Letter 情報公開 2001.10.17

みなさん、牛肉食べてますか?
恐ろしくて食べられないと言う人も多いと思います。 狂牛病騒動は畜産農家や食肉業界に計り知れないダメージを与えていくでしょう。
だいたい、狂牛病と言う名前も聞くからに恐ろしいですね。
でも、これは正式な病名ではなく、イギリスのマスコミがつけた病名を日本語に訳したもので、 本当は「牛海綿状脳症」(BSE)と言います。
いかにもマスコミがセンセーショナルに書き立てるにはピッタリな狂牛病という名前が私は嫌で、 先月のこの欄でも、BSEと書きました。
マスコミだけでなく、BSE対策会議などでも、 会議資料に「狂牛病」と書かれているのにはがっかりします。 獣医なんだから、正式名称を使いましょうよ。

18日から全国の屠場で、BSEのスクリーニングが行われます。
食肉検査員の獣医さんは本当に大変です。 同級生のえっちゃんも先週横浜に研修に行きました。
そこで、あの大騒ぎになった東京のBSE擬陽性牛が発見されたのです。 結果的には皆さんもご存知のとおり、空騒ぎに終わったのですが、 18日からの対応について厚生労働省が右往左往することになりました。
今これを書いている時点では、スクリーニングで陽性、擬陽性の牛が見つかっても、 更に検査してBSEであることが確定するまで、発表はしないということになりました。
これについては、また隠し事をするのかという批判があるようです。

これはスクリーニングについて理解してもらえていないからですね。
スクリーニングというのは、膨大な検査作業を効率化するための一つの段階にすぎません。
たとえば、金魚ばちの中に宝石を落としたとします。
金魚ばちの底には色々な大きさの小石が敷いてあって、宝石は小石の中に紛れて見つかりません。
見つけたい宝石は小石の中では比較的大きなものとだいたい同じ大きさ。
そこで小石をふるいにかけます。そうすれば大きな石だけ残るから、宝石が探しやすくなりますよね。
この「ふるいにかける」という行為がスクリーニングなのです。
つまり、屠場での検査で陽性反応のでた牛をいちいちBSEだと発表することは、 ふるいに残った小石を全て宝石だと言っているのと同じです。
生産農家の立場になれば、 自分の牛が本当にBSEかどうか確証がない状態でBSEだという烙印を押されるのです。
情報公開と言いますが、スクリーニング検査の結果は公開する段階のものではないし、 それを公開しないから、隠し事をしているとは受け取らないでもらいたいものです。

検査済みの国産牛肉を今までどおりに食べていただきたいと切に願っております。
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