平らな石塊の内側を槽状に刳り抜いたもので、水を溜めて流す装置と考えられます。長さ約270p、幅約200p、厚さ60p。
 張り出し 発掘区を北側に拡張した部分で、南側に舌状に張り出す護岸石垣を検出しました。この部分は西辺の護岸石垣とは異なり、石敷き上に小礫を置き、その上に垂直に積まれています。3段積みで高さは110p遺存しています。この石垣の性格としては、西辺の護岸に連結する北辺の護岸から張り出す出島状の施設か、あるいは独立した中島の石垣で張り出し部分に相当するものと考えられます。
 V.まとめ
 今回の調査成果として次の2点があげられます。
  従来明らかでなかった飛鳥京跡近辺での大規模な苑池遺構を検出したことです。これまで飛鳥地方で検出された苑池遺構としては、島庄遺跡、石神遺跡、飛鳥池遺跡、小墾田宮推定地などで検出されていますが、島庄遺跡を除くといずれも一辺10mに満たない小規模なものです。今回検出した苑池は、規模で島庄遺跡の方形池を越える可能性があり、飛鳥川右岸一帯にこのような施設が展開していたと考えられます。その場合、「日本書紀」天武14年11月条にみえる「白錦後苑」との関わりが注意されるのですが、正確な規模、形態、築造年代、系譜関係については今後の検討が必要です。
  原位置で樹立していた飛鳥時代の石造物が出土したことです。大正5年に出土した際には調査はなされておらず、具体的な出土状況は不明だったのですが、今回の調査により、大体の構成が復元できました。石造物は南北方向に一直線に並び、段丘崖を利用して南方の高所から流水し、さらに池中への落水を意図したことが明らかになりました。

   1999.6.19−20 現地説明会資料(奈良県立橿原考古学研究所)より

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 島状石積みと石造物
 (南西方向を望む)







 石造物からは水が流されている




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 向こうの丘は「甘樫丘」
 (北方を望む)














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