前田君と原田さん

僕の名前は前田慎一郎、ま平凡な名前。
背は高くも無く低くも無く、太ってもいないし痩せすぎでもない。平凡な体格。
成績、これまた平凡、親も期待していないようだ。

というわけで、そこら辺の一般人に完全に埋没して、高校生している。

いつものような、平凡なある日、校門への階段を、ちんたらと上っていた。
と、横を、女の子がばたばたと追い越していった。へ、と唖然として見上げたのだけど
そこに突風が吹いた。スカートがまくれて、一瞬だけど、白い下着が見えた。
その子は、あわてて、スカートを押さえながら、かがみこんで、

「見たでしょ。」

僕をにらみつけた。

(「あ、あの見たというより、偶々見えたが、正しいんですが」)

心のつぶやきは、声にはなっていない。その子はそのまま、階段を走って行った。
と、また突風が・・
女の子は、ちらっと、後ろを伺ったようだけど、そのまま走っていってしまった。

まったく一瞬の突風そのものの出来事だった。


特別教室への移動で、廊下をたらたら歩いていた。と、横を走り抜ける人影。
が、目の前で、思いっきりこけた。スカートが捲れ上がって下着が、丸出しである。

まあ、見過ごすわけにも行かないし、

「大丈夫?」

と、手を差し伸べた。

「あ、またあんた。」
「へ?」

その子は、階段の、突風娘だった。
僕の手につかまると、立ち上がって、服のチリなど払いながら

「同じクラスの、前田だったよね。」
「え、あ、そういえば・・・ええと。」
「原田めぐみ、、」

そういえば、同じクラスに、こんな子がいたような。平凡とは180度方向性が違う女の子だった。


昼休み、僕は中庭で、昼飯のパンをのんびり齧っていた。
と、中庭の反対側に、原田めぐみともう一人女の子が連れ立って座った。えっと、もう一人は丸山さんだっけ。
丸山さんは、横座りをしているが、原田の方は、ひざを立てている。
だから、スカートの奥が窺える。
二人は何を話しているのだろうか、だんだん興に乗ってきているようだ。
それにしたがって、原田の、ひざが開いていく。
別の方に、顔を向けながらも、横目で、視線を走らせてしまう。
と、ぎらっという視線が、こちらに突き刺さった。
ひざを閉じると立ち上がり、僕のほうに、歩いてきた。

「またあんた!スケベ。」
「あ、あの」
「私のパンツを、何べん見たら気が済むのよ?」
「そ、そんな偶然ですよ、偶々・・・。」
「どこがよ」
「だって、僕が突風を吹かせるわけが無いし、廊下でも勝手に転ぶんだもの。」
「う、まそうも言えるけど・・・さっきは何?」
「む、でも僕が座ってる向に、ひざを立てて座るんだもの。」
「はーそういう時は、視線をそらすのが、エチケットと言うものよ。」
「でも、丸山さんは、横座りしてるし、」
「・・・次は、許さないわよ・・・」

はあ、なんか、誤解と言うか勝手に熱くなられてるみたい・・・。

ところで、運命の女神なんていうものは存在するのだろうか。
どう転んだものか、僕と原田が学園祭の、クラスの世話役をやることになってしまった。

「なんで、あんたなの?」
「うう、こちらこそ願い下げです。」
「でも、決まっちゃったのか。」
「はあ、仕方ないですね。」

クラスの、宣伝ポスターを貼っていた。背伸びをして、作業をしていた原田がなぜか、こけかけた。
あわてて、押さえたんだけど、上体を抱きかかえた時に、胸の膨らみに、手が触れた。

「何するのよ。」
「おまえ、こけて怪我するところだったぞ。」
「うう、足がつっちゃったのよ。でも、どこ触ってるのよ。」
「あ、」

柔らかい感触だった。かなり嬉しかったかもしれない。

「もう、不可抗力かな。」

どうも、原田って、かなりドジッ娘なんだ。見た目、かなり可愛いし、スタイルもそれなりなんだが。

「あ、やっちゃった。」

クラスで開設する模擬店の、材料をぶっちゃけている。
二人で、床を這いずり回って、回収した。四つん這いの、原田のパンツを鑑賞できたのは秘密。

学園祭の最中も、こけたり、ぶっちゃけたり、色々やっていた、原田さんですが、
なんとか、学園祭も終わって、

昼休みの中庭。原田さんと丸山さんが、お弁当を食べながら、話をしています。

「めぐみ、前田とは、どうなってるの?」
「どうって、前田が何なのよ。」
「だって、結構親しそうに話してるし。」
「あの、学園祭の世話役だったから・・・。」
「ふーん、めぐみってドジッ娘なのを、前田はちゃんとフォローしてたじゃない。」
「う、それ位してもらわなきゃ。あいつ、私のパンツを何かというと、見るし。」
「それさ、めぐみがドジ踏んで、そこに偶々、前田が居ただけじゃない。」
「あの、まそういう見方もできるけど・・・・」
「めぐみ、前田が好きなんでしょ。」
「えー、どうしてあいつ・・・」
「ふふ、人間素直になったほうが、楽よ。」

もー、なによ・・ゆきったら。何であたしが、前田なんかと・・・。

ところで、平凡な人、前田君なのですが

「おまえ、原田と付き合ってるのか?」
「え、原田さんと?」
「だって、親しげに話してるじゃないか。」
「あれは、ほら、学園祭の世話人同士ということで。」
「それにしても、なんかよく世話を焼いてた様な。」
「あの子、見た目と違って、かなりドジなんだよ。だから、フォローしてただけ。」
「ほうほう、愛情の、フォローなんだ。」
「そんな、原田って性格悪いんだぞ、あんなやつ・・・。」

はあ、何を言われるやら。

丸山さんに色々言われて、ちょっと、ぼんやりしながら歩いている原田さん。
何だかあれこれ言われた結果よくわからない状態の前田君。二人がばったり出会ってしまった。

「あ、原田」
「前田・・・」

「あのさ、ちょっと話がしたいんだけど。」
「うん、屋上に行く?」
「ああ、」

「で?」
「あの、俺達、付き合ってるとか、そんなこと全然無いよな。」
「当たり前でしょ、何にも無いもの。」
「ただ何か、そんな風に言われてるみたいな。」
「うん、そんなことはあるみたい・・・。」

「「あのさ」」

「え、なんだ、原田先に言えよ。」
「前田は、何が言いたかったの?」

「「お前と付き合ってやろうかと。」」

「は?」
「なんと?」

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ふーむ、まあ、こんなカップリングもあってもいいかも。