スキプトン
Skipton スキプトン
スキプトンの駅を降りると、周りには何も無い。
イギリスでは駅は街のはずれにあるのが普通だと言うことだ。
日本では駅ができるとその周辺に街ができる。
イギリスではもともとの市街地の邪魔をしないように駅がひっそりと建っている。
スキプトンの駅を降り、それしかない道を歩いていけば、次第に沿道に店が現れてくる。
運河に架かった橋を渡り三叉路を左にとると大きな通りに出る。
大きな通りは100mほど先でまた左右に分かれるが、その分岐点の向うにスキプトン城があった。
中は迷路のように入り組んでいて、小さな窓から入って来る者を見張り、狙撃できる仕組みなんかも
日本の城と共通するところがある。
この城ができたのは1090年だと言うから、10世紀のこと。
1310年に大改築され、16世紀にも大規模な修復がされたとは言え、
今の時代にこの完璧な形を残していることに私は驚いた。
タイのイサーン地方に残る
クメール遺跡は、
この城とほぼ同時代の石の建造物だが、
瓦礫の山になってしまっていたのを最近になって修復したが、1997年に私が訪れた時も、
完全に修復されてはいなかった。
石の質にもよるのだろうが、石の建物は崩れてしまうと一つ一つのパーツが風化していってしまうから、
タイのクメール遺跡の状態になってしまうんだろう。
その反面、この城のようにしっかりメンテナンスがされ石組みが崩れなければ、
1000年でも2000年でもその姿を留めることができる。
イギリスでは民家でさえ、古い石造りのものを使い続けている。
私が泊まった2軒のB&Bも石造りだったし、
街の不動産屋の窓には古い石造りの家の物件がいくつも貼り出されていた。
内装を仕替えればいくらでも使えるし、住み心地は意外と悪くなさそうだ。
日本の建物に馴染んでいると、木の材質そのものがもつ温かみに比べ、
石の持つ鉱物質の冷たさみたいなものを感じて、石の建物はとっつきにくい。
でも実際には、石の建物は断熱性がよく、夏は涼しかったし、冬は暖房が効いて暖かいんだろう。
私が北海道の帯広に住んでいた頃、市内に石造りの銭湯があった。いつできたものかは知らないが、
開拓時代からあったような古いスタイルだった。
4〜5年前、10年ぶりに帯広を訪れてみると、
空港の近くに六花亭の包み紙の絵を描いた坂本直行の記念館ができていたので行ってみたところ、
敷地の中にあの銭湯だった石造りの建物が移築されているのを見つけた。
内装は一新されて、美術館として使われていた。
美術館の人に話をきいてみると、確かにその建物はあの銭湯で、
市街地にあった銭湯の石組みを解体して、バラバラになった石を30q離れたその場所まで運び、
再び元通りに組み直したということだった。
そうやって、あの銭湯は1000年の時を遺跡としてではなく、
人々が使う建物として生き続けてくれたら素晴らしい。
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