家畜防疫を総合的に推進するための指針家畜防疫を総合的に推進するための指針を次のとおり定めたので公表する。
平成13年9月6日 農林水産大臣臨時代理 国務大臣 林 寛子
家畜防疫を総合的に推進するための指針
近年、我が国における家畜の伝染性疾病の発生は、ワクチンの開発、普及等予防技術の進捗、防疫体制の向上等により総じて平静に推移してきたところであるが、我が国の畜産は、経営規模の拡大が急速に進展し、家畜畜産物が広域的に流通するようになっており、ひとたび伝染性疾病が発生した場合、急速かつ広範囲にまん延し、その被害が甚大となるおそれがある。
このような中、平成12年3月には、我が国では92年ぶりとなる口蹄疫の発生が確認され、家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号。以下「法」という。)の制定以来、初めてその発生に伴うまん延防止措置が全国的に実施された。
1 家畜防疫の基本的推進方向
(1) 事前対応型の防疫の推進
ア
国及び県は、関係機関、関係団体等と連携し、全国及び地域の伝染性疾病の発生及び浸潤状況の把握並びに防疫技術及び防疫体制の整備の確立に努める。
イ
関係団体、家畜所有者及び関係業者は、国、県政び市町村の助言及び指導の下、全国の伝染性疾病の情報を活用し、健康家畜の流通、農場及び関係施設での車両の消毒等の一般衛生管理の徹底、ワクチン接種の励行等効果的な自衛防疫の実施に努める。
(2) 危機管理の観点に立った対応
ア
国及び県は、広域にまん延するおそれのある伝染性疾病の発生に備え、事前に発生時の具体的対応方法及び役割分担を定め、関係者に広く周知するとともに、衛生関連情報の収集、分析及び提供体制、病性鑑定体制、防疫資材の備蓄及び供給体制、家畜死体の処理体制の整備等に努める。
イ 国及び県は、伝染性疾病の発生時には、適切な情報提供に努め、市町村、関係機関等と連携して迅速かつ的確な防疫措置を推進するとともに、必要に応じ経営安定対策を講じるよう努める。
ウ 国は、家畜の新疾病について、海外の疾病発生に係る情報の収集及び提供並びに調査及び研究に努め、国内での新疾病発生時には速やかに試験研究、情報収集等を企画・推進し、適切なまん延防止対策等を講じるよう努める。
(3) 国内の伝染性疾病の清浄化の推進
国及び県は、国内に既に浸潤している伝染性疾病について、その特性、浸潤状況等から判断される技術的な清浄化の可能性を検討の上、家畜所有者、関係団体等の合意文は協力を得ながら、伝染性疾病の清浄化の推進に努める。
(4) 海外からの伝染性疾病の侵入防止
国は、海外の政府機関、研究機関、国際獣疫事務局(OIE)その他の国際機関との情報の交換並びに動物又は畜産関連物資の輸入状況の把握及びその危険度分析に努め、的確な輸入検疫を実施する。また、県は、輸入家畜の着地検査を実施し、伝染性疾病の侵入防止の徹底を図るように努める。
2 家畜防疫実施体制の整備
(1) 国、県、市町村、関係団体、家畜所有者等の果たすべき役割 個々の農場等関係する場所での伝染性疾病の発生防止は、家畜所有者、関係業者が、その経済活動の一環として,又は社会的責務から自ら行うべきものであるが、公益的な見地から行われる法に基づく措置と併せ、それぞれ以下を基本として役割分担を行い、効果的な家畜防疫の実施に努める。
ア 国及び県は、相互に連携し、次の取組を行う。
(ア)家畜の各種伝染性疾病の検査等による発生及び浸潤状況の把握
(イ)家畜防疫に関する情報の分析及び還元による自衛防疫の推進
(ウ)家畜伝染病発生時の防疫措置の企画、実施及び指導
(エ)国における的確な輸入検疫及び県における輪入家畜の着地検査の実施
