AKI-H8をMIDI用途に使用する場合問題となるのは、PCとのコミュニケーション用に使われているRS232CデータラインとMIDIの共存である。AKI-8Hはデータ焼き込み時のやり取りをRS232Cを通じて行うのだが、MIDIとは規格が異なるため、MIDI使用時にはこれらの端子を通さずに、フォトカップラー(Rx)および、オープンコレクター(Tx)のバッファーを通じてH8プロセッサー本体と直接行うことになる。ただし、このような接続を行ってしまうと、RS232CのドライバーIC出力とフォトカップラー経由のMIDI/Rx信号が競合してしまって、最悪の場合素子の破壊が引き起こされる危険性がある。

そこで、MIDI工作では、RS232CドライバーICの足をフローティング(もしくは切断)することで、この問題を回避しなければならない。通常3048/3052を実装しているAKI-H8では、コンピューターとの接続には直接関係のない11番、12番ピンをフローティングさせることになる。ただし、僕の階段スイッチのようにRxを2ch使用する場合は、9番ピンもフローティングさせる必要が生じてしまうのだが、ここで新たな問題が発生してしまう。つまり、PCとのやり取りに使用していた信号ラインが途絶えてしまうために、H8へのデータ焼き込みが不可能になってしまうのだ。同様に、 Rx/Tx端子を1組しか持たないH8/3664系列でもデータ転送に問題が生じることになる。

(写真左:右クリック→画像を表示で拡大)


具体的な解決法としては、9番ピン(3664では12番ピン)をフローティングし、切り替えスイッチを設けている。表面実装タイプの電子スイッチをAKI-H8にピギーバック方式で搭載することで、データ書き込み時の信号ライン切り替えを自動化することも可能だ。ただし、プログラムの変更が稀、またはフィックスしてしまった場合は、データ焼き込み後に端子を切りっぱなしでも問題はないだろう。

実際の実装風景はこんな感じとなる。端子はほぼ全て引き出されていて、その半分はセンサーのインプットに、残りは、パラメーターの設定用に充てられている。

右上のDIPパッケージのICはMIDI受け用のフォトカップラーで今は亡きHP製品である。スペック的にはMIDIの10倍の速度にも余裕で対応出来るのだが、相手があるものなので、おいそれとスピードアップすることは難しいのであった。

H8のマザーボード右側に縦一列で並んでいるSOICパッケージのICはフォトモスリレーという一種のリレーで、高電圧にも耐えうるのが特徴だ。外部からのデータ入力を行う際に、稀ではあるが端子に高電圧が印加されることもあるので、その手の事故に対して回路をフローティングする為の予防処置である。
参考までに、写真のMIDIデバイスの仕様を紹介する。入力は、MIDIデータのオンオフを行うデジタル・ポートが 32、VRなどから入力されるアナログCV を MIDIデータに変換する AD 変換入力が 8 ポート、となっている。 市販されているMIDIコントローラーは、端子に個別の cc アドレスを割り振ることが出来るが、このような過剰なフレキシビリティーが現場の混乱を助長させているケースがままあるため、今回の工作では端子に対応する ccナンバーは全て連番とし、唯一、開始番号のみをプリセット可能とした。同様に、pgm change の出力に関しても、対応する機器側で如何様にも Edit 出来ることから、cc と同じく、開始番号のみプリセットが可能となっている。また、機器へのプリセットの読み込みは、MIDI チャンネルの設定を含め、電源投入直後の立ち上げ時に行い、以降電源の再投入を行うまでは、変更は受け付ない。この仕様には、ライブ演奏時の事故を予防する意図も含まれている。 AD 入力されたデータは分解能7bitで、cc #100 から #108 番に割り振られる。デジタル・ポートに入力されたデータとの衝突を避けるため、デジタル・ポートに対応する開始番号が #67 以上になった場合は、AD の対応番号は #111〜118 に自動的にシフトされる。その他、オリジナル階段スイッチ用に特化されている仕様は、スイッチマトリックスのcc/pgmステイタスをマッピングしたプリセット(ROMに焼き込んである)の呼び出し、グルーピングされたスイッチマトリックスのステイタス変更用信号の出力などがある。出力されるMIDI情報のチャンネルは全パラメーター共通となる。

基板の設計は独自に行っているが、製作は単価の安いブルガリアの業者に外注している。

→INDEX