Project Y 2003
薬師岳
8/9 折立へ
8/10 薬師への道
薬師への道2
8/11 薬師岳アタックそして下山
北アルプスの西にでっかくそびえるあの山!
槍からも穂高からも遥か西にでーんとかまえるあのお山
薬師岳、標高2926m
予想していた以上に、雄大で大きな山だった!
8/9:折立へ
台風10号は朝に近畿地方を通過し北陸方面へ向かっている。夜半には山形付近に向かう模様!
滋賀県地方の風雨は峠を越している。かなりお騒がせの台風ではあるが、直接的な影響を受けることはなさそうだ。
午前11時、曇り空の中、折立へと出発する。
例年は夜の高速をぶっ飛ばすのであるが、今年は折立に入る有峰林道の通行可能時間や寝不足によるバテを考え、
前日に登山口に着き、睡眠充分で山に臨むことにした。
北陸自動車道を富山に向け、ノアを走らせる。通過する河川は例外なく濁流が流れている!
有峰林道は大丈夫だろうか?登山道は大丈夫だろうか?
そんな不安を抱きながら、海沿いの北陸道を走らせる!
富山県内に入ると、速度の遅い台風のしっぽを踏んだのか、雨が降り出してくる。
ますます不安が高まる中、富山に着く!
さて、「食料の買出しだ!」
富山市内のスーパーで今夜のメニュー”富山の海産物”を仕入れ、
今度は折立へと向かう。
8/10:薬師への道
折立〜太郎平
この雨でかなり道は傷んでいるだろう。私の記憶ではかなりの悪路だったような…
ネガティブなことばかり考えながら、当時(1980年代)と比べかなり走りやすくなった有峰林道を快適に走り、有峰湖を過ぎ、午後6時折立に到着!
残念ながら天気は小雨!
車で寝るか、テントを張ろうか、
悩んでいるところへ林道の管理事務所のおじさんが
「事務所でご飯食べるかい?」と声をかけてくださった。
お言葉に甘えて管理事務所に入れていただき、
富山で買出ししてきた食材での夕食にする。
オヤジは日本海海鮮丼、子供たちはカニチラシ、
山に入っての新鮮な海の幸での晩餐。
最高の贅沢かもしれない。
オヤジさんにお礼を言って、
せっかく持って来たんだテントを張ろう
明日に備えてシュラフにもぐり込む。
午前4時30分に目を覚ます!子供たちは初のテントにも関わらず、爆睡している。
前夜に登山口に入り、テントで寝る!という作戦が今回は当りだった。
前夜初だったら林道のゲートで6時まで足止めで折立に着くのが7時前後、
前夜到着で出発が5時30分。
お決まりの睡眠不足もない。しかし、今年は春先にほとんど登っていない。
トレーニング不足は否めない。快調に登れるだろうか。
朝の天候は小雨、愛知大学の遭難碑に合掌し
いよいよ、ProjectY2003.薬師岳への挑戦の開始である!
歩き始めていきなり樹林帯の急登、太郎坂がはじまる。
つづらおリの坂道をゆっくりとマイペースで登って行く!
30分ほどで雨はあがり、さわやかな夏空が顔を出す。
木々の間からの木洩れ日が眩しい!
30分登って5分休憩というピッチを繰り返し、
歩き始めから3時間で樹林帯を抜けて三角点に到着、
目指す薬師はまだまだ遠い。
北には剣がその勇姿を見せている。
「今年もアルプスに登ってるんだ」っていう実感が込み上げてくる。
三角点から先は、草原の登りが太郎平まで続く。草原の登りなのであるが、暑い。そして思っているよりも急な登りだ!歩きはじめから4時間、
ここでオヤジの足が止った!やはり来た!オヤジのスタミナ切れである。
去年の大樺沢、一昨年の鏡平につづく炎天下でのバテ!
Fieldオヤジは暑さに弱い!夏山恒例の面目丸つぶれである。
急登やへばりはさておき、太郎平へと続くこの草原は、
つらい登りではあるが、爽快な登りである。
登山道が整備されすぎているのが少々気になるが、
時期遅れのニッコウキスゲ、出遅れたチングルマ。
例年だと終わっているはずの花が今年は残っている。
ラッキー!と素直に喜んでいいのかどうか?
タイガースの快進撃といいこの異常気象といい、
やはり、今年はどこか変だ!
どこか変なんだけど、やっぱり気持ちいい!
ほんとに山はいい、ほんとにいい!
止りかけていた足も、いつしか快調に動き出す!
だんだんと大きくなる薬師岳を眺めながら、ようやく太郎平に到着!
薬師から黒部五郎への縦走路と折立から雲の平へのルートが交差する太郎平は多くの人で賑わいを見せている。

北にでっかく薬師岳、東には烏帽子・水晶・三俣蓮華・そして黒部五郎が、北アルプス最奥の大展望が広がっている。そしてどの山もでっかい!
薬師まで2時間あまりの登りが残っている。
しかし、
さらには、太郎平小屋からは生ビールの誘惑が…
こんな景色を目の当たりにして、そしてこの暑さ、
飲まない手はない!雄大な北アルプスの風景を肴に、生ビールを…
たまらないひとときをすごしている自分がたまらなくうれしいのである。
我が家にとって、夏にアルプスに登る事は当たり前のことである。
ところが、当たり前のことが当たり前に流れて行く、これはかなり幸せな事である。
いつかは来れなくなる時が来るだろう。でも、こうして今年もいろんなことを抱え込みながら、家族と登っている。
今年も歌っちゃおう!