(オ)家畜防疫に関する調査・研究の推進及び普及
(カ)病性鑑定体制の整備
(キ)家畜防疫の実施にあたる人材の確保
イ 市町村は、次の取組を行う。
(ア)家畜所有者等が行う自衛防疫の推進及び連絡調整
(イ)家畜所有者の行うべき防疫措置の実施に対する支援
(ウ)県が行う防疫活動への協力
ウ 自衛防疫活動の指導・推進を目的とする団体(以下「自衛防疫団体」という。)を中心に、関係団体は国、県、市町村等と連携し、次の取組を行う。
(ア)組織的かつ統一的に行うべき自衛防疫の実施
(イ)家畜所有者個々が行う自衛防疫の推進
(ウ)家畜所有者等への家畜衛生知識の普及・啓発
(エ) 防疫推進方向についての家畜所有者等の意見集約
(オ)県が行う防疫活動への協力
エ 獣医師の組織する団体は、県等と連携し、その組織的推進を図るとともに、獣医師は次の取組を行う。
(ア)最新の家畜衛生知識の習得
(イ)家畜所有者への家畜衛生知識の普及・啓発
(ウ)関係団体が行う自衛防疫活動への協力
(エ)伝染性疾病を疑う症例の通報等疾病発生情報の県への提供
(オ)県が行う防疫活動への協力
オ 関係業者は、相互に連携し、次の取組を行う。
(ア)健康家畜の出荷及び導入
(イ)農場及び関係施設入出場車両の消毒等一般衛生管理、予防接種、自主検査その他自衛防疫の実施
(ウ)異常家畜の有無の観察及び発見時の早期措置
(エ)県が行う防疫活動への協力
(2) 国、県、市町村、関係団体、家畜所有者等の連携体制の整備
ア 情報の収集及び伝達体制の整備
(ア)国は、海外の政府機関、関係団体等の協力を得て、海外における家畜衛生関連情報の収集ネットワークの構築に努めるとともに、国内向けの情報提供に努める。
(イ)相互の情報交換及び提供体制を整備し、通常時の自衛防疫活動の推進及び伝染性疾病発生時の円滑な防疫措置の実施に資する。
イ 主要な伝染性疾病の防疫要領の整備
(ア)国は、主要な伝染性疾病の防疫方針、発生予防措置の実施、発生時の法に基づく殺処分、移動制限等のまん延防止措置の実施、家畜所有者、獣医師、関係業者等が行うべき措置、組織体制の構築等に関する事項について貝体的に記載した要領を定め、その内容を公表する。
(イ)県は必要に応じ、(ア)の国の定める要領を基本として、地域の実情を踏まえた県の防疫要領(以下「県要領」という。)を策定し、関係者に広く周知するよう努める。
ウ 家畜所有者及び関係業者に対する家畜防疫意識の普及・啓発
(3) 緊急措置の実施体制の整備
ア 防疫資材の確保
3 各防疫措置の進め方
(1) 発生予防措置
ア 発生の届出
(2) まん延防止措置
ア発生の届出
(3) 自衛防疫
ア 自衛防疫の推進
4 家畜防疫の円滑な推進
(1) 家畜防疫に関する試験研究の推進
国は、より効果的な防疫対策の確立のため、動物検疫所、動物医薬品検査所、動物衛生研究所その他の試験研究機関の行う調査研究を促進するとともに、民間における防疫資材の開発力の向上等を促進するよう努める。
(2) 防疫資材の円滑な供給と防疫コストの低減
ア 国は、動物衛生研究所等による伝染性疾病の検査薬等稀少防疫資材の安定供給に努める。
イ 国は、効果的な衛生管理の指導と併せ、多機能・省力型ワクチンの開発等より効果的な防疫資材の導入等の取組を促進するよう努める。
(3) 家畜伝染病が発生した家畜所有者への経営対策等
国、県及び市町村は、関係団体と連携し、家畜共済制度への加入、海外悪性伝染病の発生した家畜所有者等の負担を軽減するための互助基金の造成等を推進するとともに、家畜伝染病の発生時には、これらの制度や融資制度の活用等による家畜所有者等への経営対策のほか、家畜市場対策、消費者対策等を適切に講じるよう努める。