手作り日記
 ブレーメンの玄関の天井には民家風の古い梁が使われています。
もともとは京都の町家の小屋組み(屋根裏)に使われてたものだと思います
解体業者さんが廃棄処分する直前のものでしたが、目の詰まった美しい木目の丸太で、
殴りカンナのかかった、一目見ただけで長い歴史や物語を感じさせるものでした。
小節や曲がりも有り自然樹らしくて、これこそがブレーメンに必要なものと直感しました。


                 製材
 ここからが手作りの始まりで、鉄骨造のブレーメンに松丸太をそのまま使うわけにも行かず、適当なサイズに製材してもらうため、現場監督さんにお願いしてダンプで山奥の製材所へ運んでもらい無理を言って古材のカットをしてもらいました。カット前に木目や曲がりの具合を見ながら入念に位置決めを行い建築主立会いでカットしてもらいました。
 機械でカットした跡は平滑すぎて古い自然材の良さがなくなるため、わざわざ、ノミで面取りをしたり、殴りカンナ風の凹凸をつけたり、毎週土日は松丸太とにらめっこの1日でした。
大工さんの巧みの技ではなく、素人の不器用なノミさばきのほうが古くて素朴な味が出ると自分に言い聞かせながらコツコツと4本の半丸太の側面を削りつづけました。

















      磨き
その後は、木目の美しさに見とれながらサンドペーパーをかける毎日が続きました、なんせ梁と桁、合計8本もあるのですから手動では手におえず、電動のペーパー用サンダーを購入。
休み日や本業の合間に毎晩ペーパーをかけていると、木目に愛着が湧いてくるものです。この丸太と出会った事が何か、宿命とか因縁とか、そんなことを考え、建物に魂を入れるという事は、人が手間と暇をかけて愛情を注ぎ、常々手入れをする事だと思えて来ました。最近の建物は、マンションに限らず全ての建材は既製品でメーカー製の合理的なものばかりで、出来た時は、ピカピカで美しいものの、1、2年で色あせた消耗品のようになってしまいます。そんな使い捨て感覚の美しさに反発して、古くて時間と共により深みの出てくるものこそ建築の良さと心に決め、ブレーメンの基本イメージとしました。

                      
                塗装
民家風の梁と言っても、日本の民家とは限らずブレーメンはヨーロッパの中世のイメージ。半透明の茶色を何度も塗り重ねてはペーパーで削ったり、色合いは、赤系を足したり、黄色系を足したり、最後までどんな色になるか分りませんでした。シンナーで薄く展ばした色を何度も塗ったり、拭き取ったりしているうちにそれらしい色になってきました。また塗装は布でこすればこするほどつやが出てきて年代物の梁らしくなって来ました。 


取り付け
付梁と言っても元々は松丸太、重量はそこそこ有りますので両側の桁に本ざね入れとし、同時に中央をボルト吊した隠し桟に嵌めこみ取り付け、もちろんこれは大工さんにお願いしました。                                                      

  箱川社長
               古材のルーツは?
使用した古材の松について、工事を施工されました大倉建設工業株式会社の代表取締役で長年建設業界での木材の調達などに詳しい箱川社長にお聞きすると、古材は仕口から大正時代〜昭和初期の大工の仕事ではないかと言うことです。当時は資材を遠方から輸送する事も少なく、おそらく京都府近辺の自然生息の地松で畑地や肥よくな平坦地ではなく、岩盤や痩せた土地もしくは寒冷な山間部などの地域のものでは無いかということです。それは30年ほどの樹齢にもかかわらず幹の径が五〜六寸と比較的小さく目が詰まっているので良く分るそうです。また、材の太さからお寺などの重量建築ではなく、いわゆる町屋建築に使われていた物では無いかと言う事です。                                                               
 京都の街で昭和初期に建てられて、平成の現在まで現存していた建物と言う事になると、やはり歴史の有る建物に違いない、京都らしい老舗の旅館なのか祇園辺りのお茶屋なのか、はたまた古い街並みに溶けこんだ出格子の有る普通の民家だったのか、想像は尽きませんが思いを巡らすだけで夢が広がります。殴りのかかった梁肌の年輪は、まるで虎か豹の紋のように美しいものでした。民家風の梁独特の飴色の深い塗装の下には美しい紋様と共に数々の歴史が刻まれ、これからもブレーメンを舞台にした多くの物語を見守ってくれる事になると思います。


お礼
文末になりましたが、多くの方のご協力に感謝致します。
本当にぴったりの古材丸太を選んで譲っていだいた、(株)上村組の常務様
古材を丹念に製材していただきました渇ヤ脊製材所の中川社長様
殴りカンナ風のノミの使い方を伝授頂きました高村工務店の棟梁様
塗装指導や材料の準備を頂いた(有)イケモトの池本専務様
材料探しの段階で色々な古材を物色させていだいた古材バンクの会の皆様
その他ご協力頂きました多くの皆様に謹んでお礼申し上げます。