石窟とファミレス

「アフガニスタンではタリバンが、イスラム教の偶像崇拝を禁じる教えにそ向くとして、 バーミヤン石窟群の大仏像を破壊した模様」というニュースを私は仕事中、車の中で聞きました。
ただそれだけの短いニュースで、詳細は分りませんでしたが、胸に込み上げるものがあり涙が出ました。
仏教徒としての悲しみと、一度は見てみたいと思っていた人類の文化遺産を失ったという落胆、 偏狭な宗教観を持った指導者に苦しめられる人々への同情。 色々な思いが私の頭の中を駆け巡りました。
ちょうどその頃から、突然「バーミーヤーン、バーミヤン」という歌が 頻繁にラジオから流れるようになりました。 中華料理店のCMです。
アフガニスタンのことが頭を離れない私には、スターにしきのあきらのお気楽な歌声が 癇に障ります。
バーミヤンに関する情報を集めようと、インターネットでの検索をしてみると、 ここでもまた出てくるのは中華料理店のバーミヤンばかり。 おかげでこの店が「すかいらーく」の子会社で、 全国展開している低価格の中華料理チェーン店だということはよーく分りました。 けっこう人気があるみたいですね。
中華料理店の「バーミヤン」に悪気はないのだろうと信じますが、 やっぱりタイミングが悪すぎ(良すぎ?)ます。 私の耳には「バーミーヤーン」というスターにしきのの歌声が、 不愉快なものとして焼きついてしまいました。
不愉快にしろ何にしろ、それまで聞き流していた店の名前をはっきりと認識してしまったわけです。 これでは相手の思うつぼではないか。
しかしまぁなんですねぇ。(といきなり桂小枝口調) 今まで私たちはアフガン問題にはあまり関心を持ってなかったんでしょうかね。
私自身はバーミヤンの大仏破壊のニュースを聞くまで、アフガンの実情に関しては無知でした。 20年以上も前、ソビエトのアフガン侵攻に抗議して、モスクワオリンピックをボイコットして以来、 かの国は非常に不安定な状態にあることは知ってはいましたが、 何がどうしてどうなったと言うことはよくは知らずにいたわけです。 そして、今回の事件で「どないなっとんねん。」と言う疑問をもったところで、 インターネットの日本語サイトで検索にひっかかって来るのは中華料理屋。
この20年間の新聞記事を注意深く読んできていたなら理解していて当然のアフガン問題なのでしょうが。
中華料理屋がらみのサイトの中に埋もれているサイトから得た情報で、 ようやくアフガン問題の何たるかを おぼろげながら理解しかけているというのが現状です。
おまえは馬鹿だなと言われそうですが、多分これって標準的日本人の関心度じゃないでしょうか。
宗教問題なのだから、われわれが口を挟める問題ではないという意見もありますが、 イスラムの戒律の中で、女性は人権を踏みにじられています。 親族の男性の付き添いなしではどこにも外出できないという信じられない状況が タリバン制圧下のアフガニスタンの現状だそうです。 その状況を アフガニスタンの女性は不幸だと感じているのですから、 単に宗教問題として片付けられないのではないでしょうか。
少なくとも住民の半数である女性が、支配勢力が自分たちの権力を正当化するために 謳う「これは聖戦である。」という欺瞞の犠牲になっているのです。 残りの半分の男性の中でもしょうもない理由で迫害を受けている人がいるはずです。 アフガニスタンでも映画タイタニックがヒットして、若者のあいだでレオの髪型が流行ったそうですが、 支配者はそれが気に入らず、理容師を大量に逮捕したとか。「あーほらし。」
われわれが何の犠牲も強いられずに手にしている「自由と平等」はアフガニスタンにはありません。
だからと言って、アメリカの頭ごなしの自由平等主義の押し付けや、 国連の経済制裁を支持することもできません。 今回の大仏破壊も、ある意味、あの遺跡に価値を認める国連へのあてつけのように思えます。
だったらどうしたらいいのか、私には分かりません。 壊された大仏以上に、住民の未来のことを注意深く見守っていくしかできません。
そんな私の思いをよそに、今日も、にしきのあきらの「バーミーヤーン」はラジオから流れ続けるのでした。
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