♪私は今日まで生きてみましたぁ〜
 時には誰かと手を取り合って〜
 そして、今、私は、思っています〜
 明日からもこうして生きて行くだろうと〜

「もう1杯飲んでもいい?」
「ダメー」
山の上の休日のつかの間の幸せを感じたら、
いよいよ薬師へ向かって後半戦のはじまりだ!
8/10、薬師への道2
太郎平〜薬師岳山荘
太郎平から薬師へと向かう
なだらかな木道をしばらく歩く。視線の先の薬師岳は相変わらずでっかい。
いったん下りきると薬師峠のテント場に着く。沢筋を渡る風が心地よい。
雲の平を隔てて水晶岳が美しい。
ここから先はのんびりとした道ではなく本格的な登山道へと顔を変える。
優しさと厳しさを兼ね備えた薬師岳のもうひとつの顔である。
そして、このきびしさこそが、山登りの醍醐味なのである。
照りつける太陽!容赦のない急登!
そして咲き乱れる高山植物!
これが夏の北アルプスである!

薬師峠を過ぎ、樹林の登りが始まる。
「そろそろ、はじまるよ!」
一気に傾斜を増した道を見上げ、
遥か上の薬師岳に向かう。
標高差は約700m、2時間の急登である。
樹林の中のゴロゴロとした急斜面を登りきっても、
薬師平までは容赦のない急な登りが続いて行く。
薬師平から先はものすごい大展望が広がる心地よい登りが楽しめるのである。
「本日最大の頑張りどころ!行くぜ!」
ついに出ました!オヤジの大号令である

オヤジのファイト一発が効いたのか。
とにかく薬師平に着く!しかし
ものすごい大展望どころか、カールから上がってくる風がガスを運んでくる。
黒部五郎も、水晶も、槍も、
遠くの山がガスに隠れてゆく。
わずかに薬師岳のみが見え隠れするのみである。

急登はまだまだ続く!今のところは心地よい風である。
先を急ごう!
しかし、オヤジのペースが一気に落ちてしまった。
薬師岳山荘まであと30分!
全盛期の足ならば、15分で楽勝だったのに…
なんと40分かかっている。

どうにか薬師岳山荘に着いたのは午後3時を過ぎていた。
カールから吹き上げる風はますます強くなっていた。

薬師岳山荘は噂どおりの家族的な雰囲気、そしてうわさ以上の美人の女将さん。
星も出ていない、ただ風の音だけが聞こえている
今年も家族で3000mの夜を過ごしている。
8/11
薬師アタックそして下山
夜明け前に山頂を目指して出発する。
残念、ガスだ!星空も、あたりの風景も何も見えない。
夜明け前の薄明かりのなかにオヤジのヘッドライトがぼんやりと浮かぶ!
それでも、元気よく、高度を稼いでゆく。そう、Fieldオヤジは2日目に強いのだ。
「オラオラ、おとうさんのヘッドライトに付いて来いよ!」絶好調オヤジが吠える!
♪ヘーッドラァーイト、テールライト、旅はまだ終わらない!」
toshiも絶好調だ!
家族の盛り上りも空しく、天候は良くなる気配はない。
いつまでたっても夜明け前の明るさが続く。
ミルク色の景色の中、稜線を登りきる!
「やったぁ頂上だ!」
登りきったところはニセ薬師、ここから稜線に沿ってもうひと歩き。
岩屑だらけのガレ場をしばらく歩くと、
ようやく頂上だった。
おぉ!剣はあのあたりに見えるんだ。
槍はあっちの方角に小さく見えるんだ。
下に広がっているのは金作谷カールだぞ!
どこもかしこもミルク色である!
でも、今年も北アルプスの頂上に立っている!
家族全員で薬師岳の頂上にいる!
2003年8月11日午前5時20分!
標高2926mの薬師岳山頂を我が家が独占している!
「寒いよ!早く下りようよ!」
頂上の薬師如来に合掌し、早々に頂上をあとにする。
薬師岳山荘から、登ってきた道を下ってゆく。とうとう雨が降り出してきた。
薬師平へ下る途中、登山者に道を譲る。待っても待ってもガスの様に
大勢のおじさま、おばさまが湧いてくる!
温厚なField一家は不安定な足場でじっと待っている。
その中のひとりが「みんなで30人いるのでまだまだ待ってもらわなきゃ!」と来た。
「ちょっと待て!この場所で4人が下るのを待つのと30人が登るのを待つのと、どっちが早いかくらいお前らわかるやろ!リーダーを呼べ!」
百名山恒例の団体さんとのバトルである!

明らかに下り坂の天候・団体・中高年、恐れを知らないのは子供ではないのかもしれない。
怒りモードと下りのペースダウンは意外な方向に我が家を導いてしまう!
完全に娘の足が止まった!。
薬師平到着!20分遅れて娘到着!
薬師峠、またも20分遅れで娘到着!
降りしきる雨、滑りやすい下り、そして不安定な場所での登り待ち!
娘は完全に歩く気力を無くしてしまった。
「子供は状況の変化に弱い!」

降る雨は冷たく、道は果てしなく続く。けれど
歩き続いていかなければならない。

♪越えて
ゆけ!そこを!
 
越えてゆけ!それを!
 
今はまだ人生を、人生を語らず!(By 吉田拓郎)

太郎平から先はなだらかな下りを下りてゆくだけ。
「苦しかったけど、楽しかったね」

穂高から変更して上った薬師岳。
実に20年ぶりに登ったこの山は、
昔と変らない、でっかく見事な山だった。

Puroject Y2004

再び穂高を目指す!