KEYNES, J. M., AUTOGRAPH LETTER SIGNED To J. F. Darling
1page 19×11.2 CM (recto only), with envelope written by Keynes and signed with initials

 
ケインズ署名入り自筆書簡1葉。イニシャルで記名した自筆封筒付。
 ホワイトホールの Treasury Chambers(財務省官房?)のレターヘッドがある官用用箋を使用。1918年12月20日付、J. F. Darling 宛てである。同人は London Joint City and Midland Bank(現Midland Bank)の総支配人(General Manager)だった。
 購入した本屋の説明書を参照すると、ダーリングが C. B. E 勲章を受賞したことに祝意を述べている。受賞は、英国政府に対する借款募集に関連したスペインでの活動に対するもの。ローンは、リオ・ティント(Rio Tint)会社の中期債を通じて調達されたそうである。リオ・ティントについては、ケインズ自身も初期(1914年)に株式投機の対象としている(スキデルスキー、1992、p.466)多国籍企業である。C. B. E 勲章とは、民間人を対象に1917年に創設された大英帝国勲章(Order of the British Empire)の5勲章の一つで、上から3番である(Wikipedea)。ちなみに、ケインズ自身は1917年に第三等バス勲章(CB)を受けている。
 この頃ケインズは、財務省第一課から独立して国際金融を扱う「A部門」の責任者だった。部下は17人にのぼった。「イギリスの頭脳はアメリカの財力と競い合った[中略]そしてその頭脳のうちひとつは、ケインズの頭脳であった」(スキデルスキー、1992、p.552)。パリ講和会議は1919年1月に開始されたから、戦費調達の金融活動よりも、ドイツの賠償問題に対する財務省スタンスの準備に仕事の重点が移った時機にあたる。

 手紙の内容の試読は下記のとおり。

                  20.12.18
Dear Darling

 I am very glad indeed to hear
that the king ( or whoever is for him)
has heard the prays of the Treasury.
But I am sure your real reward for the
great trouble you took for us is that
you were of assistance to the country at
a moment when our financial affairs were
not of the brightest.

         Sincerely yours
         J M Keynes


 
試訳:国王(あるいは、彼に代わって誰であれ)が財務省の懇請を容れたことを側聞して、大変嬉ばしく存じます。英国のために尽力した貴殿の大変なご苦労に対する褒章は、国の財政状態が必ずしも万全でない時期にあなたが祖国を援助したことにある、と本当に確言できます。

 英国の肉筆物を扱う古書店から購入。ケインズの肉筆書簡となると、現在では$2000以上の値が付いている。本書簡は一枚ものであるが封筒もついており、値段も比較的廉価だったので購入した。

   (参考)
 スキデルスキー 宮崎義一監訳 古谷隆訳 『ジョン・メーナード・ケインズ 裏切られた期待 1883-1920年T、U』、東洋経済新報社、1987、1992

 


書簡(拡大可能)


封筒







稀書自慢 西洋経済古書収集 copyright@bookman